横浜流星、元東洋太平洋チャンピオンの質問に感激…知られざる試練を吐露
俳優の横浜流星が5日、ユナイテッド・シネマ豊洲で行われた映画『春に散る』(公開中)大ヒット御礼舞台あいさつに登壇し、ボクシング関係者から直接寄せられた質問に回答。「試合中はどんなに憎み合っても、最終的には相手がいないと成り立たないものだし。リスペクトが絶対にある。そうしてお互いに称え合う、そういう一瞬が本当に好きで」と格闘技への愛を熱っぽく語った(※一部映画の詳細触れています)。
沢木耕太郎の小説を『糸』『ラーゲリより愛を込めて』などの瀬々敬久監督が映画化した本作は、理不尽な判定での敗北により挫折したボクサー・黒木翔吾(横浜)が、世界の頂点を目指しながらも挫折した元ボクサー・広岡仁一(佐藤)の助けを得て、世界チャンピオンを目指す姿が描かれる。この日はダブル主演を務めた佐藤浩市、横浜流星のほか、仁一のボクシング仲間役の片岡鶴太郎と、翔吾と対戦する東洋太平洋チャンピオン役の坂東龍汰、そして本作のボクシング監修と俳優への指導を担当し、翔吾のトレーナー役としても出演した松浦慎一郎が登壇。さらに司会を、WOWOWのボクシング中継番組などに出演する赤平大アナウンサーが担当するなど、ディープなボクシング話が繰り広げられた。
会場にはリピーターも多く来場し、公開12日目で13回観たという熱烈なファンも。「映画はどうでしたか?」と場内に呼びかけた横浜に、大きな拍手が巻き起こった。
本作は、本物のボクシングを観ているかのような迫力のファイトシーンが話題。ボクシング監修と指導を行った松浦は、「ハリウッド映画だと、ひとつのシーンに1か月くらいかけて。演者もダブルといって、背格好が同じ人を起用して撮ったりするんですけど、この作品ではスケジュールや予算の都合でそうはいかなかった。だから演者自身が全部やらなくてはいけないんですが、この生々しさだったり、演者が出す熱量とかはそういうこと(他人がやること)では出せないと思う。坂東くんも流星くんも、窪田(正孝)くんも、本当に身を削って練習して、もらうシーンも当てるシーンも全部自分でやっている」とキャスト陣を労った。
この日はボクシングの実況を担当している赤平アナウンサーが、“ボクシングの聖地”である後楽園ホールに出向き、本作を鑑賞したというボクシング関係者、選手、トレーナー、及びボクシングメディアの人たちにリサーチ。そこから出た感想、質問を直接出演者にぶつけるという流れで行われることとなった。
横浜は本作の撮影後に、日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストに合格。C級ライセンスを取得したことが話題となった。そこで元東洋太平洋チャンピオンから「足の運び、ステップ。特にディフェンスの際のサイドステップ、そしてコンビネーションを撃つ際の足の動き。これは素人ではできないです。このあたりの動きはどうやって練習したんですか?」という質問が。
それに対して「東洋太平洋チャンピオンに少しは認めてもらえたようでうれしいですね」としみじみ語る横浜だが、知られざる苦労も。横浜は2011年第7回国際少年空手道選手権大会(13・14歳男子55キロの部)で世界一になるなど空手の達人として知られており、「僕はずっと空手ベースなので。格闘技を知らない人にとっては、ほとんど一緒なんじゃないかと思われるかもしれませんが、逆に空手が足を引っ張ることしかなかったんです。スタンスもそうだし、足の運びもそう。それを埋めるにはボクシングの練習を重ねるしかない。だから松浦さんには本当に親身になって指導してもらって。そこから修正していきました」と空手からボクシングへの切り替えに苦戦。またボクシングのスタンス(構え方)については、「ボクシングの方が広いですね。空手の方が狭いかも。あまりフットワークは使わないですからね。素手だし、パンチも蹴りも使うので。極真は我慢比べみたいなものなので。でもボクシングはフットワーク、足が大事だったし、最初の練習の時は足が筋肉痛になって。そんなに下半身を使うんだと驚いたところですね」とボクシングの特性を振り返った。
そのコメントに「だいたい下半身の動きを見れば(強いのかは)分かりますからね。上半身だけでごまかしているのかとか。今回は引いても大丈夫なようにしてますからね」と明かした松浦。赤平アナウンサーも「そうなんです! 動きが本当にプロだったので、これをどうやって指導したのかと思っていました!」と興奮気味にコメントするも、女性客の多い会場の雰囲気にふと我に返り「こんな話ですみません。今日は我慢してください」と呼びかけて会場を沸かせた。
劇中では、試合後に対戦相手の健闘を称えるため、相手の陣地に向かうシーンが描かれている。関係者からそのシーンに言及されると、横浜は「僕も格闘技が好きなので。目指していたし、好きだし、そういうところが好きなんですよ。試合中はどんなに憎み合っても、最終的には相手がいないと成り立たないものだし。リスペクトが絶対にある。そうしてお互いに称え合う、そういう一瞬が本当に好きで。だから(坂東演じる)大塚とも因縁がありましたし、大塚がいなかったら翔吾は成長しなかった。それは大塚もそうだと思うし、そこの感謝があったから。そこは素直に出ました」と振り返った。(取材・文:壬生智裕)