「鎌倉殿の13人」新納慎也、全成は「ただ実衣を愛していた」
小栗旬主演、三谷幸喜脚本の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)で源頼朝の異母弟・阿野全成(あの・ぜんじょう)を演じた新納慎也が、7日放送の第30回での衝撃的な展開についてコメントを寄せた(※ネタバレあり。第30回の詳細に触れています)。
本作は、鎌倉時代を舞台に、野心とは無縁だった伊豆の若武者・北条義時(小栗)が鎌倉幕府初代将軍・源頼朝(大泉洋)にすべてを学び、武士の世を盤石にした二代執権に上り詰めていくさまを追う物語。第30回「全成の確率」では、比企と北条の権力争いに巻き込まれて源頼家(金子大地)への呪詛を行った全成が窮地に陥る。
全成は頼朝の異母弟にあたり、修行を積んだ陰陽を駆使して頼朝を補佐するという役どころだった。初めて登場したのは、2月20日放送の第7回。伊豆山権現に身を隠していた政子(小池栄子)、りく(宮沢りえ)、実衣(宮澤エマ)が僧兵に取り囲まれた際、全成が「わたしが風を起こす。その隙に逃げられよ」とさっそうと登場。呪文を唱え危機を潜り抜けようとするも風は起こらず、敵も顔を見合わせて困惑する珍場面が話題を呼んだ。また、第24回「変わらぬ人」では、亡き許嫁の源義高(市川染五郎)を忘れられず前に進めずにいる大姫(南沙良)のため、義高の霊魂を呼び出そうとするが、あっさり大姫に茶番を見抜かれる一幕も。実衣と夫婦になってからは、2人のボケとツッコミのような掛け合いが人気を博していた。
その全成が壮絶な最期を遂げた。政子らの嘆願により一度は死罪を免れたはずが……。新納は最期のシーンを演じた心境を、感無量の様子で以下のように振り返っている。「台本をいただいたときに『本当にすてきなラストを描いてくださったな、三谷さん、ありがとうございます』と。三谷さんにも連絡して『ありがとうございます』と言いました。本当に悲しい、すてきな最期を描いてくれたと台本の段階でも思っていましたが、それをさらに何倍もすてきなシーンにしてくださった演出とスタッフのみなさんに、今はもう本当に感謝ですね。みんなの努力と、みんなの力です。僕だけではなくて、演出だけではなくて、三谷さんだけではなくて、照明・音響・美術・撮影など、すべてのセクションの努力が報われました。今、撮影が終わったばっかりですけど、すべての皆さんの努力が報われた、いいシーンになったと思っています」
「全て」が「成る」という名を持ちながら、一度も呪詛に成功したことがない「見かけ倒し(実衣談)」の全成。しかし、最期のシーンでは呪文を唱え続けると不思議な出来事が起きた。新納は本シーンでの全成の思いについて「斬られて流れた自分の血の赤い色を見たとき、ずっと実衣ちゃんに『君は赤が似合うね』と言ってきたので、赤という色で実衣を思い出したんですよね、あの瞬間に。とにかくあの瞬間は実衣のもとに帰りたい、実衣に会いたいという一心で、実衣への思いだけで最後の力を振り絞って、というシーンでした」と語る。
新納は、全成の初登場から現在に至るまでの成長、変化について以下のように考えを巡らせる。「全成登場から全体を通してですけど、おそらくこの『鎌倉殿の13人』においての阿野全成さんは兄である頼朝さんの力になるために鎌倉に来て、できるかぎり、自分のできる範囲で力になろうとは思うけど、そんなにむちゃくちゃなこともしない。これは僕の考えですが、全成は実衣と出会ってしまったことで、自分のできる範囲でもちろん頼朝さんのお手伝いはするけれど、基本は実衣とこの鎌倉で一生、穏やかに暮らしていきたかっただけの人になったんじゃないかなと思います。今、最期のシーンを撮って、この『鎌倉殿の13人』で僕が演じた阿野全成は、ただ実衣を愛していただけの男、みたいな感じですね」
新納はこれまで度々三谷作品に出演。ドラマでは、2016年の大河ドラマ「真田丸」(豊臣秀次役)やNHKドラマ「風雲児たち ~蘭学革命(れぼりゅうし)篇~」(2018)など。舞台では「恐れを知らぬ川上音二郎一座-The Fearless Otojiro’s Company」(2007)、「TALK LIKE SINGING」(2009~2010)、「日本の歴史」(2018・2021)などがあり、今年11月より「ショウ・マスト・ゴー・オン」が福岡、京都、東京で上演予定。(編集部・石井百合子)