「どうする家康」なぜ武田信玄役に阿部寛?反響呼ぶキャラクターを制作統括が語る
大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合ほか)で話題沸騰の阿部寛演じる武田信玄のキャスティングの理由を、制作統括のチーフプロデューサー・磯智明が語った。
松本潤演じる徳川家康の生涯を、「コンフィデンスマンJP」シリーズなどの人気脚本家・古沢良太が描く本作。家康は戦国の乱世に終止符を打った偉大な人物として知られるが、本作ではさまざまな重責を背負い挫折を繰り返しながら、「どうする?」と右往左往して歩みを進める等身大の人物として描かれる。阿部演じる甲斐・信濃国主・大名の武田信玄は、戦国時代に圧倒的な強さを見せた武将。若かりし家康に多大な影響を与えていく。
“阿部信玄”といえば、まず強烈なビジュアルが注目を浴びている。頭を剃り上げ、きりりとした太い眉、頬から顎にかけて髭をたくわえた姿は威厳たっぷりだ。ビジュアルを作り上げたのは、本作の人物デザイン監修を務める柘植伊佐夫。これまでドラマ「岸辺露伴は動かない」シリーズや映画『シン・ゴジラ』『翔んで埼玉』などに携わっている。
「出家した後の設定なので法衣をまとっています。信玄は非常に信心深く仏教に帰依している人物なのでそこからくるミステリアスな魅力と、武将としての強さの双方を表す必要がありました。髭は男らしさ、強さの象徴ですね。衣装の基調となっているのは赤と白。武田家は赤のイメージがありますが、実際に信玄の鎧などをみてもそれがわかります。白は何色にも染まらない潔癖さ、神秘性もあります」
阿部にとって大河ドラマは2009年の「天地人」以来、14年ぶり。信玄役に阿部をキャスティングした理由は何だったのか?
「日本で一番強そうに見えるから、でしょうか。無二の存在感がありますし、たたき上げのような芯の強さがあります。当時の戦国武将では武田信玄が一番強かったと思うんですよ。そんな人がたまたま近くにいた、ということが家康の大変なところだと思うので、家康にとって脅威の象徴であり器の大きさを見せつける……というところでは阿部さんしかいないと思いました。体も大きいですし、ものすごいオーラ、凄みがありますよね。それに、隣にいると『何を考えているんだろう』と思わせるミステリアスな雰囲気もありますよね」
信玄は初回から登場し、第3回にかけて短いシーンながらその存在感が毎回話題に。9回で久々に姿を現したが、作り手側として反響をどう感じているのか?
「ああ、“ローマ人みたい”っていう感想ですよね(笑)。隠し湯のシーンがあると面白いのかな(※注:阿部寛が主演映画『テルマエ・ロマエ』シリーズ(2012・2014)で古代ローマ人を演じていた)。このドラマはなるべく家康目線で物語を作ろうとしているので、信玄側のストーリーをパラレルで描くとかいうスタイルはとっていないんです。先々の話を展開するためのヒント、伏線として描いているので、短いシーンの中でどれだけ信玄を思わせるかが重要でした。ですから、それを感じていただけているのはうれしいですね。あとは、例えば駿河(静岡)だったら都会風に、三河(愛知)だと田舎風と土地の特徴を表していく中で、家康が抱く「山の国に住む信玄」というイメージも印象付けたかった。そういったことも含めて“阿部信玄”像がつくられたということだと思います」
史実では、武田軍と徳川・織田の連合軍が激突する「三方ヶ原の戦い」で、家康が信玄に惨敗したとされている。本ドラマでは、死しても家康を苦しめ続け、同時にそれが糧となる人物として描かれる。(編集部・石井百合子)