北野武監督、6年ぶり新作『首』で羽柴秀吉を演じた理由
北野武監督が15日、東京・日本外国特派員協会で行われた記者会見に出席し、6年ぶりとなる新作映画『首』(11月23日全国公開)で羽柴秀吉を演じた理由を語った。
北野監督が自身の小説を原作に、監督・脚本・編集・出演を務めた本作。本能寺の変にうずまく、織田信長(加瀬亮)と家臣たち、さらには戦国武将たちの思惑を新たな視点で描いた時代劇だ。
外国人記者から映画について問われた北野監督は、「テーマは織田信長、明智光秀などが関わった本能寺を中心にした物語」と述べると、「大河ドラマなどでは、格好いい役者を使って、実にきれいな歴史的解釈の物語を展開しますが、そこで触れてない信長と小姓の森蘭丸など、男同士の命を懸けた関係性を描いています」とアピールする。
さらに、「信長は子供を22人も作っているなか、蘭丸との関係性など、ドロドロした男同士の関係、裏切りなど、大河ドラマでは描けないものを描いている」と断言すると、「30年前に書いた台本。試写会でも好評のようで、喜んでいます」と笑顔を見せた。
羽柴秀吉役で出演している北野監督は「本来、出演する予定がなかった」と4月15日に行われた会見で述べていたが、「本当は監督1本でやりたかったんです」と胸の内を明かすと「でも制作会社から『興行的にたけしさんが出ないと海外などで宣伝しづらい』と言われ、じゃあ出るということになった」と理由を説明する。
続けて「自分のなかで、どの役が一番やりやすいかとなったとき、秀吉かなと思った。秀吉は、ストーリーのなかで悪役だったので、監督と同時にやるとき、少し離れて人との芝居を見られる」と監督ありきで自身が出演する上で、秀吉役が最適だったことを明かした。
劇中、織田信長にふんした加瀬の演技も話題になっている。北野監督は「加瀬君はとても純朴で優しい、気のいい青年のイメージですが、『アウトレイジ』シリーズでは、凶悪なインテリヤクザを演じてもらいました。今回、冒険してもらって、狂気の信長をお願いしました」と語ると、「とにかく岐阜弁を体にしみこませてもらって、あとは100メートル走のように突っ走ってくれと言いました。2回は撮らない。ほぼワンテイクで終わらすというプレッシャーをかけて『失敗してもいいから続けて』とアスリートの芝居をしてもらいました」と演出意図を明かしていた。(磯部正和)