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「相棒」イタミンはなぜ愛される?屈指の人気キャラ・伊丹憲一の魅力

「相棒」屈指の人気キャラ!イタミンこと伊丹憲一(中央)
「相棒」屈指の人気キャラ!イタミンこと伊丹憲一(中央) - (c)テレビ朝日・東映

 連続ドラマ「相棒season21」(毎週水曜よる9時~・テレビ朝日系)で、杉下右京(水谷豊)&亀山薫(寺脇康文)のコンビを14年ぶりに復活させた陰の立役者が、捜査一課の刑事・伊丹憲一(川原和久)だ。いつも特命係に嫌味ばかり言っているコワモテだが、その愛称である「イタミン」はSNSのトレンドを席巻。多くのファンに「可愛い~!」「ツンデレ過ぎ」と言われている人気キャラクターである。彼には、ちょっと見だけではピンとこない、深い魅力が詰まっていた。(以下「相棒season21」のネタバレを含みます)

【画像】激アツ!薫の特命係復帰をアシストした伊丹

 伊丹は薫の同期で、薫が捜査一課在籍当時は共に多くの事件の捜査に当たっていた。薫が特命係に左遷されてからも、非常事態が起きたバスに窓から乗り込もうとする薫を瞬時にサポートしたり、不審船を追って川を泳ぐ薫にボートを操縦する伊丹が手を差し伸べたりと、いざという時の息の合った行動は随所に垣間見える。

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 しかし伊丹は、薫と顔を合わせる度に「特命係の亀山~」「特亀!」などと嫌味たっぷりに呼びかける。自身の腰痛は薫が腰に乗っかったのが原因だと訴え、近づいたことを気配で察することができるほど、特命係と薫を毛嫌いしているのだが、薫と肩と肩をぶつけて威嚇し合っている姿は、まるで小学生男子のノリだ。恩師の事件の真相を解き明かした特命係に、高級メロンをお礼として持って行くも、ものすごい速さで立ち去ったり、全般的に対応が大人げない。薫がサルウィンへ去る際も、悲し気な佇まいながら憎まれ口をたたいており、総じて素直になれない不器用さの塊なのだとわかる。

 警察官としての伊丹は、組織人の処世術として長いものに巻かれようとするものの、根っこには正義感があり、ときおり爆発する。上層部のごり押しに「勝手にやれ!」とキレたり、「圧力ってやつは俺らも嫌いでね」と明言したり、上司に反発して同僚にいさめられたりもした。season21第3話「逃亡者 亀山薫」では、薫の同期というだけで捜査から外されたが、彼の容疑に疑問があればそれを晴らすために尽力したりもしていた。正しくまっすぐな警察官なのだ。

 さらに、これまで劇中で提示されている伊丹の特徴は、「怖い顔」と恐れられる割に、どこか微笑ましいものばかり。女っ気がなく、英会話教師に片思いし、婚活パーティーに行ってもうまく立ち回れない。時事問題や流行に極端に疎く、ベストセラー本や著名ニュースキャスターなども知らなかった。そもそも「イタミン」という可愛らしい愛称も、彼のギャップの魅力に気づいたファンから自然発生したもので、劇場版1作目の公開にあわせて制作されたスピンオフミニドラマ「裏相棒」でサブタイトルに使われてから“公認”されたものだった。

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(c)テレビ朝日・東映

 また、ライバルの薫が特命係を去った後も、2代目相棒の神戸尊(及川光博)時代には過去の因縁から命を狙われたり、4代目相棒の冠城亘(反町隆史)の時にも事件を見誤ってあわや失職の危機に陥ったりと、伊丹が中心になるエピソードは複数ある。何より、スピンオフ映画第2弾『相棒シリーズ X DAY』(2013)は伊丹がメインで、即席相棒となるサイバー犯罪対策課の岩月彬(田中圭)と共に、日本の危機に立ち向かった。多くの人が伊丹の動向を気にし、活躍を待ち望んでいるのだ。

 伊丹は、いまや数少ないpre season1から登場しているキャラクター。多くの脚本家が関わる「相棒」ゆえ、その表現には多少の揺れが出てくるものだが、演者の川原がそれを見事にまとめ上げ、魅力的に見せている。舞台で鍛えられた彼の芝居力がなかったら、もしかしたら伊丹は、ただの“憎たらしい敵役”になっていたかもしれない。一本筋の通った、そしてどこか可愛げのある男になっていることの功績の多くが、川原にあるのは間違いないだろう。

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 第2話「ペルソナ・ノン・グラータ~二重の陰謀」のラスト、特命係の指揮統括を行っている甲斐峯秋(石坂浩二)に伊丹が土下座したことで、薫の特命係復帰が叶ったことは周知の通りだ。刑事が一人土下座したくらいで嘱託とはいえ職員を採用できるのかとか、甲斐自身も警察庁長官官房付に降格されていてどのくらい権限があるのかわからないなど、いろいろ不明点はある。それでも、「伊丹の土下座で薫が特命係に戻ってきた」という事実で、ファンはすべて納得したと言っていい。薫の土下座は止めたのに、自身はそれを遂行し、かつ満足げな笑みを浮かべた伊丹。その説得力のある一途なツンデレぶりに、多くの人が魅了されている。(文・早川あゆみ)

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