宮沢りえ×石井裕也監督、世に問うべき問題作『月』10.13公開決定
実際の障害者殺傷事件をモチーフにした辺見庸の同名小説を、宮沢りえ主演、石井裕也脚本・監督で映画化した『月』が、10月13日に公開されることが決まった。
本作は、社会が、そして個人が問題に対して“見て見ぬふり”をしてきたという現実をつまびらかにし、世に問うべき問題作。深い森の奥にある重度障害者施設を舞台に、新たにこの施設で働くことになり、他の職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりする元・有名作家の堂島洋子を宮沢が演じる。このほか、洋子の夫・昌平をオダギリジョー、施設の同僚で作家を目指す陽子、絵の好きな青年さとくんをそれぞれ、二階堂ふみと磯村勇斗が担う。
十代の頃から辺見作品に魅せられてきたという石井監督は、このテーマに目を背けてはならないという信念のもと、「撮らなければならない映画だと覚悟を決めた」と本作を作り上げることを決意。「この映画を一緒に作ったのは、人の命や尊厳に真正面から向き合う覚悟を決めた最高の俳優とスタッフたちです。異様な熱気に満ちています。宮沢りえさんがとにかく凄まじいです」と明かした。
公開された場面写真には、まるで何かを隠そうと生い茂る森に囲まれ、佇む洋子が写し出されており、さまざまな悩みや不安を抱えていることが読み取れる表情が印象を残す。石井監督が明かす“凄まじい”宮沢の演技に期待が高まる1枚になっている。（高橋理久）
コメント全文
■監督・脚本：石井裕也
この話をもらった時、震えました。怖かったですが、すぐに逃げられないと悟りました。撮らなければいけない映画だと覚悟を決めました。多くの人が目を背けようとする問題を扱っています。ですが、これは簡単に無視していい問題ではなく、他人事ではないどころか、むしろ私たちにとってとても大切な問題です。この映画を一緒に作ったのは、人の命や尊厳に真正面から向き合う覚悟を決めた最高の俳優とスタッフたちです。人の目が届かないところにある闇を描いたからこそ、誰も観たことがない類の映画になりました。異様な熱気に満ちています。宮沢りえさんがとにかく凄まじいです。
■プロデューサー：長井龍
目の前の問題に蓋をするという行為が、この物語で描かれる環境に限らず、社会の至る所に潜んでいるのではないか、という問いが映画『月』には含まれています。
障害福祉に従事されている方にも本作をご覧頂き「この映画を通して、障害者の置かれている世界を知ってもらいたい」という言葉も預かりました。本作を届けていく必要性を改めて噛み締めています。そして、映画製作を通して、この数年で障害福祉の環境が変わろうとしている現実も目の当たりにしました。そのこともまた、社会の持つ可能性のひとつだと信じています。