小芝風花&川村壱馬、若者は貞子が怖い?怖くない?恐怖を超越し国民的キャラに
鈴木光司のホラー小説を原作に“呪いのビデオ”の恐怖を描く人気シリーズ最新作『貞子DX』が10月28日に公開される。日本を震撼させた映画『リング』から24年、時代とともにキャラクターを進化させ、今やJホラーのアイコンとなった貞子だが、令和の時代を生きる若者たちにとって、彼女はいったいどんな存在なのか。本作の主演を務めた小芝風花と、相棒役の川村壱馬(THE RAMPAGE)が熱く語り合った。
大阪出身同士で意気投合
「呪いのビデオを見た者は24時間後に死ぬ」という貞子の呪いがSNSで拡散され、全国各地で被害者が続出する。テレビ番組に出演したIQ200を誇る天才大学院生・一条文華(小芝風花)は、霊媒師に向かって「呪いなどあり得ない」と断言するが、その矢先に興味本位でビデオを見てしまった妹から、「白い服の人につけられている」という連絡が。文華は、自称占い師の前田王司(川村壱馬)と謎の協力者・感電ロイド(黒羽麻璃央)とともに、デジタル社会に適応した貞子の“呪いの方程式”を解明すべく奔走する。
松嶋菜々子、深田恭子、仲間由紀恵、石原さとみなど、今をときめく人気女優を次々と輩出している本シリーズ。その最新作の主演に抜てきされた小芝は、「わたしでも知ってる有名な作品だったので、正直ビックリしました。“貞子シリーズ”に自分も出演できるんだって思うと、本当に嬉しかったです」と笑顔で振り返る。ただ、相手役の川村に対しては、「すごく硬派なイメージだったので、『仲良くできるかな?』と、正直心配でたまらなかった」と本音をもらす。
ところが実際、川村に会ってみると、イメージとは全く逆だったと小芝は語る。「最初は帽子を深めに被って人見知り感満載だったけれど(笑)、話してみると、歳も近く、ポケモンにハマっていたという共通点もあり、すぐに打ち解けました。一見、クールに見えますが、監督から指導されたことを必死に吸収しようとしている姿や、疲れている時もみんなを鼓舞して楽しい気持ちにさせるなど、とても頼もしかったです」。
これに対して川村は、座長としての小芝を絶賛する。「僕と同じ大阪出身ということを知っていたので、緊張はあまりしなかったですね。とてもフランクな方なので、すぐに心を開くことができました。僕にないものをたくさん持っている方で、特に座長(主演)としての佇まいや立ち居振る舞いは、すごく勉強になりました。ここで学んだことを自分が座長を務めた作品でも生かすことができたと思っています」
お互いに新境地へ
それぞれのキャラクターも対照的で、小芝も川村も、これまで演じたことのないキャラクターに挑んでいるところも本作の魅力。呪いをかたくなに信じないIQ200の大学院生・文華を演じた小芝は、「台本を読んだとき、非科学的なことはまったく眼中にない、すごく芯の強い女性に思えたので、何をされても動じず、突き放していく感じなのかなって思っていました。ところが、監督から親しみやすいセリフが追加されたり、“不思議な動き”をつけられたりしているうちに、ちょっと抜けてる部分もある人間味豊かなキャラクターに変わっていったところが面白かった」と述懐。笑顔は控え目だが、魅力あふれる文華役に手応えを感じているようだ。
一方、占い師を自称する少しおどけたキャラを演じた川村は、『HiGH&LOW』シリーズのイメージから180度転換。「何よりもまず、ホラー映画のイメージからかけ離れた役だったので、最初はすごく不安でした。占い師どころか、自分は王子様だと思い込んでいる残念なキャラを、『貞子』というビッグタイトルの中で、どう生かされるんだろうと。演じていくうちに笑いの要素がどんどん強くなって、不安要素がますます強くなって行ったんですが、完成版を観たとき、不思議と映画の世界観にマッチしていて、全然嫌な感じはしなかった」と満足気。確かにふざけたキャラクターだが、川村にとっては役幅をグンと広げた新境地と言えるだろう。
若者世代にとっての貞子
2人のキャラクター以上に、今回の貞子は、デジタル社会に適応し、とんでもないキャラクターへと進化しているが、思えば1998年、映画『リング』で井戸から這いずり出てきた黒髪と白い衣装の貞子は、日本中を震撼させるほど恐怖に満ちあふれていた。あれから24年、さまざまな変遷の中で、貞子はJホラーのアイコンとしてPR活動も積極的に参加し、時には親しみやすささえ感じるときもあるが、20代である小芝や川村にとってどんな存在なのか。
「第1作目が貞子の原点」と語る小芝は、「子供のころ、家族でDVDを借りて観たのが最初だから、本当に怖いキャラクター」という記憶が脳裏に焼き付いているという。特にガッツリ観ていなかったという川村でも、「名前を聞くと、シンプルに怖いイメージはありますね」と、貞子=怖いという潜在意識はあるようだ。ただ、ここまで長続きしていることに対して小芝は、「確かに時代とともに貞子も変化していますが、世代ごとに熱心なファンがいらっしゃるからここまで長く続いてるのだと思う」と分析。もはや、怖い、怖くない、の領域を超えた“国民的なキャラクター”ということか。
本作のPRで「貞子と踊った」と笑顔で語る小芝。貞子との交流を素直に楽しんだという小芝は、「過去にも芸人さんとデートしたり、始球式をしたり、ランウェイを歩かれたり、いろんなところから引っ張りだこ。PRとはいえ本当にすごい人気ですよね」と、まるでアイドルを称えるような語り口。「確かに怖いだけじゃなくて面白さもありますよね」と川村も言うように、「映画は怖いが、貞子は人気者」という不思議な棲み分けが、長い歴史の中で出来上がってきたのかもしれない。
さらに、本作に出演した小芝の言葉が貞子の現状を捉えている。「実際に作品に携わってみて、エンタメ要素がかなり足されているので、『貞子のシーンはどんな風になっているんだろう』と不安な面はありましたが、つながった作品を観てみると、ポップでクスッと笑えるところもあるけれど、怖いところはしっかり怖く描かれていて、これが今の貞子シリーズなんだなって思えました。ホラーが苦手な方でも観やすい映画、ここは強調しておきたいですね」
ビデオを見たら死ぬ…そのスパンが7日間だったのが、SNSの拡散力によって24時間以内に進化した貞子の呪い。「現代ならではのゾッとする感じがある」と川村が言うように、新型コロナウイルスによるパンデミックを実感しているだけに、今回の『貞子DX』は笑える要素もある反面、現代社会を風刺したようなリアルな怖さもある。タイムリミットは24時間、果たして貞子の呪いはどんな猛威を振るうのか。(取材・文:坂田正樹)
映画『貞子DX』は10月28日より全国公開