東宝が2022年を総括 興収630億円前後とコロナ前の水準も「10億円のハードルが以前より上がった」
2023年東宝配給作品ラインナップ発表会が13日、TOHOシネマズ日比谷で行われ、2022年の興行収入に関して東宝株式会社取締役専務執行役員の市川南氏は「まだまだコロナの影響が大きな1年ではありしたが、何とか乗り切れた1年」と総括する共に、2023年は「新記録を狙う1年にしたい」と意気込んだ。
【画像】宮崎駿監督の直筆!『君たちはどう生きるか』ポスタービジュアル
市川氏は2022年の日本映画界を振り返り「邦画・洋画合わせた年間興行収入は、予測では2,100億円前後の見込み」と述べると「そのなかで東宝は23作品を配給し、興行収入では630億円前後」と数字を発表。東宝は例年“興収500億円を超えよう”という目標のもと、19年連続で目標達成、さらに11年連続600億円超えを記録した。コロナ禍のなか「まずまずの数字」と評価した。
23作品のなか、ヒットの目安と言われている10億円超え作品は12作。上位3作品は興収138億円を記録した『劇場版 呪術廻戦 0』(公開は2021年12月)、97.8億円の『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』、現在公開中で85.9億円を記録している『すずめの戸締まり』とアニメが占めたが、アニメーションと実写の比率は、アニメ53パーセント、実写47パーセントという数字。アニメの方が比率は高いが、この数字は2016年に『君の名は。』を製作・配給した年からのほぼ平均値だという。
一方で、東宝株式会社執行役員・吉田充孝氏は「『すずめの戸締まり』が今月中に100億円を超えるという見込みでお話をすると、1年に2本の100億円超えを記録するのは、東宝としては初」と述べつつも「10億円下回った作品は11作品ありました。10億円のハードルが以前より上がった感触がある」と指摘した。
さらに業界全体について、吉田氏は「『すずめの戸締まり』が100億円を超えると見越すと、『ONE PIECE FILM RED』『トップガン マーヴェリック』『劇場版 呪術廻戦 0』と4本の作品が100億円を超えることになります。これは年間興収で新記録になった2019年以来。コロナ禍になって以降、2020年が1,432億円、2021年が1,618億だったことからすると、大きなジャンプアップだった」と述べつつも「一方で、コロナ禍前には50~60本あった興収10億円超えが、昨年は37本、今年は39本でした。数字は上がっていても、全体が底上げされたイメージがない。業界がコロナ禍前に戻ったなと実感できるのは、興収10億円以上の作品の数が戻ってこそ」と課題を挙げた。
2023年は現時点で、宮崎駿監督の10年ぶりとなる長編映画『君たちはどう生きるか』(2023年7月14日公開)や、今年興収50億円を突破した『キングダム2 遥かなる大地へ』の続編『キングダム3(仮)』(2023年夏公開)、是枝裕和監督の『怪物』(2023年6月2日公開)など25作品がランナップ。市川氏は「新記録を狙う1年にしたい」と自信をのぞかせていた。(磯部正和)