「鎌倉殿の13人」山本耕史、“裏切り者”三浦義村の人生振り返る
現在放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)で坂東武者の三浦義村を演じた山本耕史。義村は、物語序盤から小栗旬演じる主人公・北条義時の盟友として側にいながらも、義時にとって敵なのか味方なのかわからない不穏な動きを繰り返すキーパーソンだ。「新選組!」(2004)、「真田丸」(2016)、そして本作と三谷幸喜が脚本を手掛けた全ての大河ドラマに出演歴のある彼が、裏切りを繰り返した義村として生きた1年半を振り返った(※ネタバレあり。第45回までの詳細に触れています)。
終始ブレなかった三浦義村
本作は、平家興隆の世のなか、流罪人だった源頼朝(大泉洋)を擁立し、坂東武者の復権を夢見た北条宗時(片岡愛之助)の思いを継いだ弟・北条義時を主人公にした物語。野心とは無縁の生活を送っていた義時が、やがて頼朝の右腕となり鎌倉幕府の執権にまで上りつめるさまを描く。11月27日放送の第45話までの時点では、3代将軍・源実朝(柿澤勇人)が、兄・頼家の子・公暁(寛一郎)によって命を絶たれ、その公暁も三浦義村に殺害されるなど、血なまぐさい展開もピークに向かいつつある。
山本演じる義村は、相模国に生まれ、幼なじみだった義時とは行動を共にする盟友である一方、お家繁栄のため野心を持つ人物。源頼朝が亡くなったあと激化する御家人たちの権力争いのなか、義村は常に状況を冷静に見極めて力を持つ人物に近づき、優位に動こうとする非常にしたたかな人物だ。
山本は「物語後半、次々に寝返ったりするシーンが出てきますが、よくよく考えると義村という人物は、最初から言動は変わっていないんです」と述べると「義時は物語が進むにつれてどんどん変わっていきますが、義村は北条が源頼朝をかくまうときも『首はねちまえよ』『頼朝は疫病神なんだよ』と言ったり、相手が誰であろうと、終始出る杭は打ってしまえという人間なんですよね」と定義づける。
そのため、義村を演じるうえで、変わりゆく御家人たちのなかで“変わらない”ことを意識したという山本。
「義時も、和田義盛(横田栄司)も、畠山重忠(中川大志)も立場の変化と共に容姿も変わっていくじゃないですか。でも義村に関しては、思惑や思想はもちろん、容姿に関しても衣装が少し変わったぐらいで初回から統一している。義村が変わらないことで、周囲が変わっていくさまがより強調されると思いました」
演じていてとても気持ちがよかった!
義村について「常に生き方に迷いがなかった」とも指摘する山本。常に腹に一物抱えるキャラクターを演じ続けることにストレスもあったかと思いきや、「よく言えば、北条からも、和田からも、比企からも頼られたすごい人物。史実でも、三浦が味方についた方が生き残っている。演じていてすごく気持ちがよかったです」と笑顔を見せると「逆に義時はかなり大変だったと思います。(小栗)旬くんも『義村は楽しそうだよね』と話していたぐらい。特に苦悩の義時の横で義村を演じるのは痛快でした」と感想を述べる。
さらに山本は、今後展開する義時と義村の関係について「この二人は非常に面白い幕の引き方をしています」と語ると「とても見応えがありつつ、しっかりと腑に落ちるというか……。ある意味で義村っぽくないなと思った瞬間に、義村っぽさが出る。掌が返っていく感じが楽しめる、とても痛快なシーンになっていると思います」と期待をあおっていた。
“出る杭は打つ”というポリシーのもと、わが道を突き進んでいく義村。「台本のページをめくって義村が出てくると『あー、なるほどこっちにつくんだ』と思って、次のページをめくると『奴が話に乗ってきた』みたいな展開になる。もちろん史実はベースにあるのですが、油断すると自分で演じていても、義村がどちらにつくのかわからないときもありました。それが最後には僕ら二人(義村と義時)が納得する形で終わるんですから、本当に素晴らしい本でした」と脚本を担当した三谷幸喜を称賛する。
ブレない義村も心がざわついたシーン
そんなブレない義村でも想定外だったのが、和田合戦までのいきさつを描いた和田義盛とのやり取りだったという。「(巴御前に、和田を決して裏切らないと一筆書かされた)起請文を飲まされたシーン(第40回「罠と罠」)があったと思いますが、あのときは、さすがに腹をくくって和田につくという思いだった。それなのに義盛が『どうせ裏切るなら、ギリギリで裏切らないでほしいんだよな』みたいなことを言うじゃないですか」と述べると「お前がそうやっていうのならいいんだな? みたいな感じになって……。基本的に義村は自分のポリシーのもと動くのですが、あのシーンは、気持ち的にちょっと揺れる場面ではありました」と回顧。
また心が苦しかったシーンについては、公暁の暗殺シーン(第45回「八幡宮の階段」)を挙げた。「やっぱり残酷だなと思いました。義村自身が(公暁に)実朝暗殺を焚きつけておいて、失敗に終わって三浦が危ないと思ったら、あっさり殺害してしまうんですからね。しかも(公暁演じる)寛一郎がすごくきれいな眼差しで悲しみをまとって演じていたので。ある意味で義村らしいのですが、何となく申し訳ない思いはありましたね」と振り返っていた。(取材・文:磯部正和)