『ONE PIECE』シャンクスの“娘”を担う重圧 ウタ・名塚佳織、憧れが現実に変わった瞬間
人気アニメ「ONE PIECE」の3年ぶりとなる新作映画『ONE PIECE FILM RED』(8月6日全国公開)で、歌姫・ウタの声を担当する声優の名塚佳織。劇中で重要な役割を担う四皇・シャンクスの“娘”役に抜てきされた心境と共に、学生時代から抱いていた「ONE PIECE」への憧れを語った。
【動画】シャンクスの“娘”ってどんな人物?ウタ役・名塚佳織を直撃
原作者・尾田栄一郎が総合プロデューサーを務める『ONE PIECE FILM RED』が描くのは、“歌声”と“赤髪”の物語。名塚が担当するウタは、人々を虜にする歌声の持ち主で、音楽の島・エレジアで初ライブを開催する世界の歌姫。モンキー・D・ルフィら麦わらの一味も駆けつけたライブ会場で、彼女が赤髪海賊団を率いるシャンクスの“娘”であることが発覚する。
■ 「ONE PIECE」の世界観への憧れ
原作漫画の連載開始当時は学生だった名塚。「ナミのエピソードが大好きです。学生の頃、自分も彼女のようなカッコいい女性になりたいなって思っていて、憧れの存在でした」と当時を振り返ると、「どのキャラクターも可愛らしくて、面白さもあってカッコいい。登場人物みんなが全てを兼ね備えています。ずっと読み続けたいって思わせてくれるんです」と読者ならではの魅力を語る。「『ONE PIECE』の世界で生きてみたいって思わせてくれるような作品ですよね。自分も作品の一キャラクターとして、生きてみたいなって憧れを抱きながら読んでいました」
彼女の「ONE PIECE」への憧れは、劇場版で現実へと変わった。「オーディションを受けさせていただいて、合格の連絡が来た時は信じられなさすぎて、すごく薄いリアクションを取ってしまって……。現実味を帯びていなくて、不思議な感じでした」と役を勝ち取った当時の心境を語る。「資料や台本をいただき、じわじわと興奮してきて、同時にプレッシャーも感じました。『すごいものに決めていただいたんだな』と収録に向かっていくにつれて、徐々に実感が湧いてきました」
しかも、彼女が担当するのは人気キャラクター・シャンクスの“娘”。原作ファンの彼女もその重圧は感じていた。「シャンクスという存在がいるからこその注目度の高さは、ひしひしと感じていました。尾田先生が考えてくださった素敵なキャラクターの魅力を、私が潰すようなことがあってはいけないというプレッシャーはすごく強かったです。ウタは素敵な女の子なので、魅力いっぱいの彼女をこの世界に産み落とすことができたら嬉しいなということだけを考えて、作品に取り組んでいきました」
■ ウタには全責任を自分で背負う覚悟がある
ウタは「天真爛漫で明るい女の子」と表現した名塚。「信念は強いし、気持ちも心も強い子なので、誰かに頼るのではなく、自分で解決しようという強さを持っています。とにかく全ての責任を自分で背負うぐらいの覚悟がある前向きな少女です」とキャラクターについて話す。
本作では、名塚がウタのボイスキャストを務め、アーティストのAdoが歌唱キャストを担当している。「先にAdoさんが歌を録ってくださっていて、収録前に楽曲を聞かせていただきました。そこからイメージするものも大きく、楽曲の中にもウタの思いがすごく込められているので、歌詞の内容やその歌詞をAdoさんがどういう風に表現されるのかというのを聞きながら、声を作っていきました」とAdoの楽曲もウタの声の手がかりになったという。
ウタを構築するにあたり、谷口悟朗監督と「(過去に)どういう経緯があったから今のウタに至っているか、という部分は大事にしよう」と話し合いを行った名塚。「尾田先生もウタが生まれたところから年表資料を作ってくださっていて、どういう言葉や愛情を受けていたとか、こんなことがあって思いが変わっていったなど、全てを詳細に描いてくださっていました。谷口監督とはそれを参考に『これがキーポイントになっているから、今がこうなっている』というのを全て並べて、彼女の人生を映画の中で描けるようにしていきました」
■ 田中真弓&池田秀一との収録は「贅沢な時間」
映画の世界ではカリスマ的存在のウタ。名塚は、“別次元”と評される彼女のアーティスト性をどのように表現していったのか? 「役者は自分で何かを発信するよりかは、監督や原作者が描く、イメージしているものを具現化する仕事。ある意味、裏方の立ち位置です。一方でアーティストは、クリエイターと同じ立ち位置で表現していきます。自分の感情やメッセージを歌にのせて発信していく部分が、普段やっている仕事と大きく違うかなと思っています。今回はウタが伝えたいこと、やりたいことを明確に表現していくようにしていきました。誰かに言われたからやるのではなく、彼女自身が考え、行動して、やり遂げようとしていることを一緒に考えて、歩んでいけたらいいなと思っていました」
先輩の田中真弓(ルフィ役)や池田秀一(シャンクス役)と三人でアフレコする機会もあった名塚は、「もう全てが驚きでした」と目を輝かせる。「お二人の強さと優しさみたいなものがぶつかるところが、自分にとっては贅沢な時間でした。『ONE PIECE』ならではのアクションシーンもすごくカッコいいんですよね。二人の思いがウタに向かってきてくれるのも嬉しくて、興奮が抑えきれなかったですし、聞いているだけで泣きそうになったりもしました。きっと、この思いは皆さんにも届くんじゃないかなと思います」
「本作の見どころは家族との絆。お互いを思いやる気持ち、好きだからこそ傷つけあってしまう感情、家族だからこそすれ違ってしまう、大切に思うものこそ傷つけてしまう瞬間があるところが魅力の一つなのかなって感じています」とアピールした名塚。「映画を鑑賞した後には、大切な人のことを考える時間を作ってもらえたりしたら嬉しいです」と力を込めていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)