ノーマン・リーダス、「ウォーキング・デッド」を離れたくなかった 15年かけて築いたダリル&キャロルの特別な関係
海外ドラマ「ウォーキング・デッド」(2010~2022)のダリル・ディクソン役でお馴染みのノーマン・リーダスが、今月上旬に来日を果たした。3日から5日まで開催された「大阪コミコン2024」にも参加したノーマンがインタビューに応じ、シーズン2も控えるダリルの後日譚スピンオフ「ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン」の制作秘話や、完結から2年がたった本シリーズへの思いを明かした。(以下、ドラマのネタバレを一部含みます)(取材・文:倉本拓弥)
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「ウォーキング・デッド」の仲間たちに別れを告げた日
Q:「ウォーキング・デッド」ファイナルシーズン(2021~2022)から2年が経ちましたが、完結話の撮影は今も思い出しますか?
もちろん。クランクアップは夜のシーンで、大勢のキャストやクルーが参加していました。マイクを渡されて、みんなに別れのあいさつをして、本当に終わるんだと実感しました。短いあいさつでしたが、私も少し泣いていたかもしれません。撮影クルーにマイクを渡したら、彼は号泣していました。
私は一日のマインドセットをするために、撮影現場に毎日バイクで通っていました。最終日だけは、普段よりも時間がかかる道を選んで向かいました。夜間の撮影を終えて、自宅に帰る途中に日が昇ってきて、もうこの道を通ることはないのか、と感慨深くなったことを覚えています。メリッサ(・マクブライド/キャロル役)と私はスピンオフに出演することが決まっていましたが、ジョージアでみんなと一緒に撮影した日々は、人生において大きなものです。とても偉大なことを成し遂げることができて幸せでしたが、正直に言えば、「ウォーキング・デッド」から離れたくなかったです。
Q:ダリルの後日譚をフランスで描こうと思った理由は? 制作総指揮としてこだわったことを教えてください。
フランスは私が選んだと思われているのですが、私ではありません。スコット・M・ギンプル(制作総指揮)が、私とメリッサにフランスが舞台のスピンオフ企画を持ちかけてきました。どうやってフランスへ向かうのか、どんな光景なのか、どんな人と出会うのかすごく興味がありました。メリッサと二人でスピンオフのアイデアや楽曲のプレイリストまで考えていたんです。まるで旅番組のような感じでした。
また、アンジェラ・カン(制作総指揮)からはシーズン10の最終話を撮っている時に「どうやってこのドラマを終わらせたいか?」と聞かれたことがありました。私が彼女に伝えたのはこんな展開です。『コミュニティーが火の海になり、仲間たちが全員死ぬ中で、ダリルはキャロルに“バイクに乗れ!”と言います。仲間が死にゆくさまはスローモーションで映し出されるんです。二人は旅立ち、世界中に生存者がいないか見て回るんです』。そういった会話をしていくなかで、スピンオフの舞台がフランスだとわかり、とても魅力的な企画だと思いました。しかし、「ダリル・ディクソン」が決まった時点で、他のスピンオフも動いていたので、ダリルとキャロルが旅立ち、冒険をした後に、グループに帰るという流れになりました。
アンジェラと話した数週間後、ドラマが完結するという話を聞きました。これからどうするのか、みんなで一緒になって考えました。プロデューサーを交えて意見を出し合い、ヨーロッパを舞台にすれば、私たちのスピンオフが成立すると考えました。アメリカの旅番組みたいな作品を、他の国を舞台にしてやりたくはなかった。私たちらしい作品にしたいということは、いつも話していたことです。ジョージア州の熱と汗、森にいる人々はみんな番組の一部なのです。それをフランスに置き換えてみたかった。結果的に成功して、とても美しい作品になりました。
キャロル再登場をめぐるネットの憶測「全部ウソです」
Q:フランスといえば、スピンオフ「ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド」シーズン2のおまけシーンで、動きが素早いウォーカーが誕生した場所として描かれました。「ダリル・ディクソン」でも薬を投与されて凶暴化したウォーカーが登場しましたが、ウォーカーの進化について制作陣とはどんな話し合いをしましたか?
