村井國夫、インディ・ジョーンズとの出会いと別れ 38年経っても「永遠の少年」
1985年に日本テレビ系「金曜ロードショー」で放送された『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から、主人公インディ・ジョーンズの吹き替えを担当してきた俳優・村井國夫(78)。主演のハリソン・フォード(80)にとって最後の『インディ・ジョーンズ』となる、最新作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(全国公開中)でも日本語版声優を続投する村井がインタビューに応じ、38年間向き合ってきたインディとの出会いから別れを語った。
【動画】ハリソン最後のインディ!『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』予告編
『インディ・ジョーンズ』シリーズは、ハリソンふんする考古学者の主人公インディが、未知の秘宝を求めて世界中を駆け巡る冒険活劇。シリーズ5作目となる『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』では、人類の歴史を変える秘宝“運命のダイヤル”を巡り、インディと元ナチスの科学者フォラー(マッツ・ミケルセン)がし烈な争奪戦を繰り広げる。
村井とインディ・ジョーンズの出会いは、38年前の『レイダース』金曜ロードショー版にさかのぼる。インディは『スター・ウォーズ/新たなる希望』のハン・ソロ役で一躍時の人となったハリソンの新たなハマり役であり、大役を担う村井も「私が芝居を邪魔するのではないかと、すごく気にしていました」と不安を抱いていた。
「ハリソンがどのようなニュアンスでセリフを話し、インディを表現するのか、私も役者として、日本語でそれを体現したかったです。私とハリソンは声の質が異なるので、お客様が違和感を感じないように考えて、当時から吹き替えていました」
冒険家として危険を顧みない大胆さと行動力を見せる一方で、極度のヘビ嫌いや女性に弱いなど、人間味あふれる一面も兼ね備えているインディ。村井も、観客を虜にするキャラクターのギャップに注目する。「色っぽさもありますし、父親と二人で争ったり、嫌いなヘビが出てきたら大騒ぎするギャップが可愛いです。冒険家として、誰もが持っているチャレンジ精神や男のロマンをスクリーンで体現してくれる姿も素敵です」
30日に金曜ロードショーで地上波放送される『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』では、インディの吹き替えを新録し、シリーズ全作品で声優を務めることができた。情報発表の際は、SNSはもちろん、知人からの反響も大きかったそうで、「インディは私にとって特別な役なんだと実感しました。SNSで『インディの声は村井國夫さん』という言葉を見かけると嬉しいですし、こうしてファンの方々に支えられているんだなと改めて感じました」と感慨深げに語る。
ハリソンは『運命のダイヤル』をもってインディ・ジョーンズ役を卒業すると明言しており、村井にとっても最後の『インディ・ジョーンズ』となるだろう。「一つ一つのカットから、惜別の思いや『これで終わりなんだ』という気持ちを汲み取っていました」とアフレコ収録を振り返る。
『運命のダイヤル』ではデジタル技術で若返ったハリソン演じるインディの冒険が描かれるなど、村井も収録を通して“原点回帰”を感じたという。「『レイダース』の頃のあの冒険が蘇ったようなワクワク感がありました。肉体を駆使したアクションシーンもたくさんあるので、観応えがあります。お客さまも何度も作品を観返して『あれ、これは……?』と新発見を楽しんでほしいです」
年齢を重ねてもなお、インディ・ジョーンズは中折れ帽とムチを手に世界中を駆け回り、まだ見ぬ秘宝を探し求める。そんなインディを、村井は「永遠の少年」と表現した。「『運命のダイヤル』でもトゥクトゥクに乗って街中を疾走したり、少年みたいな姿を見せてくれます。インディの冒険は観ていて楽しいですし、いつまでもこの少年の心を持ち続けると思います」(取材・文:編集部・倉本拓弥)