『ワイルド・スピード』キャストは結局仲良い?悪い?不仲問題を解説
映画『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』の公開で再び話題になっているのが、主演兼プロデューサーのヴィン・ディーゼルと、ルーク・ホブスを演じるドウェイン・ジョンソンの確執だ。二人の間になぜ、確執が生まれてしまったのか? キャスト同士は本当に不仲なのか? 二人の過去を振り返ってみる。(以下『ファイヤーブースト』のネタバレを含みます)(文/猿渡由紀)
ドウェイン演じるホブスが初めて登場したのは、シリーズ5作目『ワイルド・スピード MEGA MAX』。特別捜査官のホブスは、ドミニク(ヴィン)らを追っていたが、6作目『ワイルド・スピード EURO MISSION』では、世界を脅威にさらす極悪人オーウェン・ショウ(ルーク・エヴァンス)を捕まえるべく、力を合わせることになる。ホブスは7作目『ワイルド・スピード SKY MISSION』、8作目『ワイルド・スピード ICE BREAK』にも登場。その後、ホブスとショウを主人公に据えたスピンオフ『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』も製作された。
ヴィンとドウェインの不仲説が最初に浮上したのは、『ICE BREAK』を撮り終えたばかりの2016年8月のこと。ドウェインは、Instagramに「(男性俳優の)共演者にはとてもプロフェッショナルな人もいる。だが、そうでない人もいる。そういう人は、それに対して何もしようとしない」と書き、さらに「来年4月に公開の映画」に彼が怒り狂っているシーンがあるが、それは「演技じゃないから」と付け足したのだ。
2017年4月公開の出演作というのは、『ICE BREAK』のこと。名指しこそされなかったものの、この「プロフェッショナルではない共演者」はヴィンで、彼に対してドウェインは怒りを覚えているのだと人は理解した。それを受けてヴィンは、「ちょっと時間をちょうだい。全部話すから」と発言。彼のコメントについて言いたいことがあるのだと匂わせたが、それ以上は言わなかった。
『ICE BREAK』のプレミアには二人とも出席しており、ヴィンは何も問題がないと強調するも、ドウェインは、二人の間には仕事に対する姿勢の違いがあると語り、やはり溝を感じさせる。そこへ、スピンオフ『スーパーコンボ』を先に作り、9作目『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』は後回しになると決まり、事態はさらに複雑になった。この決定に不満なタイリース・ギブソン(ローマン役)が、『ジェットブレイク』が遅れるのは自分の主演作を優先したがったドウェインのエゴのせいだとソーシャルメディアで非難したのだ。それだけでなく、ドウェインが『ジェットブレイク』に出るなら自分は出演しないとも、タイリースは宣言した。
結局『ジェットブレイク』はドウェイン不在で、タイリースは出演している。公開前、ドウェインとの衝突について聞かれたヴィンは、役者から最高の演技を引き出すために厳しくなることもあると、プロデューサーとして指導した結果、彼を怒らせたのだというような答をした。そのコメントについて、ドウェインは「笑わせてもらった。あれにはみんな笑っただろう。9作目の成功を祈る。10作目と11作目も。俺が出ないこれからの『ワイスピ』の幸運を祈るよ」と対抗。ドウェインが戻ってこないのは、これで決定的だと思われた。
しかし、最新作『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』のポストクレジットシーンで、ドウェインはホブスとしてサプライズ登場を果たした。全員が、彼の出演を諦めていたわけではなかったのだ。交渉をリードしたのは、『ファイヤーブースト』撮影開始直後に降板したジャスティン・リンの後任として、監督に就任したルイ・ルテリエ。シリーズの大ファンだったルテリエ監督は、ドウェインの復帰を願い、スタジオのプロデューサーにある考えを話した。それは、とにかく10作目をドウェインに観てもらうことだった。
「僕らはドウェインと彼のチームに連絡をし、『映画を観に来てください。良いと思ってもらわないことには話になりませんから』とお願いした。そして、ドウェインは映画をすごく気に入ってくれた。話し合いが始まると、そこからは速やかだったよ」とルテリエ監督は The Hollywood Reporter に語っている。つまり、あのポストクレジットシーンは、本編が完成した後に撮影されたということだ。ルテリエ監督のおかげで、フィナーレに向けて走り出した同シリーズに、重要なキャラクターが帰ってくることになったのである。
こうなったことを、ヴィンは恐らく歓迎しているだろう。プロデューサーである彼にすれば、人気のスターが戻ってきてくれるのは良いことだからだ。9作目ではハン(サン・カン)を連れ戻したし、『ファイヤーブースト』の本編ラストでは、6作目『EURO MISSION』で死んだはずのジゼル(ガル・ガドット)がちらりと姿を見せるサプライズもあった。死んだはずのキャラクターが復活するのに、死んでもいないホブスが不在だと不自然さがあるし、ファンにキャストの不仲を思い出させる。
しかし、新たな撮影現場で、ヴィン、ドウェイン、そしてタイリースは、心を入れ替えて仲良くやっていけるだろうか。すべてはヴィンの仕事に対する姿勢から始まったことを考えると、その鍵はヴィンが握っていると思われる。家族をテーマにしたこのシリーズは、カメラの裏側でも家族らしい雰囲気の中で終了を迎えられるのか。なりゆきを見守りたい。