「大奥」福士蒼汰、一人二役の理由 制作統括・藤並英樹が明かす
NHKドラマ「大奥」シーズン2(NHK総合・毎週火曜午後10時~10時45分ほか)の後半パート「幕末編」で、13代将軍・家定の正室、天璋院(胤篤)を演じる福士蒼汰。1月期に放送されたシーズン1では“お万の方”こと万里小路有功役として出演しており、同じ作品で別人物を演じ分けるという異例の一人二役となる。そのキャスティングの理由を、本シリーズの制作統括を務める藤並英樹チーフプロデューサー(以下CP)が語った。
男女が逆転した江戸パラレルワールドを描いたよしながふみの漫画「大奥」を原作にした本シリーズ。8代将軍・徳川吉宗(冨永愛)の遺志を引き継いだ若き医師たちが、理不尽な権力・悪に抗いながら男性だけが罹患する疫病「赤面疱瘡」撲滅に奔走する「医療編」に続く「幕末編」では、女将軍をはじめとした幕府の人々が江戸城無血開城のために奔走する幕末・大政奉還の物語が展開する。なお、原作の幕末パートが実写化されるのはこれが初となる。
シーズン1では、春日局(斉藤由貴)の策略によって還俗させられ、3代将軍・家光(堀田真由)の側室・お万の方、大奥総取締となる有功を好演した福士。シーズン2で演じる天璋院は「お万の方を彷彿とさせる美貌の持ち主」という設定となっている。近年では放送中の大河ドラマ「どうする家康」で北川景子が織田信長の妹・お市とその娘・茶々を演じて話題を呼んだが、血のつながりのない別人物を同じ俳優が演じるのは異例だ。藤並CPによると天璋院のキャスティングは、シーズン1の制作中に始まったといい、経緯を以下のように語る。
「シーズン1を作りながら2の準備中に、脚本の森下佳子さんと台本を作っていく中で、胤篤は誰がいいかという話をした時に、シーズン1で福士さんが演じた有功と、堀田真由さん演じる家光っていうのが「大奥」の出発点になっていて、福士さんが有功というキャラクターを的確に演じてくださったと。コミックでも胤篤が有功の再来という表現もありますので、シリーズの締めくくりを迎えるにあたって、改めて福士さんを胤篤という役柄でお迎えしたいと。シーズン1の有功を経てオファーしたという形になります」
福士本人の反応については「シーズン1を撮影現場も含めてとても気に入っていただいて、クランクアップの時にも“是非また戻ってきたいです”っていう風におっしゃっていました。ですから胤篤役としてオファーした時にはすごく喜んでいただけましたし、僕らスタッフも嬉しかったです」と振り返る。
胤篤役としてカムバックした福士の演技を観た藤並CPは、福士自身がもつ雰囲気が有功と胤篤に通ずるものがあると指摘する。
「もちろん胤篤と有功の演じ分けというのも意識していただいて、堅実に演じていただけているなと。一方で福士さんの持つノーブルな感じや聡明さは、有功と胤篤に通じるものであると思いますので、そこは連続性を持って演じていただいているように思います。胤篤も非常にチャーミングな男性だと思いますし、福士さんがうまく演じてくださっています」
福士は出演発表時に胤篤役について「今回の役どころは、非常に繊細で難しいものだと思っています。薩摩の人間でありながら、家定・徳川のために無垢に考え行動する。聡明さと人情を併せ持つ彼を、深く演じていきたいです。家定との心の機微を丁寧に演じ、瀧山と二人三脚で支えていけるよう努めてまいります。“お万の方の再来”とも言われた彼の人生をいかに歩めるか、今からとても楽しみです」と意気込みを語っており、同じ事務所の古川雄大演じる瀧山とのコンビネーションにも期待が高まる。(編集部・石井百合子)