岸井ゆきのが本領発揮！愛憎まみれるYouTuber役で魅せる『神は見返りを求める』

　6月24日に公開された映画『神は見返りを求める』で、岸井ゆきのがYouTuber役で好演を見せている。

岸井ゆきのがキュート！豹変前は…『神は見返りを求める』予告編

　『ヒメアノ～ル』『空白』などの吉田恵輔監督の最新作となる『神は見返りを求める』は、合コンで出会ったイベント会社で働く田母神尚樹（ムロツヨシ）とYouTuberの川合優里（岸井）の関係を描き出す物語。再生回数の少なさに頭を悩ませる優里＝ゆりちゃんに同情した田母神は、彼女のYouTubeチャンネルを見返りを求めることなく手助けを始める。人気が出ないながらも彼らは前向きに努力を続け、お互い良きパートナーになっていくが、あることをきっかけに関係が大きく変化する。

　本作の見どころとなるのは、吉田監督と『ヒメアノ～ル』以来、約6年ぶりにタッグを組んだムロの狂気を感じさせるような豹変ぶり。ムロが演じたのは「神様のようにいい人」と言われるイベント会社勤務の田母神という男。復讐の鬼へと化していく様子がリアルかつ危うい雰囲気を醸し出しており、静かな微笑から絶叫に至るまでの変化にムロのふり幅の広さを感じさせる。そんな田母神にふんしたムロとともに、高い表現力で存在感を発揮しているのが、底辺YouTuberのゆりちゃんを演じている岸井だ。

　二人の出会いのきっかけは、ともに参加した合コンが行われた居酒屋で、酔いつぶれたゆりちゃんを田母神が介抱したこと。このときのゆりちゃんは弱弱しく、どこか不器用そうな雰囲気をさらけ出しており、田母神は彼女を支えるかたちで一緒に動画を制作していくことに。動画の再生数もチャンネル登録者数も一向に伸びないゆりちゃんと一緒に動画制作に励む田母神だが、その二人の姿は微笑ましくもどこか見ているのが辛くなる。キュートな一面と痛さを同時に感じさせるのは、岸井の演技による絶妙なさじ加減がなせる業。どこか愛らしく、それゆえにいじらしさも感じさせる。

　人気YouTuberとのコラボなどを経て、しだいに知名度を高めていき、高級マンションに引っ越すまでになるゆりちゃん。邪魔になった田母神への態度を変化させていく姿も憎々しいものだが、リアルな人間の嫌な部分も巧みに表現されている。恋すら始まりそうだった予感から一転、関係が歪み始めるやいなや、急転直下のごとく最悪の泥沼劇へと突き進んでいく。ムロと岸井が起こす化学反応は驚くべき展開に。その物語の肝となる岸井の好演が光る。

　そんな岸井といえば今年、浜辺美波と共演した『やがて海へと届く』で主演を務め、親友の死と向き合う主人公を繊細に演じたことも記憶に新しい。今後も、生まれつき耳が聞こえないプロボクサーを演じた三宅唱監督の『ケイコ　目を澄ませて』や、香取慎吾と夫婦役を務める『犬も食わねどチャーリーは笑う』（9月23日公開）なども控える活躍ぶり。『神は見返りを求める』では、今やドラマや映画を問わず、著しい活躍ぶりを誇る岸井の本領発揮といえる演技を見ることができる。（編集部・大内啓輔）

※吉田の吉はつちよしが正式表記