大沢たかお『沈黙の艦隊』潜水艦撮影で貫いた不動 それでも海江田は「クジラのように泳いでいる」
日米が極秘裏に作った世界最新鋭の原子力潜水艦「シーバット」で逃亡し、独立国「やまと」建国を宣言するという、衝撃的な内容で世の中に大きな反響を巻き起こした、かわぐちかいじ作の漫画「沈黙の艦隊」。連載開始から35年の時を経て実写映画化された本作で、「やまと」を率いる艦長・海江田四郎に扮するのは、プロデューサーも兼ねた大沢たかおだ。ミステリアスな主人公・海江田を演じるにあたって考えたこと、感じたことを、大沢が熱く語った。
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もともと、潜水艦内は動きが極端に少ない。魚雷やミサイルなど派手なものは艦の外を飛び交い、人物は狭く暗い発令所でひたすら命令を下し、それを遂行していくだけだ。「やまと」艦長の海江田も、発令所の中央に立ち続け、ほぼ動きがない。大沢も「想像以上に動かなかった」と苦笑する。
セットにおける「やまと」の撮影は1か月ほどだったというが、「たぶん、1か月で7歩くらいしか歩いてないです(笑)」と大沢。「ぐるっと回って戻ってくるだけ。テストを含めても14歩です。本能的につい動きたくなるじゃないですか。そうすると吉野(耕平)監督に『動かないでください』って止められました」と明かす。
ただし、“海江田”として苦ではなかった。「彼の体は潜水艦のボディなんです。手も目も艦の外にあるイメージ。クジラのように泳いでいる気持ちで、1か月を過ごしました。たとえば艦が上昇するのも、魚が上に向かって泳ぐ感じだし、(面舵や取り舵で)横に曲がるときも同じ。そんなふうに考えると面白いと思っていました」と撮影時の心境を語る。
さらに、「実際そのシーンでは、潜水艦同士、あるいは洋上の艦艇などと、ものすごいバトルをしています。ミサイルを撃ったり、その場から逃げたり、『やまと』はすごく激しいことをしていた。海江田はそれをぜんぶ計算していたわけで、いま何メートルのところにいるとか、ここから深くなるから潜ってとか、後ろから敵が来るからこっちに回って横につけちゃおうとか、頭の中はとても忙しかった。艦内は静寂に包まれてますし、海江田はただ立ってるだけなんですけど」と笑う。
クジラのイメージは、原作から得たという。「劇中、みんなが海江田をそう例えてるんですよ。彼が自分の体のように潜水艦を自由に操っていて、クジラみたいに泳いでいる。そんなふうに感じたら、狭いところに居続ける乗組員たちもその一部になる。自由に海を泳いだ気持ちになれれば、僕の『やまと』はものすごく強いチームになるんじゃないかと思ったんです」と語る。
「やまと」乗組員は、副長・山中役の中村蒼、ソナーマン・溝口役の前原滉など、活躍中の俳優陣や、オーディションで選ばれた若手などさまざまな顔ぶれがそろった。「みんなチームで、みんなプロです。同じセットに入っている以上、同じ俳優部で、映画を作る一員であることには上下関係はない。いつもみんなと呼吸を合わせて本番ができていたと思うので、彼らに対しては本当に感謝しています」と笑みを浮かべる。「座長とか主役とか、僕はまったく興味がない。ただ、最後に責任を取るのが僕であればいいんです」と矜恃を見せていた。
「実際の潜水艦で撮らせていただいた映像は多いですし、僕も映画を観てはじめて、『潜水艦ってこうなんだ!』とわかったこともありました。潜水艦アクションもめちゃめちゃ激しいので、ドキドキや恐怖や迫力を味わいながら観ていただけると思います。いろいろな議論を呼ぶような問題作になっていますから、ぜひ映画館で体感してほしいです」とアピールした。(文・早川あゆみ)
映画『沈黙の艦隊』は全国東宝系で公開中