北野武監督『首』は“暴力と死と男色”の本能寺の変!カンヌ上映直前の期待を語る
第76回カンヌ国際映画祭
第76回カンヌ国際映画祭カンヌ・プレミアに選出されている映画『首』のお披露目を翌日に控えた現地時間22日、北野武監督、西島秀俊(明智光秀役)、加瀬亮(織田信長役)、中村獅童(秀吉に憧れる百姓・難波茂助役)、浅野忠信(黒田官兵衛役)、大森南朋(羽柴秀長)がカンヌの地に集結し、上映への期待を語った。
本作は北野監督6年ぶり19作目の監督作。北野監督は原作・脚本・編集・秀吉役も務め、日本人なら誰もが知る羽柴秀吉、明智光秀、織田信長、徳川家康ら戦国武将たちと本能寺の変を一大スケールで活写した。
カンヌの公式上映では本作のどこを世界の人々に観てほしいかと問われた北野監督は、「日本の時代劇というと、映画でもNHKの大河でも、“戦国時代の英雄”の裏の話は描かれない。要するに、ああいう人たちはろくなものじゃないですから。単なる悪いやつで、成り上がるためにいろいろなことをやって来た」と切り出す。「フランシスコ・ザビエルの書いたものなんかを読むと、日本に来て布教活動をして一番驚いたのは、衆道(身分や立場の差がある男性同士の男色)って言って、まあ男色だけど、それがごく普通の一般庶民の中にまではびこっていたこととある。これまでの時代劇にも小姓の森蘭丸とかは出てくるのに、そういう実態はあまり描かれてこなかった」
そこで本作では、「それが正しいか正しくないかではなく、当たり前にそういう世界があったということを、平気で描くようにした」のだという。「その中の人間関係が光秀の本能寺の変につながっていくという“裏ではささやかれるけど、あまり表では描かれないようなこと”を意識して映画化したので、『全然今まで観たものと違う』と言われるかもわかんないけど」と観客が本作での描写にどう反応するかを楽しみにしていた。
さらに「暴力と死と男色というのは、かなりリンクしていると思うんだよね」とも語った北野監督。「殿様を助けるために死んでいくこと、殿様と衆道の関係とか、それがあるからこそ殿様の盾になって自分が死んでいけるということがあって、それは愛と死と暴力の三つが混在した部分。それは、時代と文化が育んだ武士としての作法とかに関わってくることでもあると思う」と続けていた。
光秀役の西島は「戦国時代という時代そのものを世界の人たちに感じてもらいたいし、常に死がすぐ傍にある世界で、愛情だったり、成り上がりたいという欲望だったり、いろんなものがむき出しになって、上の人間も下の人間も欲と業でうごめいている。その世界そのものをたくさんの人たちに観ていただきたいなと。どういう反応になるのか本当に楽しみです」とほほ笑む。かつてなく残虐な信長を演じたという加瀬は「個人的にはたくさん暴力も描かれているので、それは観ていて痛快なのかなと思います」と笑っていた。(編集部・市川遥)
映画『首』は2023年秋、全国公開
第76回カンヌ国際映画祭は現地時間27日まで開催