沖縄国際映画祭が16年の歴史に幕を下ろす
今年で最後の開催となった「島ぜんぶでおーきな祭-第16回沖縄国際映画祭-」の最後のイベントが21日に行われ、本映画祭に参加してきたかりゆし58、初参加となる宮沢和史がライブを披露し、ガレッジセールが司会を務め、16年にわたる歴史に幕を下ろした。
沖縄国際映画祭は、2009年にスタートした沖縄全域を舞台に映画、音楽、笑いライブなど、主催である吉本興業ならではの多彩なプログラムが特徴の総合エンターテインメントの祭典。俳優、監督、ミュージシャン、お笑い芸人、地元の人たちが一緒に歩き、沿道のファンたちと自由に交流ができるレッドカーペットや、舞台あいさつがついた映画上映などが行われた。
映画祭では毎年、音楽ライブがフィナーレを飾っていたが、今年も大トリを飾ったのは、「Laugh&Peace LIVE supported by セブン-イレブン・沖縄」で、沖縄映画祭に参加してきたかりゆし58、琉球古典音楽演奏家の親川遥、宮沢和史、タイからはMindaRynが登場して満員となった会場を沸かせた。
MCを務めたかりゆし58のボーカル・前川真悟は「印象的なのは2011年3月に開催された沖縄国際映画祭。当時、東日本大震災で世界中がイベントは自粛する流れが蔓延していました。そのなかで、このイベントはこんなときだからこそ、一つでも笑顔をという思いで開催されました。最終回の今日も、想いが石川能登半島まで届いたらいいなと思います」と映画祭の思い出を振り返り、今なお厳しい日々を送る被災地にエールを送った。
前川が話した通り、2011年の沖縄国際映画祭はまさにエンターテインメントのあるべき姿を示したイベントだった。「Laugh&Peace」(笑いと平和)をコンセプトとした本映画祭の開催を目前にした11日、東日本大震災が起きると多くの犠牲者が出た悲劇は、日本だけでなく、世界中の人々に大きなショックを与え、震災の影響によりスポンサーが次々と降りていく中、主催の吉本興業は収益のすべてを被災地に寄付し、チャリティー中心に展開する映画イベントとして、映画祭の「開催」を決断。「Laugh & Peace」の前には、「YELL」(エール)という言葉が加えられた。そこには、大阪を拠点とする吉本興業は阪神・淡路大震災で多くの社員や芸人が被災し、日本中の人々に助けてもらったからこそ傍観するだけではなく、何かできることを探していきたい。そんな思いから出てきた言葉が「自分たちにもできることがきっとある」が映画祭の合言葉となり、芸人たちも一丸となって夜遅くまで声をからして募金活動を続けていたのが印象的だった。
開催のたび「よしもとの色モノイベント」「映画を侮辱している」など厳しい意見も多かったが、レッドカーペットイベントには「テレビでしか見ることができない芸人さんや俳優さんに会えるのがうれしい」と2時間も前から楽しみに待っている人、「映画祭のたびに観たことのない映画を観たり、映画の後のトークイベントを楽しみにしたりしています」と話す観客がたくさんいたこと。前出の前川もこの映画祭の魅力について、「孤島で育っている人たちに、テレビで見たことしかなかった人たちが目の前にいるという特別な世界を見せてくれた。自分の世界と夢の世界が地続きでつながっていることを実感させてくれた」と話した。また、今回は古典琉球とのコラボレーションで「島唄」を披露した宮沢も「時間をかけて県民のものになっていたことが僕の実感。このお祭りは沖縄の素顔を見ることができる貴重な時間だった」と映画祭への想いを語った。
当初は県民の誰も知らなかった沖縄国際映画祭を、毎年皆が楽しみにしている春の恒例行事となるまで育て上げたガレッジセール、宮川たま子がフィナーレのステージに上がると、会場からは大きな拍手が行われ、「ありがとう」の声援が送られる中、沖縄国際映画祭は閉幕した。(取材・文:森田真帆)