松岡茉優＆窪田正孝『愛にイナズマ』それぞれの役作り「ピースがハマった」「魂が赤くなっていく」瞬間とは

　『舟を編む』などの石井裕也監督の最新作『愛にイナズマ』（10月27日公開）でダブル主演を務めた松岡茉優と窪田正孝。ともに数多くの作品に出演し、役者として確固たる地位を築いている2人が今作における役作りについて語った。

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　『愛にイナズマ』は石井監督によるオリジナル脚本の作品。念願の映画監督デビューを目前にしながら大切な夢を奪われてしまった花子を松岡、そんな花子と運命的な出会いを果たす空気を読めない男・正夫を窪田が演じている。“社会への反撃”のために花子が力を借りる家族役で池松壮亮、若葉竜也、佐藤浩市も参加している。

　松岡は「本の中に『これを届けたい』という叫びのようなものを感じました。蔑ろにされ、夢を盗まれた花子の叫びをお伝えしたいと思いました」とオファー時を回顧する。石井作品は今回が初参加で「石井組常連の先輩方の中でお芝居することは不安もありましたが、その緊張感も心地よかったです」と語る撮影の中で丁寧に役と向き合い、とあるシーンでは脚本で描かれていない花子を自身で発見する瞬間もあった。

　「家族の喧嘩シーンで花子はずっと怒っているんですが、途中で台本1ページ分くらい、お兄ちゃんたちとお父さんだけで会話が進む部分があります。この間、花子は何をしているんだろうと思いながら撮影に臨んだんですが、現場に行って隅っこにあった座布団を見てここだなと。そこからの景色を花子は子どもの時から見ていたんだと思いました。お芝居には正解がないことがほとんどだと思うのですが、その瞬間、その景色はピースがハマったと感じました」

　窪田が演じるもう一人の主人公・正夫は独特の空気をまとい、つかみどころのないキャラクターだ。「社会に染まっていなくて適合もしていない。正夫には正夫なりの正義がありつつ、ピュアな心を持っていて空気を読めなかったりもする。彼は何にも染まっていないんです」と窪田は正夫について語る。染まっていないキャラクターにどう色をつけていくか、窪田は花子と向き合う方法を選んだ。

　「正夫は常にゼロなんです。それが花子と一緒にいることによって、どんどんと色がついていく。どんどん魂が赤くなっていくんです。そんなイメージを持っていました。だから松岡さんに正夫を作ってもらったなという印象です」

　正夫は「花子の家族」の枠には入っていない役どころ。一歩外から家族を見ていた窪田は「（役柄的に）裏方の気持ちになった部分もあったんです。（家族の喧嘩シーンは）家族が喧嘩しているようにももちろん見えますが、俳優としての実力者たちが目の前でコラボしている、『松岡茉優が目の前でブチギレてる！　浩市さんに向かって池松くんがお前って言ってる！』と思ってワクワクしてしまうような瞬間もあった。最高でした」と笑顔を見せた。そして「ネタバレになるので詳しくは言えませんが」と前置きしつつ、終盤の船上での兄弟のシーンを「宝物」と表現していた。（取材・文：海江田宗）