巨額の私費を投じて『メガロポリス』を完成させたコッポラ監督「お金は重要ではない」と後悔なし 早くも次回作執筆中
第77回カンヌ国際映画祭
第77回カンヌ国際映画祭で構想40年のSFローマ叙事詩『メガロポリス(原題) / Megalopolis』をついにお披露目したフランシス・フォード・コッポラ監督。同作を作り上げるために1億2,000万ドル(約186億円・1ドル155円計算)の私財を投じたのは狂気的ともいえるが、85歳の巨匠に後悔は一切ないという。
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本作の主人公は、自由に形を変える、画期的な新建築素材を使ったユートピアを作ることを目指す建築家シーザー(アダム・ドライヴァー)。現状を良しとし、彼の前に立ちはだかる市長のキケロ(ジャンカルロ・エスポジート)、そしてシーザーと恋に落ちるキケロの娘ジュリア(ナタリー・エマニュエル)の姿を追う。近未来のアメリカを舞台にした哲学的なローマ叙事詩は商業的な成功が望めそうにないとハリウッドのスタジオを尻込みさせており、いまだ本国アメリカでの公開は決まっていない。
「映画スタジオは多額の負債を抱えていて、彼らの仕事は映画を作ることではなく、借金を返済すること」と言い切ったコッポラ監督は、巨額の私財の投入によって子供たちに残す財産がなくなってしまうのでは? との問いに「わたしの子供たちは例外なく、わたしの財産がなくても素晴らしいキャリアがある。わたしたちは大丈夫」とコメント。「それは問題ではない。ここにいる皆に言いたいのだが、お金は重要ではない。大切なのは友達だ。友達は、あなたを決してがっかりさせない。お金は消えてしまうかもしれないがね」と続ける。
さらに「普通、人は死ぬ前に『あれをやっておけばよかった。これをやっておけばよかった』と思うものだろうが、わたしが死ぬ時は『わたしは娘(ソフィア・コッポラ)がオスカーを獲るのを見た。わたしはワインを作った。わたしは自分が作りたいと思った映画を全て作った』と自分がやったことを考えるのに忙しすぎて、死んだことにも気づかないだろうよ」と後悔はないと強調した。なお、早くも次回作の執筆を始めているという。
本作は、コッポラ監督のアメリカに対するメッセージでもある。「われわれの政治は、アメリカを共和制を失いかねないところまで導いた。答えになるのは、政治家たちではない。それは、アメリカの芸術家たちだと感じている。芸術家の役割は、光を当てること。わたしの夢、わたしの望みは、わたしたちの国の芸術家たちがそれぞれの作品の中で、“今この国で何が起きているのか”に光を当て、人々に見せることだ。なぜなら見えなければ、行動もできないから」と訴えていた。(編集部・市川遥)
第77回カンヌ国際映画祭は現地時間5月25日まで開催