「舞いあがれ!」キャストも涙…“浩太”高橋克典、最期のシーンの舞台裏
1月9日に放送された連続テレビ小説「舞いあがれ!」の第67回で、ヒロインの舞(福原遥)の父である浩太(高橋克典)が急逝し、多くの視聴者も悲しみに暮れた。制作統括を務めるチーフ・プロデューサーの熊野律時が、この大きな反響を呼んだ浩太を演じた高橋の存在感や、撮影時の現場の雰囲気などを振り返った。
連続テレビ小説の第107作となる「舞いあがれ!」は、ものづくりの町・東大阪や五島列島でさまざまな人との絆を深めた舞が、空への夢に向かっていく姿を描く物語。前週で舞は、パイロットになる夢をいったん諦め、父の浩太から継いでIWAKURAの社長となった母のめぐみ(永作博美)ととともに、会社再建のために働くことを決意した。
13週以後、リーマンショックの影響もあり、浩太の会社である株式会社IWAKURAの経営は悪化。浩太は社長として会社を立て直している最中、心筋梗塞のために亡くなってしまう。舞は、母のめぐみ(永作)と経営の傾く会社を売却するか立て直すかで思い悩むが、パイロットの内定を辞退して就職。営業担当として会社再建のために奔走する。
熊野は高橋が演じた浩太について「舞と存在が一番近い」と述べ、「夢を共有する存在でもあるし、コツコツ積み上げていって夢を実現していく姿勢も舞に強い影響を与えている」と説明。その人柄についても「家族思いで社員のことも大事に思っている。人情のある愛情のあるお父さん」と話す。
そんな浩太の存在をドラマで描くことにも意義があったということで「リーマンショックとかいろんなことが重なって、会社がうまくいかなくなっていく。一生懸命、誠実に愛情を持って生きているけどうまくいかないところもある。そういう人生のリアリティのようなものを表す存在でもあった」という。
熊野は「朝ドラでは、ダメなお父さんはたくさん出てきますが、今回は素敵なお父さんであってほしいな、と。そこを大事にしました。亡くなった後も舞の中にはお父さんのことがずっと残り続けますし、それに対してどういうふうに生きていこうかって考える時も、お父さんの姿が蘇ってくる。物語の半ばで亡くなってしまいましたけど、舞の中には残り続ける。舞の大事なお父さんとして描いています」と浩太の存在を説明する。
その制作サイドの思いを高橋も十分に理解して演じていた。「本当に魅力的に演じていただけたと思います。娘に愛情を注ぐ一方で、(舞の兄の)悠人とは微妙な距離感も持っている。愛情もあるし、お互いに思いあってもいるんだけど、うまく噛み合わないお父さんの切なさというのもリアリティをもって表現していただけました」と高橋の演技を絶賛。
熊野も制作サイドでありながら、浩太の死に対してショックを受けたという。「あんないいお父さんがいなくなって、この先舞もめぐみさんも悠人もどう生きていくのって」と浩太の死のシーンを惜しんだとのこと。現場では岩倉家のメッセージグループがあるほどキャストは仲が良かったことにも触れ、高橋が最後のシーンを撮り終えた時は「『お父ちゃん本当にいなくなって寂しい』と舞もめぐみさんも涙を流していました」と紹介する。
さらに、熊野は「高橋さんも『寂しいな』と話しながら自分の遺影と写真を撮っていました。『いつも写真の向こうにいるから』って言っていました」と高橋の茶目っ気のあるクランクアップの様子を明かす。「本当に家族のようにお互いのことを思って演じていらっしゃったんだなって思いました。素晴らしかったです」と高橋に感謝の気持ちを述べていた。(取材・文:名鹿祥史)