北野武監督の新作『首』タイトルの意味は?
ヒット作『アウトレイジ』シリーズに続く北野武監督の6年ぶりの新作『首』が間もなく公開される。大河ドラマや映画などで語りつくされてきた「本能寺の変」を題材にしているが、タイトルにもなった首をキーワードにした理由を北野監督がオフィシャル資料内で語っている。
明智光秀が織田信長に謀反を起こした「本能寺の変」を、北野監督ならではのバイオレンスとユーモアを交えて描く本作には豪華キャストが集結。北野武自らが「本能寺の変」を策略する羽柴秀吉を飄々と演じ、織田信長に複雑な感情を抱く明智光秀役に西島秀俊、狂乱の天下人・織田信長役に加瀬亮、秀吉を支える軍師・黒田官兵衛と弟の羽柴秀長に浅野忠信と大森南朋。中村獅童が秀吉に憧れる百姓・難波茂助役で北野組に初参戦するほか、木村祐一、遠藤憲一、桐谷健太、小林薫、岸部一徳らが歴史上の重要人物を演じる。
信長、光秀、家康、秀吉と、日本人なら誰もが知る人物の関係性は非常にわかりやすく面白い、と語る北野監督は「本能寺の変」について「苛めに耐えきれなくなった光秀が信長を殺したという内容のものが多いけど、そうじゃないんじゃないかと思っていて。信長は狂気で家臣や他の武将を押さえつけていただけだから、宙に浮いていたし、誰もが殺すチャンスを窺っていたんじゃないか?」と持論を展開。映画『首』では「そこの、あまり描かれていないところをやらなきゃいけないっていう想いは最初からあった」とコメントしている。
プロデューサーの福島聡司は、撮影前から北野監督から考えを聞いていたと言い、「『これまでテレビや映画の王道の時代劇が描いてきたものとは違って、実際は人間関係がもっとドロドロしていたんじゃないのか? 自分の視点で裏から見た戦国時代を描きたいんだ』ということはずっと言われていました。誰が死んで、誰が生き残るのか? 台本の稿を重ね、決定稿になるまでそれが何度も入れ替わったのが印象的でした」と振り返る。
本作にはヒロイックな人物も登場しなければ美談も描かれず、信長の首を巡る戦いの中で、ひたすら己の野望を果たそうとする者たちの策略、裏切りが描かれていく。北野監督は“首”をキーワードに据えた物語について「武士に生まれたのか、百姓として生まれたのか。その人物の生まれや意識によって死との向き合い方は全然違う。“首”がなければ死んだことにならないとする信長や光秀の世界と、“首”なんかどうでもいいと思っている百姓上がりの秀吉の世界。そういった違った視点や意識、物の考え方が見えてくると面白いかなと思っていたね」と語っている。(編集部・石井百合子)