『SPY×FAMILY』早見沙織、ヨルが「戦闘アドリブ連発」 豪華客船編から映画版までの変化振り返る
遠藤達哉のコミックが原作のテレビアニメ『SPY×FAMILY』で、凄腕の殺し屋〈いばら姫〉にして、仮初めのファミリー・フォージャー家の“母”ヨル・フォージャーの声を務める声優、歌手の早見沙織。テレビアニメのSeason 2が好評のうち先ごろ終了し、現在、初の映画化作品となる『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』が上映中だ。主演声優を務めた『駒田蒸留所へようこそ』をはじめ、映画だけでも今年8本のアニメーション映画が公開されるなど多忙を極め、声優として第一線を走り続ける早見が、あらためて『SPY×FAMILY』の反響、演じるキャラクターの魅力を振り返ると共に、映画版の見どころを語った。
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2019年3月に「少年ジャンプ+」で連載スタートした同名漫画に基づくテレビアニメ『SPY×FAMILY』は、西国(ルビ:ウェスタリス)情報局〈WISE〉に所属する敏腕諜報員〈黄昏〉ことロイド・フォージャー(声:江口拓也)が、他人の心が読める超能力少女アーニャ(声:種崎敦美※「崎」は「たつさき」が正式)、殺し屋のヨル、予知能力のある犬のボンド(声:松田健一郎)と仮初めの家族となり、幾多のトラブルを解決していくアクションコメディー。劇場版では、初めて家族旅行に出かけたフォージャー家が世界を揺るがす事件に巻き込まれていく。
「息の根止めさせていただいてもよろしいでしょうか?」など名台詞も多数のヨルは、幼少期からスキルを叩き込まれた一流の殺し屋。普段は市役所で働き、フォージャー家の“母”としては料理が絶望的に下手。さらに、酒癖が悪く酔うと人格が豹変するなど、思わず笑ってしまうほどのギャップも人気の要因の一つ。不器用ながらフォージャー家の面々はもちろん、たった一人の肉親である弟のユーリ(声:小野賢章)を命がけで守り抜こうとする愛情深い女性でもある。
「ONE PIECE」のヤマト役や 「鬼滅の刃」の胡蝶しのぶ役など数々のビッグタイトルでファンを魅了してきた早見だが、ヨルの人気について「いろいろな現場のスタッフの方に“SPY×FAMILY見てます”と伝えていただくことが多く、また、知り合いの娘さんや息子さんが見ていらっしゃると教えていただくこともあって、本当に多くの方に見ていただいているのだなと驚いています。小さなお子さんが描いたヨルさんのイラストを貰ったこともあり、とてもほっこりしました」と実感している。
あらためてヨルの魅力を問うと「ヨルさんは市役所職員の顔と、殺し屋の時の顔が全く違って、そのどちらも魅力的だと思います。また、お料理や裁縫など一生懸命だけれど、ものすごく空回っているところも可愛らしくて大好きです」と話し、「本人の中で無意識に切り替わる部分もあり、戦闘中などにくるくる入れ替わったりもするので、私もそのテンポ感を大事にしながら精一杯アフレコしています」とアフレコのアプローチを明かす。
さまざまな顔を持つヨルだが、演じていて最も楽しいのは「たくさんありますが、真っ先に浮かぶのはフォージャー家のシーンです」と早見。「皆でいろいろな場所に行ったり、お家の中でのドタバタを共に過ごしたり…幸せな時間だなと思います」と語ると、「ユーリが登場するシーンは、唐突にものすごくインパクトを残していくので、思わず笑ってしまいます」と秘密警察の一員で究極のシスコンである弟ユーリにも触れる。
そんなヨルを語るうえで欠かせないエピソードとなったのが、テレビアニメSeason 2の「MISSION32:誰がための任務」。クルーズ船でとある母子(オルカと幼い息子)の護衛任務についていたヨルが絶体絶命のピンチに陥り、いったい自分は何のために戦っているのかと自問自答する。ヨルが原点に立ち返る名エピソードとして反響を呼んだが、早見自身にとっても重要なエピソードとなった。
「ヨルさんに関わらせていただく中でもとても重要なお話の一つだったと思っています。それまでは、ヨルさんの胸の内がここまで見えることはなかったと思うのですが、ヨルさんにとってのお仕事や大切な存在について思い巡らせる姿を見て、私も深く気持ちが入り込んでしまいました。32話で思考に耽り、そこから33話(「船上の交響曲(シンフォニー)/姉のハーブティー」)、34話(「未来を繋ぐ手」)と立ち上がっていく姿が、本当に格好良かったです。32話で、敵に襲われて意識が朦朧とする中でロイドさんのクリーニングやアーニャさんの図書館の本について思い出すシーンがあるのですが、真っ先に浮かぶのがそういった日常のワンシーンなんだなと思って、胸が熱くなりました。個人的に印象に残っていることとしては、豪華客船編が終わった回のアフレコで、オルカ役の遠藤綾さんが帰り際に、“守ってくれてありがとう”と伝えてくださったことです。綾さんのちょっぴりお茶目な言い方が余計にグッときてしまいました」
劇中でヨルが危機を乗り越えるたびにフォージャー家との絆が深まるのと同時に、ロイド役の江口、アーニャ役の種崎、ボンド役の松田ら声優陣たちとの信頼関係も強固になっていった。
「本当に、我が家族は最強チームだと思います。皆さん素敵で誇らしいです。豪華客船編での私はフォージャー家と別行動で、任務のメンバーと一緒に収録させていただくことがほとんどでした。そちらのチームもとても和気藹々として絆が生まれました。ただ、その後にフォージャー家と再会した時は、何とも言えない安心感があったのを覚えています」
オリジナルストーリーが展開する映画版では、ヨルが謎の女性と接触するロイドを目撃して暗雲が漂うなか、フォージャー家そろっての旅行に赴く。早見は「ヨルさんのささやかな勘違いからひとつの物語が生まれるのですが……その過程で出てくる、ヨルさんとロイドさんの会話が素敵でした」と自身の琴線に触れたシーンを挙げ、新キャラクターにも言及。アーニャの前に立ちはだかる敵役コンビ、ドミトリ(声:中村倫也)とルカ(声:賀来賢人)、その二人を率いる軍情報部の大佐・スナイデル(声:銀河万丈)、軍情報部の秘密兵器タイプF(声:武内駿輔)らについて「とにかく新キャラクターが濃い方ばかりで、さすがSPY×FAMILY…と思いました」と圧倒された様子だ。
アフレコでは映画版ならではのアプローチがあったと言い、「ヨルさんの戦闘シーン、迫力全開の素晴らしい映像になっております。アフレコの時に、その時の現状のアクション映像に合わせてだけでなく、そこから画作りの段階で発展することも加味して、“ふっ、はっ、やーっ”などのいわゆる戦闘アドリブを単体でたくさん収録しました。普段ヨルさんは戦闘シーンではそこまでアドリブを入れない人なので(強いので……)、そのあたりもぜひ注目いただければと思います」と舞台裏を披露。そして、あらためてフォージャー家の強みを「とんでもないことが沢山起こっても、最終的には笑っていられるところ! そして、劇場版まで積み重ねてきて、お互いがお互いを信頼し合っている、そんな絆が着実に築かれてきていると思います」とアピールした。(編集部・石井百合子)