「光る君へ」晴明の従者・須麻流って何者?大河初出演のダンサー・DAIKIが解釈語る
吉高由里子主演の大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で陰陽師・安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)の従者・須麻流を演じるダンサーのDAIKI。ドラマのオリジナルキャラクターであり、素性が不明なことからSNS上では一体何者なのかと注目を浴びているが、DAIKI自身はどのように解釈しているのか? 今もなお手探りだという、謎めいた須麻流について語った。
本作は、平安中期の貴族社会を舞台に、のちに1,000年の時を超えるベストセラーとなった「源氏物語」を生み出した紫式部(まひろ/吉高)の生涯を、大河ドラマ「功名が辻」(2006)や、社会現象を巻き起こした恋愛ドラマ「セカンドバージン」(2010)などの大石静のオリジナル脚本で描くストーリー。DAIKI演じる須麻流は、兼家(段田安則)、道隆(井浦新)、道長(柄本佑)ら藤原ファミリーを陰で支えてきた安倍晴明の従者としてたびたび登場。名の由来はスバル(プレアデス星団)から。劇中でその素性が語られることはなく、ほとんど言葉を発さないため、第10回「月夜の陰謀」で「只今、牛車が屋敷の前を通り過ぎていきました」と晴明に告げるシーンでは「須麻流がしゃべった!」とSNS上に驚きの声が寄せられた。
DAIKIは軟骨無形成症を抱えながら14歳のころからダンサーとして活躍し、活動範囲を広げるため、2023年より障害者専門芸能事務所であるアクセシビューティーマネジメントに所属。本作ではオーディションを経て役を射止めた。本作が俳優デビュー作となるが、役柄について「晴明の従者」以上の設定は聞かされておらず「須麻流が何者なのかっていうのは僕も探り探りの状態」だという。
「劇中、須麻流が言葉を交わすのは晴明とだけで、ほかのキャストの方々と目線を交わしたりすることもないので、そもそも人なのかもはっきりしません。ユースケさんに“須麻流って(人に)見えるんですかね?”と尋ねたぐらいで。あるいは式神(陰陽道などで使われる鬼神)なのか。セリフもあまりなく、例えば立ち居振る舞いなどでも“なぜこの位置なのか”とか、謎に感じることはたくさんあるんですけど、視聴者の方が想像を膨らませることが楽しみの一つでもあるのかなと。なので自分の中でも何なのかを決めつけず、むしろ読まれないように撮影に臨もうと思うようになりました」
ところで、須麻流にとって主である晴明はどんな存在なのか。兼家が存命だった時代には彼の野望をかなえるべく、邪魔になる存在を呪詛。兼家が孫である懐仁親王を即位させるべく花山天皇を退位に追い込んだ陰謀に晴明がかかわっていたりと、どちらかというと汚れ仕事が多かった。須麻流は、そんな晴明の人に知られてはならない暗躍をそばで見てきた唯一の存在だ。
「従者でありながら晴明にパシリにされるようなことはほぼないんですよね。晴明は孤独な人なので、須麻流が友人ともいえる気がしていて。だから、たとえ晴明が悪いことをしているとわかっても動じない。目を合わせてニヤリとしたり、悪そうな顔をしたり、歩いたり、誰かと話しているときにそばにいたりと、いろんな角度からそばにいるので、僕の中では親友というかニコイチのようなイメージが強くなっている気がします。従者というよりもバディに近いかもしれません」
また、須麻流は基本的に晴明演じるユースケの発言や行動に対してリアクションする“受け”の芝居であるため、ユースケを観察することを心掛けているとも。
「たとえそれが悪いことであっても、晴明の答えが須麻流の答えなんですよね、多分。自分から発信しないというのはダンスと大きく違うところだと感じていて、結構晴明の表情を真似てみたりしています。ユースケさんだけ撮影の時もあるので、そういうときはチャンスとばかりにモニターでユースケさんの演技を見て“こういう悪い顔をするんだ”とか。ユースケさんの演技から得るものは多いです」
街中で“須麻流だ!”と声を掛けられることも多く、反響の大きさを喜ぶDAIKI。そんな彼の起用理由について制作統括の内田ゆきは以下のように語っている。
「オーディションに来ていただいた折の、明るく積極的な雰囲気が須麻流役に望ましいもので、ユースケ・サンタマリアさんとのコンビもしっくりくると予想できたこと。そしてダンスのキャリアからか、ご自分を表現したいという思いが強く、さらにスキルもお持ちであることを実感したからです。セリフは多くはないですが、視線のお芝居が効いていて、須麻流という名前(スバルの意)のごとく、キラリと光る存在感は素晴らしいと実感しております」
現在、公卿のトップとなった道長は父・兼家や兄・道隆らと異なり、民のための忖度しない政策を目指していることから晴明とのかかわり方もまた変わってきており、今後の晴明&須麻流の活躍、暗躍に期待が高まる。(取材・文:編集部 石井百合子)