新田真剣佑、ハリウッド初主演作でかなえた夢「一番観てもらいたい」父への思い
海外での活躍を誓い日本を旅立った新田真剣佑が、大人気コミックを実写化する『聖闘士星矢 The Beginning』でハリウッド映画初主演を果たした。ハリウッド進出は「絶対に叶えたい夢だった」という新田は、それを見事に実現させた本作を「一番観てもらいたかった人」とリスペクトと愛情を込めるのが、2021年8月に亡くなった父親でレジェンド俳優の千葉真一さんだ。新田が父への思いとともに、夢を叶えるごとに増えている“感謝の気持ち”について語った。(取材・文:成田おり枝/写真:TOWA)
絶対に諦めない星矢のハート
1985年から週刊少年ジャンプで連載を開始し、コミックの全世界累計発行部数が5,000万部を突破した車田正美の人気コミックを、壮大なスケールで実写映画化した本作。漫画やアニメで描かれてきた「聖闘士星矢」の“はじまりの物語”として、アテナを守る闘士、聖闘士(セイント)になることが運命だと告げられた青年・星矢(新田)が、修行を経て成長を遂げていく姿をつづる。監督を、Netflixドラマ「ウィッチャー」のトメック・バギンスキーが務めた。
大人気コミックを実写映画化するために、ショーン・ビーンやファムケ・ヤンセン、マーク・ダカスコス、ニック・スタールら錚々たる俳優陣が顔を揃えた。そんな中、主演に抜てきされた新田は「もちろんプレッシャーはありました」と告白。「そのプレッシャーを意識しすぎるのもよくないなと思ったので、いかに星矢に命を吹き込めるかということに集中して。監督たちと『どのような星矢を作っていこうか』とたくさん相談しながら、役柄に臨みました。チームの皆さんがいなければ、絶対に成し遂げられない挑戦でした」とプレッシャーを乗り越えられた秘訣(ひけつ)は、チームのおかげだと語る。
劇中には、少年のようなやんちゃさと、どんな壁にも立ち向かう強さみなぎる星矢がお目見え。見ている側もワクワクするような、熱気に満ちたキャラクターとなった。新田は「原作ファンもたくさんいらっしゃる作品。星矢のハートを大事にしながら演じました」と原作に敬意を表しながら、「星矢と自分は、どこか似ているところがある。彼の“失敗しても立ち上がる”、“絶対に諦めない”という姿は、僕自身もとても清々しく感じるものでした。映画を観ていただく方々にとっても『よし、行け!』と応援したくなるような存在だと思っています」と星矢に愛情を傾けていた。
アクションを叩き込んでくれた師匠の存在
バトルアクションが見どころとなる本作には、マーベル・スタジオ作品『シャン・チー/テン・リングスの伝説』でスタントコーディネーターを務めたアンディ・チャンが、アクションチームに加わっている。
『ブレイブ -群青戦記-』や『るろうに剣心 最終章 The Final』でもキレキレのアクションを披露するなど、アクションには定評のある新田だが、「アンディはいろいろなアクションを用意してくれるんです。そこから『どれができる?』『どれができない?』という話をして、僕は『できないものはないです』と答えて」とにっこり。
続けて「もしアンディの提案の中にやれないことがあったとしても、『やれないことはないです』と言わないと。『やれません』とは言えない。自分を鼓舞するためにも『絶対にやります!』と応じます」と笑い、「するとアンディからは『これにしよう』『これもやりたいね』とどんどんアイデアが出てきて、なかには『これ、本当に使う?』というようなアクションもあったりして。途中からは『やれるから、これもやってみよう』とアンディも楽しくなってきてしまったみたいで、いろいろなことにトライさせてもらいました。チャレンジングではありましたが、とにかくレベルの高いアクションでものすごく楽しかったです」と新田のアクション力に惚れ惚れとしたアンディが、前のめりになってアクションをつけてくれたという。
本作の星矢は、白銀聖闘士(シルバーセイント)・マリンのもとで、強くなるために特訓を重ねていく。アクションスターである千葉さんのもとで育った新田も、幼少期から空手やレスリング、体操などに打ち込み、アクション力を身につけてきた。「日々の積み重ねでしかない。継続が大事」と自身のアクション力の秘訣を語る新田に、マリンのような師匠はいるのだろうか? すると新田は「もちろん千葉さんもそうですが、僕にとって大切な師匠と言えるのは、千葉さんの弟子で、今のJAE(旧:JAC・ジャパンアクションクラブ)の代表の方。僕が小さな頃から、マンツーマンで稽古をつけてくれました。思い立ったらすぐに行動に移す方で、僕が『バク宙をやりたい!』と言えば、『よし、わかった!』とすぐに時間を作ってくれました」と目を細める。
全ては映画界を盛り上げるため
ハリウッドの制作チームと一丸となって、撮影に没頭した経験は「とても刺激的だった」と振り返った新田。「ハリウッドの現場では働く時間がきちんと決まっていて、その中で誰もが平等の立場として、命をかけて映画の完成に向けて挑戦していました。時間的に規則正しく撮影が行われることもあって、みんなとてもエネルギッシュ。チームの働き方を見ていても、毎日刺激をもらっていました」と飛び込んだ新天地で、充実の日々を過ごした。「監督は、いいカットが撮れるとダンスをするんです。少年のように喜ぶんですよ。『みんなで一つのものを作っているな』とみなぎるような瞬間が、何度もありました」。
千葉さんもハリウッド俳優としても活躍し、クエンティン・タランティーノ監督やサミュエル・L・ジャクソンをはじめ、世界中に熱烈なファンを持っている。千葉さんが世界を舞台にした映画作りを夢見たように、ハリウッドでのキャリアを本格スタートさせた新田。「本作を千葉さんに観せたかった。一番観てもらいたかった人です」と口火を切る。
「父の夢を受け継ごうと思ってハリウッドに旅立ったわけではありませんが、僕自身、映画界を盛り上げるためにも、少しでも可能性があるならば、日本から海外へ出ていける人がいたほうが絶対にいいなと思っていて。だからこそ、今回こういった形でその夢を叶えられてとてもうれしいです。どこまで行けるかはわかりませんが、これからも自分にできることを精一杯にやっていきたい」と高みを目指していく覚悟を明かす。
「夢を叶えるために欠かせなかったもの」について聞いてみると、新田は「周囲の人の存在」ときっぱり。「自分一人では、夢を叶えることはできません。『この人の夢を叶えたい』と思ってくれる人がいなければ、ここまで来ることはできなかったと思います。本当に感謝しかありません。夢が叶うごとに、周囲への感謝が増えていきます」と熱っぽく語る。終始、晴れやかな笑顔と映画への愛情いっぱいにインタビューに応じた新田真剣佑。進化し続ける彼の歩む道のりが、ますます楽しみになる。
映画『聖闘士星矢 The Beginning』は4月28日より全国公開
ヘアメイク:いたつ
スタイリスト:櫻井賢之[casico]