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横浜流星が格闘技にこだわる理由 小学生時代から、ボクシングプロテストに合格した現在まで

横浜流星
横浜流星 - 写真:TOWA

 映画『春に散る』(8月25日公開)で、世界チャンピオンを目指すボクサーを演じている横浜流星。「格闘家へのリスペクトがある。生半可な気持ちで、この役を引き受けることはできなかった」と並々ならぬ覚悟で本作に挑んだ横浜だが、先日はボクシングのプロテストに合格したことが発表されるなど、彼の格闘技への本気度には驚くばかり。そんな横浜が、俳優業に密接に結びついている格闘技への想いを明かした。

【画像】衝撃の美しさ!横浜流星撮りおろし<8枚>

格闘家へのリスペクトから生まれた真摯な役づくり

映画『春に散る』より。肉体改造を経てボクサー・翔吾を演じた横浜流星 (C)2023 映画『春に散る』製作委員会

 沢木耕太郎の小説を、瀬々敬久監督が佐藤浩市と横浜をダブル主演に迎えて映画化した本作。アメリカから40年ぶりに帰国した元ボクサーの広岡仁一(佐藤)と、広岡と同じように不公平な判定負けで心が折れたボクサーの黒木翔吾(横浜)。ある夜、偶然広岡と出会った翔吾が彼の助けを借りて世界チャンピオンを目指すさまを描く。

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 2011年第7回国際少年空手道選手権大会(13・14歳男子55キロの部)で世界一となり、2020年公開の映画『きみの瞳が問いかけている』では10キロ増量の肉体改造を経てキックボクサーを演じた横浜。優れた身体能力を誇る彼だが、『春に散る』でオファーが舞い込んだ当初は「『格闘家を演じていいのか』という迷いもあった」と吐露する。

 「僕も小さい頃から空手をやってきて、俳優の道に進むのか、格闘家の道に進むのか悩んだ時期もあるので、格闘家をリスペクトしています。周りにも格闘家がいて、彼らが命を削りながら、生と死の境目で孤独に戦っている姿を目の当たりにしているからこそ、生半可な気持ちで引き受けるわけにはいかないと思いました。しかも翔吾は、世界タイトルに挑むボクサー。何十年も努力して目指すべき場所です。果たして、数か月の練習でそんな役を演じていいのだろうかと悩みました」と真摯に向き合いつつ、「監督からの『ぜひ』という熱い言葉に背中を押され、出演を決めました。また浩市さんとご一緒したいという気持ちも大きかった。学ぶことがたくさんあるはずだと思い、撮影に臨みました」と腹を括って、ボクサー役に身を投じた。

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師匠・広岡を演じる佐藤浩市

 劇中では、翔吾の修行シーンも鮮やかに活写されていくが、横浜自身も修行のような過程を経て、役づくりに没頭した。「撮影開始は昨年の12月でしたが、4月からボクシングの練習を始めて。体になじませるために、とにかくボクシング練習を重ねました。また僕の高校時代の同級生がジムでパーソナルトレーナーをやっているので、そこでフィジカルも鍛えました」と回想。体づくりのためには「撮影中は、ジャスミン米、鶏肉、ゆで卵やブロッコリーといったメニューで、毎日同じものしか食べないようにして。食事制限をすると胃もやられてくるので、そういうときには温かいお味噌汁が助けになりました」とストイックな日々を過ごした。

プロボクサーとしての試合にも意欲

窪田正孝演じるライバルの天才ボクサー・中西とのボクシングシーン

 本作の大きな見どころとなるのが、圧巻の試合シーンだ。ボクシング指導と監修を、『あゝ、荒野』や『ケイコ 目を澄ませて』などでもボクシング指導を担当してきた松浦慎一郎が務めているが、横浜は「今まで松浦さんが作ったことのないボクシングシーンにしてください」とお願いしたという。

