是枝裕和監督が坂本龍一に楽曲をオファーした理由
映画『怪物』(6月2日公開)の完成披露試写会が8日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで開催され、是枝裕和監督が坂本龍一に楽曲をオファーした理由を明かした。イベントには安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、中村獅童、脚本を担当した坂元裕二も参加した。
映画『万引き家族』などの是枝監督が、大きな湖のある郊外の町を舞台に、子供たちの些細なケンカが社会やメディアを巻き込み大事に発展していくさまを描いた本作。是枝監督は「舞台となる湖が諏訪に決まったとき、脚本の風景が明快になっていった」と語ると「夜の湖に龍一さんのピアノが響くといいな」と思い、撮影の許諾を得る前に、坂本さんの曲を映像に仮当てし、その映像と共に坂本に手紙を書いたという。
是枝監督は「体調のことがあったので、ダメだったら諦めよう」と思っていたというが「作品をすぐに観ていただいて『全部を引き受ける体力はないのですが、映像を拝見して面白かったので、浮かんできたイメージを形にしているので、よかったら』と2曲いただいたんです」と楽曲の提供があったという。
さらに是枝監督は「これまで発表した曲も使っていただいて構いませんとおっしゃってくださいました」と語ると、提供された楽曲にプラスして、今年1月17日に坂本がリリースしたアルバム「12(読み:トゥエルブ)」の収録曲なども作品に使用していることを明かした。
坂本は今年3月28日に亡くなったが、是枝監督は「亡くなられたことはとても残念です」とつぶやくと「でも最後にこういう形でご一緒できたことは僕の誇りです。出来上がった作品を観ると、坂本さんの楽曲はこの映画に必要だったと改めて感じました。『12』の曲も、映画を観てから作ってくださったのかなと思うぐらい、作品のなかから聴こえてくる曲として存在しているんです。不思議ですよね」としみじみ語っていた。(磯部正和)