ウォーカーの新しい描き方は、ショーランナーのデヴィッド・ザベルが持ち寄ったものです。ウイルスが天候などによって変異するように、ウォーカーも地域によって異なります。フランスで何が起きたかに関しては、シーズン2でもう少し詳しく語られるでしょう。
フランスのウォーカーは、ダンサーが演じていてとても見応えがあります。アメリカのウォーカーとは違い、のけぞったり壁をよじ登ったり、パルクールだってできてしまう。ダンサーが不気味に表現してくれたので、初めてウォーカーを目の当たりにした時は驚きました。
Q:シーズン2から、キャロルがメインキャラクターとして加わります。シーズン1はメリッサ・マクブライドさんのスケジュールが合わず、出演が叶わなかったとお聞きしていますが、キャロルの登場はどのように決まったのでしょうか?
「ウォーキング・デッド」ファイナルシーズン最終話で、ダリルが旅立つ前のキャロルとの会話は、とても的を得ていました。舞台裏で起きていたことを表現するようなセリフでした。
メリッサは都合が合わず、シーズン1に参加することができませんでしたが、彼女が出演することは、私を含めた全員が分かっていました。「ダリル・ディクソン」の脚本作業に入る前から、彼女は企画に参加していました。彼女が戻ってくるかどうか、ネットで憶測が流れていますが、あれは全部ウソです。彼女は最初からこのドラマの一員です。
だからこそ、「ウォーキング・デッド」本編最終話の二人のシーンは感動的で、キャストやクルーに別れを告げましたが、同時にこれから向かう先の伏線でもありました。あの会話は、もう二度と会えないという意味ではありません。ですが、撮影現場では涙がこみ上げてきました。カメラに映っていない人も号泣していました。
Q:ダリルとキャロルは「ウォーキング・デッド」シーズン1から登場する数少ないキャラクターですが、二人の関係性はどのように捉えていますか?
ダリル&キャロルの関係性は特別です。二人の役者が長い時間をかけて構築してきた、とてもユニークなキャラクターです。私とあなた(インタビュアー)がカメラの前で仲良く話していますが、実際は今さっき会ったばかりです。私とメリッサはそうではなく、お互いの考えを理解できるほど、15年かけて関係性を積み上げてきました。二人一緒のシーンでは、お互いの意識を高めてくれます。あの距離感でメリッサと演技ができたことはとても光栄なことです。私たちはプロデューサーでもあるので、どうすればうまくいくか理解できていますし、試行錯誤しながら仕事ができる。とてもいい関係性です。
「ウォーキング・デッド」を日本で撮ってみたい
Q:「ウォーキング・デッド」ユニバースは、「ダリル・ディクソン」など複数の後日譚スピンオフで世界観が拡大しています。
今、まさに現在進行形で動いているところです。私たちが思い描いたとてもユニークなことが現実になっていて、「ウォーキング・デッド」の中でも異なるスピンオフが誕生しています。私たちの場合はフランスを舞台にしたインディペンデント映画風の作品で、その方向をシーズン2でも継続しています。AMC(ドラマの放送局)がこの作品を観た時、他とは違う作風で、とても満足してくれました。
Q:「ウォーキング・デッド」ファンは、主要キャラクターが再び集まる作品を望んでいます。
それに関しては、私もわかりません。スコットは全員をまた集めようとしていて、実現に向けて話をしていますが、私は何も知りません。私は、シェーンやメルルといった過去のキャラクターも登場する世界観が見てみたいです。おそらく、別ユニバースの話になると思いますが……。
Q:日本を舞台にしたスピンオフにも興味がありますか?
もちろん、「ウォーキング・デッド」を日本で撮ってみたいです。ですが、とてもキレイな日本の街を破壊してしまうことになります。パリの人たちも、「なんてこった。何を破壊したの?」と反応して、私たちはきちんと元通りにしていました。とても興味深い話ですが、日本を火の海にすることになります(笑)
Q:日本といえば、「DEATH STRANDING」でタッグを組んだ小島秀夫監督が「ダリル・ディクソン」のセットを訪問したそうですね。
ヒデオもパリまで来てくれました。ただ、彼が見学した時は私がただ車を運転するだけのシーンだったので、「ごめんよ、見学するには物足りなかったかもしれない」と謝りました(笑)
「ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン」シーズン1(全6話)はU-NEXTにて独占配信中
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