 驚きと共に横浜の本気度を受け取った松浦は、とことんリアルを追求したボクシングシーンを作ることを決意。翔吾と天才ボクサー・中西利男(窪田正孝)がぶつかるクライマックスの試合シーンでは、松浦からの「約束事なしで挑戦してはどうだろう」という提案によって、横浜と窪田がボクシング映画では異例となるアドリブを交えた試合シーンに挑んでいる。

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 その提案を振り返った横浜は、「松浦さんも、僕と窪田くんならば『できる』と信用してくれて、アドリブを多くしてくださった。本当にありがたかったです」としみじみ。「僕も、窪田くんを信用しなければアドリブで臨むことはできません。お互いを信用して『向こうがそうくるならば、こっちはこうだ』という掛け合いができた。ものすごく楽しかったです」と充実感をにじませた横浜だが、試合シーンの撮影後には窪田と健闘を称え合ったのだとか。「自分にとって一つの夢であった格闘家になるということを、芝居を通して叶えられたような気がしました。自分が見たかった景色を、翔吾と共に見ることができた」というシーンは、本物の熱気に満ちあふれている。

 瞳を輝かせて撮影を述懐する横浜の姿からも、「格闘技が大好き」という気持ちがひしひしと伝わってくる。本作の宣伝活動が本格始動する段階でボクシングのプロテストを受験し、C級ライセンスに合格したことも話題となった。プロとして試合に出場する可能性もあるのか? と聞いてみると、横浜は「俳優として生きていくと決めたので、タイミングや状況が許せば……」と前置きしつつ、「ここまで来たならば、やりたい気持ちはあります」と回答。「トレーニングしてきたことやその人の生きざまもすべて出しつつ、数分間で勝ち負けが決まってしまうのが格闘技の世界。一瞬に命をかける、その儚さが魅力」と熱弁する。

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「烈車戦隊トッキュウジャー」から大河ドラマ主演への道のり

写真:TOWA

 横浜が極真空手を始めたのは、小学校1年生のこと。役者業においても、「空手で学んだことが活きている」と断言する。「格闘家と同じで、役者も孤独を感じる仕事です。もともとの僕は心が弱い方だと思うんですが、これでもかと鍛えられながら『自分でやりたいと言ったことならば、ここでやめてはカッコ悪い』と続けていくことで、精神面も強くなったように感じています。礼儀や謙虚に生きることの大切さを教えてくれたのも空手だった」

 2025年にはNHK大河ドラマ「べらぼう~重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」で大河ドラマ初出演にして初主演を務めることも決定した。世代を代表する俳優へと成長したが、飛躍する上でのカギとなったのはどのようなことだったのか。

 横浜は「継続することと、向上心を持つこと。そして自分で考えること」とキッパリ。「僕は1年間、『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014)に参加して、この世界で生きていくことを決めたんですが、そこから約1年ほどは仕事がなくて」と打ち明けながら、「『自分が決めたことは間違っていたんじゃないか』と思ったり、オーディションで落ちたときには『誰が受かったんだろう』と気にしてしまうこともありました。でも早い段階で『人と比べて落ち込んでいてはいけない。自分のやるべきことを見失っていないか?』と気づくことができた。しっかりと地に足をつけて、自分を見つめ直す時間を持ったことで、腐らずに『向上心を持とう』と思うことができました」とここでも、継続する力を磨いた空手の経験を活かすことができた様子だ。

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 「大河ドラマの出演など、どんどん背負うものも大きくなりますし、責任感も強くなります」と怖さを感じることもありながら、「それ以上に楽しみの方が大きい」と晴れやかな笑顔を見せた横浜。「仲間と共に高め合いながら、いい作品を作るためにはどうすればいいのかと考える時間も大好きです。魂を込めて作ったものを誰かに届けられるなんて最高ですよね。それによってもしかしたら誰かの人生を変えられるかもしれないと思うと、本当に幸せなことだなとワクワクしています」と語る。愚直さの中にあふれる情熱を秘めているからこそ、横浜流星はキラリと輝いている。(取材・文:成田おり枝)

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