映画『スラムダンク』名シーンの映像化に徹底したこだわり 観客席にはお楽しみも?
大ヒット中のアニメーション映画『THE FIRST SLAM DUNK』で、演出を担当した宮原直樹が、「非の打ち所がない」という原作の映画化へのこだわりを明かしながら、原作ファンにとってはうれしい小ネタにも言及した。(以下、映画の内容に触れています)
【動画】『スラムダンク』OPの秘話も 演出・宮原直樹インタビュー
原作者・井上雄彦の監督・脚本で、1990年代に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載されたバスケ漫画の金字塔を映像化した本作。湘北高校バスケ部の切り込み隊長・PG(ポイントガード)宮城リョータを主人公に、3つ上の兄とすごした地元・沖縄の日々など、彼の過去を振り返りながら、王者・山王工業とのインターハイ戦に臨む湘北メンバーを描く。
大勢のファンが待ち望んでいたであろう、名試合の映像化。昨年12月の公開以来、興行ランキングのトップを独走し、ついに興行収入100億円を突破。宮原は「魅力的な絵であったり、世代や時代を問わず誰もが感動できるストーリーであったりと、本当に非の打ち所がない原作なので、アニメ化でその魅力が目減りすることは許されないと思っていました。頭の先から尻尾の先まで井上監督の色が詰まっていて、なおかつ映画として魅力ある作品になるようにスタッフ一同必死で頑張ったので、それが実ったのかなと、喜んでおります」と胸をなで下ろす。
主人公が桜木花道ではないこと、井上が描いた宮城の過去のエピソードには、宮原たちも驚かされたが、そこから「宮城リョータを描ききる」という本筋のテーマがブレることはなく制作は進んだ。映画では、山王戦は後半戦がメインに描かれているが「まずは、原作にある要素をほぼほぼ盛り込んだ編集を一回やってみる。やってみて、そこから(本筋から)曲がったなという部分はそぎ落としていく。こうした行程を何度も繰り返したので、そのなかで取捨選択があったと思います」
「前半の桜木と(河田)美紀男の押し合いはモーションキャプチャーで収録していたり、前半戦の攻防もある程度はありましたが、そうするとどうしても宮城から桜木へと視点が大きく動いてしまう。映画にするうえで、そうした全体のイメージを考えたうえで、井上監督も判断されていたのではないかと思います」
もちろん原作の名シーンも徹底したこだわりで映像化。原作の魅力を完璧に引き出すために、モーションキャプチャーを納得するまで収録し、更にその後のCGアニメーションの様々な工程でも細かな調整を繰り返すなど、試行錯誤が続いた。
特に、原作ファンにとっても印象深い、セリフのないラストの攻防は、無音の演出もあいまって、まさに息を呑む迫力。宮原は、「劇中でも、あそこだけにしか使ってないような手法も使っています。あらゆる映像的なテクニックを使って、カットの順序や尺も何度も変えたので、あそこだけでも、いろんなバージョンがあったと思います」と振り返る。
公開以来、Twitterでは、観客席に原作のキャラクターを見つけたという声も。宮原は「会場にいる……とされている人たちはたぶん、全員いるんじゃないかと思います」と笑みを見せながら「まだ、見つかっていないな……という人もいると思っていますけどね」と気になる回答。公開以来、数多くのリピーターを獲得している本作だが、スタッフのこだわりが反映されたちょっとした小ネタも楽しめそうだ。(編集部・入倉功一)