『あぶない刑事』タカ&ユージができるまでを舘ひろし&柴田恭兵が告白
舘ひろし演じるタカこと鷹山俊樹と、柴田恭兵演じるユージこと大下勇次といえば、刑事ドラマ「あぶない刑事(デカ)」での伝説的バティ。38年前、“ダンディー鷹山”と“セクシー大下”として多くのファンを獲得し、スタイリッシュでコミカル、かつ、スリリングでアクション満載な物語は社会現象を巻き起こした。連続ドラマの続編や劇場版などが数多く作られ、2人が刑事を退職した2016年の『さらば あぶない刑事』でその伝説は終わったかと思われたが、令和に再び『帰ってきた あぶない刑事』としてカムバックした。最強のバディにふんした舘と柴田が、タカ&ユージのキャラクターの膨らませ方や、お互いについての思いなどを熱く語った。
【インタビューカット集】舘ひろし&柴田恭兵がダンディ&セクシーすぎる
ニュージーランドで探偵をしていた2人は、警官ともめて横浜に帰還、探偵事務所を開いていた。依頼人第1号は、母・夏子を探してほしいという彩夏(土屋太鳳)。だが、夏子は2人にとっても旧知の女性で、それぞれが彩夏を「娘かも!?」と思う事態に。さらに捜索の中、チャイニーズマフィアや謎の美女、因縁のある元銀星会組長の息子などが入り乱れ、横浜に危機が迫る……。
38年間演じ続けているタカとユージについて、舘と柴田はどう思っているのだろうか。舘は「鷹山は、ある意味僕にとっては理想の男なんです。鷹山のようになりたいという思いは、ずっとどこかにあります」と語る。柴田は「ユージは、そんな舘さんのタカとの出会いからできたところもあります。最初から台本に性格が書かれているわけではなくて、舘さんが鷹山について、僕がユージについて『こんなヤツだろうな』と思ったところからはじまったわけで、お互いが役に対して誠実にリスペクトして、自分を律して何十年も守り通してこれた。素敵な出会いでした。肩ひじ張ってやるわけではなく、ふわっとしたニュアンスの中でやってこれたのは、とってもよかった」と役への思いを吐露した。
お互いについて聞くと、柴田はストレートだ。「舘さんはダンディーでしょ? もう、こんなにダンディーという言葉が似合う日本の俳優さんはいないってくらいで、それが年を追うごとに磨きがかかっている。時代劇をやってもダンディーですから。本当に素敵だなといつも思っています」とベタ褒めし、「タカのダンディーなお芝居を見た作家さん(脚本家)が、またどんどんそれを加えていって、舘さんがそれをさらに倍加して体現していくので、どんどんダンディーぶりが上がっていったんですよ」という。また、自身についても「僕はお調子者なんです」とお茶目に笑い、「お調子者のセリフがくると簡単にできちゃう(笑)。そうすると作家さんもそこを膨らませて、僕もさらに膨らます。しまいにはみんな『お好きにやってください』ってなりました」と笑いながらキャラクターの作り方を明かした。
一方の舘も、「僕らは脚本をいただいてお芝居しますけど、恭サマ(柴田)はそれを膨らませる力が本当にすごいんですよ。『あぶない刑事』がここまで皆さんに支持されるようになったのは、柴田恭兵という俳優さんの力だと僕は思っています」と絶賛。「それに、恭サマはお芝居の幅がすごく広くて、そこも素晴らしいと思っています。僕はもう、本当に狭くて。そういう意味でも、僕ら2人は対極の遠いところにいる俳優だと思うんですけど、並ぶとどこか似ている。それが『あぶない刑事』の魅力だと思います」とうれしそうに語る。それは長い年月によって醸し出されたものなのだろうと思われたが、舘は「いえ、最初からそうだったと思います」ときっぱり。「(企画を立ち上げた)プロデューサーの黒沢満さんや、長谷部安春監督が、『この2人をくっつけたら面白いものができる』と思ってくださったんでしょうね」と、製作者たちの先見の明の確かさを語った。
「そしてもちろん、それは1人ではできませんでした」と柴田は述懐。「舘さんとの出会いはもちろん、トオルくん(町田透役の仲村トオル)や、温っちゃん(真山薫役の浅野温子)やベンガルさん(田中文男役)たちがいらしたからです」と柴田が言うと、舘は「中条さん(近藤課長役の中条静夫)もね」とすかさず付け加える。「もちろんです。だからやっぱり、みんなで作ってきた『あぶない刑事』だということですね」と柴田は感慨深げに語った。
もしもお互いが、別の作品で別の役として共演するとしたらどうなるだろう。舘は「僕はね、どんな役でもできると思います。2人のキャラクターがぶつかることはないですから」と自信たっぷり。一方で柴田も「舘さんがおっしゃる通りです」とし、「『あぶ刑事』と関係なく、舘さんが刑事で僕が犯人として説得されたり、逆だったりしても、大丈夫です」と余裕を見せた。さらに舘は「俳優として互いにリスペクトしあってるからね。いい距離感があるんです」と満足げ。その距離感もまた「最初からそうだったんです。それは、作ってできるもんではないと思うんだ」と舘が語ると、柴田も大きくうなずいた。信頼と納得の奇跡の関係性。それがあったからこそ、「あぶない刑事」という物語は、ここまで人を魅了するのだろう。(取材・文:早川あゆみ)