『デデデデ』原作者・浅野いにお「漫画原作者と映像化の関係性は難しい」アニメ化への困難を告白
26日、アニメーション映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』(3月22日全国公開)の完成披露試写会が都内で開催され、本作の声優と主題歌を担当する幾田りらとあの、原作者の浅野いにおが出席。浅野は、あのと幾田のキャスティング理由や、原作漫画をアニメ化することへの難しさを語った。
「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載された原作は、東京上空に突如飛来した巨大な宇宙船(=母艦)が日常へと溶け込んだ世界で、青春を謳歌する少女たちの物語。幾田は国民的漫画を愛読し、担任教師に思いを寄せる女子高生・小山門出役、あのは門出と小学校以来の親友で、戦争ゲームオタクの女子高生“おんたん”こと中川凰蘭役を務める。
アニメ映画化の話が来たのは、5~6年以上前だったと話す浅野は、「僕は20年以上漫画を描いていますが、ひねくれているため原作はニッチなものが多い。そのなかでこの作品は比較的まっすぐな内容だったので、アニメ化の話を断ったら二度と話はないと思った」と自身初となる、漫画のアニメ化を許諾した当時を振り返る。
そんななか、主人公である門出&おんたんのキャスティングの話が進んだのは、制作半ば、2~3年が経ってからだったという。浅野は、声優のオーディションにも全て参加したと明かすと、「あのちゃんがテストをした時、現場の雰囲気が一変した」と証言。そこで、あのがおんたん役に決まったというと「門出の役は比較的難しくないと思っていたのですが、あのちゃんの横に並んでバランスがいい人ってなかなかいない」と暗礁に乗り上げたという。
プロデューサーから幾田の名前があがり、イメージすると二人のバランスがバッチリだったという浅野。そこで「原作者がどうしても幾田さんにお願いしたいと言っています」と伝え、幾田のキャスティングが実現した。
あのも幾田も今を時めく人気アーティストだが、当時キャスティングが決まった時は「その後こんなに有名になるなんて、思ってもいなかった。紅白歌合戦にも出ていますしね」と奇跡的なキャスティングに驚きを隠せなかったという。
実際、主演として声を吹き込んだあのと幾田は「お互い音楽をやっているから間合いの相性が良くてやりやすかった」と語る。さらに、あのは「とても気持ちが良かった」と息の合った収録だったことを明かしていた。
紆余曲折ありながら、ようやく完成披露を迎えた本作。浅野は「最後にちょっと長くなりますが……」と前置きすると、「漫画原作者と映像化の関係性は難しい。なるべくノータッチであることが望ましい。でもふたを開けると、コンセプトからキャスト会議まですべて関わってきました。最終的には前章だけでも100~200カットリテイクをお願いし、僕が直接レタッチした部分もありました」と漫画原作をアニメ化する際の困難を語る。
さらに浅野は「今日完成披露として観ていただきますが、本公開まで重要な部分がさし変わる可能性があります」と語ると、「制作チームの皆さんには本当に頑張って尽力していただき、僕もやれることはやりました。そして今もその作業は続いています」とクオリティーアップのために、飽くなき努力を続けていることを明かすと「本当に漫画原作の映像化にはいろいろなことがありますが、これはお祭りですからどうか皆さん楽しんでください」とメッセージを送った。(磯部正和)