『ジュラシック・ワールド』29年ぶり初期キャスト再集結の理由 完結編で目指した原点回帰
映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(7月29日全国公開)のメガホンを取ったコリン・トレヴォロウ監督がリモートインタビューに応じ、『ジュラシック・パーク』(1993)から約29年ぶりに三人揃って登場するレジェンドキャスト復帰の理由や、本作で目指したという1作目への原点回帰について語った。
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『ジュラシック』シリーズ新章の幕開けとなった『ジュラシック・ワールド』を大ヒットへと導き、続編『ジュラシック・ワールド/炎の王国』には製作総指揮・脚本として携わったトレヴォロウ監督。2作目をあえて別の監督に任せたことは、彼なりの狙いがあった。
「フランチャイズの拡大において、違う観点からストーリーを語り、画面作りでも卓越したビジョンを持つ新監督を起用することは、非常に素晴らしいアイデアだと思っていた。中でも、以前から注目していたJ・A・バヨナ監督は、2作目を任せる人間として相応しいと感じたんだ。(プロデューサーの)フランク・マーシャルも、バヨナを説得するために非常に協力的だったよ」
当時『スター・ウォーズ』エピソード9に取り掛かろうとしていたトレヴォロウ監督は、シリーズの生みの親であるスティーヴン・スピルバーグと話し合い、第3弾で再び監督を務めることで合意。その時点で、すでにストーリーの方向性は明確化されており「1作目のようなスピルバーグテイストを追求する」と原点回帰を狙っていた。
「完結編はサイエンス・スリラーとして製作することを決めていた。それこそが『ジュラシック・パーク』1作目のジャンルだからだ。恐竜はもちろん、遺伝子組み換えの物語でもある。その可能性や危険について、さらに追求したかった。特に、現代社会を舞台に遺伝子組み換えが人間社会にどんな影響を与えるのか。いかにして人類を救うのか、同時に危険に陥れるのかを描こうと思った」
原点回帰のために欠かせなかったのが、サム・ニール(アラン・グラント博士役)、ローラ・ダーン(エリー・サトラー博士役)、ジェフ・ゴールドブラム(イアン・マルコム博士役)といったレジェンドキャストの復帰だった。トレヴォロウ監督曰く、三人揃っての再登場は「私の長年の夢」だったといい、企画の初期段階から実現を目指していた。「本作のストーリーにおいて、三人は必要不可欠だった。彼らにもう一度リアルな冒険をさせることができないのなら、私はレジェンド抜きで完結編を作っていただろう」
その一方で、レジェンドキャストの復帰によって、『ジュラシック・ワールド』シリーズで描いてきた新世代のキャラクターたちへの興味が薄れてしまう危険性も指摘する。「二作品かけて構築したキャラクターはどれも魅力的だが、レジェンドを復帰させながら、彼らへの興味を保つことはそう簡単なことではない。それこそ、私が恐れることだった。彼らが帰ってくることで、観客の関心を全て奪ってしまう可能性がある。他のキャラクターを忘れさせないためにも、それぞれの物語を慎重に組み立て、両シリーズが並行して存在できるようにすることが重要だった」
『炎の王国』で先にマルコム博士を登場させたことで、グラント博士とエリー博士を自然な形で合流させることが可能になったと話すトレヴォロウ監督。「私の任務はシリーズ復帰組を信用させることだ。彼らが当時のキャラクターにふんして、新たな物語へと旅立つことをサポートし、自信をもってシリーズに復帰してほしかった。(完結編への出演は)サム、ローラ、ジェフにとっても重要な決断だったと思う。だが、彼らにとって最大の自信は、それぞれが各キャラクターについて最も詳しい人であること。私よりキャラクターを深く理解しているし、30年近く共に歩んできた。一度もキャラクターから遠ざかろうとはしなかったはずさ」
三人揃っての撮影初日、トレヴォロウ監督はジープに乗った彼らの姿を写真に収め、スピルバーグに送っていた。29年ぶりの3ショットに、スピルバーグも予想以上にエモーショナルになっていたそうだ。「三人が同じキャラクターで再び共演することに感動していたよ。スピルバーグが最も期待していたのは、三人が一緒になって危険な状況を切り抜けることだった。トリオが別行動ではなく一緒に長時間行動するのは、本作初めてかもしれない。もちろん、新しいキャラクターとの共演も楽しみにしていたよ」(取材・文:編集部・倉本拓弥)