東京国際映画祭、観客賞は『窓辺にて』 今泉力哉監督が受賞に感謝「小さな喜びをどう伝えられるか」
第35回東京国際映画祭
第35回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが2日、東京国際フォーラムにて開催され、コンペティション部門に出品されていた稲垣吾郎の主演映画『窓辺にて』が観客賞を受賞した。監督を務めた今泉力哉が登壇し、現在新型コロナウイルス感染で休養中の稲垣を慮ると共に、映画に込めた熱い思いを語った。
観客賞を受賞した映画『窓辺にて』は、恋愛映画の名手と呼ばれる今泉監督が、稲垣を主演に迎え描いた、ちょっぴりおかしい大人のラブストーリー。稲垣は妻の浮気を知ったことで芽生えたある感情に心揺れるフリーライターの男性・市川茂巳を演じている。
観客賞受賞が発表され、壇上にあがった今泉監督。「このような光栄な賞をいただきありがとうございます」とあいさつすると「世界には戦争やジェンダーなど、さまざまな問題があるなか、私は個人的な小さな悩みを描く作品をずっと作り続けています。映画の題材にならないような、取るに足りない悩みを、恋愛映画を通じて笑いを含めて描いています」と自身のスタイルを語る。
さらに今泉監督は「映画に限らず、小説なども大きな問題を取り上げるという側面がありますが、僕が描く主人公は受動的であり、行動ができない葛藤みたいなものがある人物なんです」と強調。そういった見逃されてしまいそうな思いを救い上げることが、自身の作家性であることを改めて述べる。
主演を務める稲垣は先日新型コロナウイルスに感染していることが所属事務所から発表されているが、今泉監督は「稲垣さんとこの作品を一緒に作っていたのですが、コロナに感染してしまい、(11月4日に行われる)初日舞台あいさつにも登壇ができません。戦争だけではなく、コロナもそうですし、世界にはいろいろな問題がありますが、ネガティブにとらえるのではなく、そこにある小さな喜びをどのように伝えられるか、自分なりの方法で考えていきたいと思います」と力強く語った。
なお、『窓辺にて』は11月4日より全国の劇場で公開。キャストには中村ゆり、玉城ティナ、若葉竜也、志田未来、倉悠貴などが名を連ねる。(磯部正和)