『辰巳』で最凶最悪の男を演じた倉本朋幸が韓国で大人気
小路紘史監督の映画『辰巳』が、韓国で開催中のプチョン国際ファンタスティック映画祭で9日に上映され、小路監督と竜二を演じた演出家の倉本朋幸が観客との質疑応答に参加した。日本では今年4月20日から公開されて以来、メイン館である渋谷のユーロスペースを熱狂の渦に巻き込み、2か月間にわたってロングラン上映された話題作。
上映終了後に行われたQ&Aでは、集まった観客から次々に手が挙がり、作品のさまざまなシーンについて質問が相次ぐ中、主人公・辰巳と共に復しゅうを遂げようと奔走する少女・葵を演じた森田想の役どころについて質問されると「いわゆる男性の付属品として女の子を登場させるのではなく、女性を成長させていく様子を描きたかったです。だからこそ森田さんと話しをたくさんしました」と強気なヒロインを登場させたことへの特別な思い入れを話す場面もあった。
また、作中で最凶最悪な半グレ役・竜二を演じて強い印象を与えた倉本は会場でも大人気で、役づくりに関する質問が続き、役柄のモデルは誰かという質問に対して倉本が「基本的にはないんですが、自分の人生で出会った嫌だった人たちをモデルにしました。あとは、自分がされたら嫌だなってことをしましたね」と話すと役柄からは想像できないほどユーモラスな一面に会場は笑いに包まれた。
小路監督が倉本の起用について「ふだんは演出家をされていて、今回初めて役者をしたので、今回が引退作と言っています(笑)。物語をもっと良く伝えるために全部のシーンで追加撮影をしました」と倉本が俳優ではなく、演出家だったことが監督から明かされると観客からは驚きの声が上がった。
最後に「8年ぶりに戻って来れてうれしいし、韓国映画に育ててもらった監督作だと思うので、またプチョンに戻って来たいです」とあいさつした小路監督が「3作目はラブコメを撮ろうとしています」と話すと、会場から意外すぎる次回作への期待を込めた拍手が送られた。
本作は裏稼業で働く孤独な男・辰巳と、最愛の家族を殺され、復しゅうを誓う少女を描く、これまで誰も観たことのない“ジャパニーズ・ノワール”。 カンヌ国際映画祭「ある視点」に出品され、仏・セザール賞で4部門ノミネートした話題作『ONODA 一万夜を越えて』(21/アルチュール・アラリ監督)の遠藤雄弥が主人公の辰巳を演じ、行き場のない怒りを復しゅうに変える少女・葵役を、森田が務める。(取材・文 森田真帆)