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『キングダム』実写アレンジは「選択と集中が重要」 原作者の脚本参加で名シーン誕生

『キングダム2  遥かなる大地へ』より
『キングダム2 遥かなる大地へ』より - (C) 原泰久/集英社 (C) 2022映画「キングダム」製作委員会

 2019年のヒット作の続編『キングダム2 遥かなる大地へ』(公開中)で、再びメガホンをとったヒットメーカーの佐藤信介監督が、原作者の原泰久が書き下ろしたオリジナルシーンの狙いや、人気原作を実写化する秘訣を明かした。

【写真】『キングダム2 遥かなる大地へ』場面写真

 紀元前の春秋戦国時代の中国を舞台に、戦災孤児だった少年・信が、のちの始皇帝となる秦王・エイ政(※エイ政のエイは、上に亡、中に口、下左から月、女、迅のつくりが正式表記)と出会い、天下の大将軍を目指す歴史大河漫画を原作にした本作。続編では信役を山崎賢人(※崎はたつさきが正式表記)が続投するほか、吉沢亮橋本環奈大沢たかおら前作のキャストが集結。新キャストとして、清野菜名豊川悦司らが加わっている。秦と隣国・魏の戦いで、信が初陣に挑み、新たな出会いも果たすこととなる。

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 佐藤監督は映画『GANTZ』シリーズ(2010・2011)、『アイアムアヒーロー』(2015)、Netflixシリーズ「今際の国のアリス」(2020~)など数々の人気漫画の実写化を成功させてきた。『キングダム』第1作は、興行収入57.3億円の大ヒットを記録。観客の反響からも「映画の一つの醍醐味は、最後、最初からは思いもかけぬところに連れていってくれるような、興奮と感動と驚きみたいなものなのかなと。本作のようなエンタメ作品は特にそう。技術的な問題も含め、自分なりの課題はいろいろありましたが、期待と同時に不安もあったであろう観客の皆さんからも好評をいただき、基本的には狙っていたことを達成できたかなとの思いはありました」と振り返る。

佐藤信介監督

 念願かなって続編を手掛けることになった際、「前作の拡大ではなく、前作ではやらなかった新たな挑戦に集中し、また新たな驚きを感じてもらいたい」との気持ちで取り組んだ。「走り出したら最後まで駆け抜けるような疾走感と、『キングダム』らしいパノラマ的な大きな風景描写というのは、前作ではあえて控えめにしていたんです。信が実際の戦場に出た時に、初めて広い風景を見たような気持ちになれるといいなと思っていたので」

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 約2時間の映画に構成するため、原作のどの範囲を描くのかを決めたうえでアレンジも行っている。松橋真三プロデューサーによると、実は続編を作りたいという強い願望がなければ、前作で王騎が登場しない可能性もあったとのこと。そこまで大胆でなくとも例えばエピソードの順番の入れ替えや、短縮、カットなどは当然ながらある。それを原作ファンの厳しい目や期待に応えながら行うことになるわけだが、本作は前作に続き原作者・原泰久が脚本に参加。佐藤監督は続編でのアレンジの意図を次のように語る。

 「常に原作というのはバイブルで、それをどう解釈するかが僕らの仕事。それが面白いところだし、常に原作というものは料理するものであり、縮小コピーするようなものではない。映画には大きな予算がかかり、時間的な制限もあります。あれもこれもはできないので、選択と集中が大事。原作のここまでを描きたいということは、脚本の実作業前に考えます。そのなかで、このエピソードは前半にもってくることで『待ってました!』と感じるような登場シーンになるなとか、冒頭からギアを上げていく疾走感のある感じになるなとか、今回はこういう映画にしたいというものが、演出も含めて見えてくる。原作をどうアレンジするかが、作風を決めていくことにもなる。原先生ご自身も映画が大好きな方なので、映画としての変更にも理解があるため、脚本もすごく前向きな作業として取り組めたと思います」

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 脚本の実作業過程としては、前作から続投する脚本家の黒岩勉が初稿を書いた上で、原が原作執筆時に構想していた裏設定的なものや、今ならこう変えるのもいいかもしれないといったアイデアを提案。そのほか松橋真三プロデューサーからの要望などのやり取りがあり、さらに佐藤監督が映像化に必要な変更や調整の要望を出すといったことを経て、決定稿に至ったという。また、本作には原が脚本代わりのネーム(漫画原稿の大まかな下書き)を書き下ろした、映画オリジナルのシーンがある。

 「いただいたネームは、緻密な漫画の完成原稿と違い荒々しいけれど、原先生の興奮が伝わるような生々しさがあって。それを基に脚本化したわけですが、そのネームは俳優さんにも渡しましたし、僕も新たな原作をいただいた気持ちで、自分なりに燃えて演出させていただきました」

 それは、信が戦場で敵に追われて逃げ込んだ洞穴で、清野演じる同じ“伍”を組む剣士・羌カイ(※カイはやまいだれに鬼)と夜通し語り合い、羌カイの素性を知る場面。元になったエピソードは原作にも存在するが、原作で省いた流れの中で重要なエピソードを抜き出して再構成しつつ、戦場の時間経過なども表現しており、まさに映画版ならではの名場面となっている。

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 「今回は蛇甘(だかん)平原の戦いを主軸とする中で、羌カイの過去にまつわるエピソードをそこに組み込みたいと。2日間にわたる戦いにすることで、気配の違う夜のシーンが入るのは面白いし、夜の戦場で信と羌カイが語り合うというのは、グッと来るシーンになるだろうなと。原先生も羌カイに対しては特別な思いが強いし、原作とは違うところになるので、ネームを書いていただいたわけです」

 原作は連載中で単行本が65巻まで刊行されており、映画の長期シリーズ化にも期待が高まる。(取材・文:天本伸一郎)

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