「光る君へ」柄本佑、紫式部が道長の子を出産する展開に衝撃 「覚悟を感じた」
吉高由里子主演の大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で平安貴族社会の最高権力者となる藤原道長を演じる柄本佑。昨年5月28日にクランクインしてから約1年と2か月の撮影を経た柄本が、主人公まひろ(紫式部/吉高)と道長の関係を振り返った。柄本は、道長にとってソウルメイトのような存在であるまひろについて「本気を出せる人っていうのかな。愛すること、憎むことにおいても中途半端、中間がない印象」と語っている。
本作は、平安時代に1000年の時を超えるベストセラーとなった「源氏物語」を生み出した紫式部(まひろ)の生涯を、「源氏物語」の主人公・光源氏のモデルともいわれる藤原道長との関係を交えてオリジナル脚本で描くストーリー。脚本を、社会現象になったドラマ「セカンドバージン」(2010)や吉高と柄本が共演したドラマ「知らなくていいコト」(2020)などの大石静が務める。
もともと道長は、関白として権勢を振るった父・兼家(段田安則)やその跡を継いだ兄・道隆(井浦新)、道兼(玉置玲央)らと異なり、野心とは無縁のおっとりした性格。その彼が、今や左大臣・内覧として公卿のトップに立った。幼き三郎時代からは想像できない立身出世だが、柄本は「最初のころに感じていた、三郎としての、三男としての人間性みたいなところがより大事だなと思っています」という。
「もちろん道長は政治のトップであり、いろいろと意見したり、時には謀をせねばならない立場にある。まひろとの「政によってこの国を変えていく」という約束を果たすためには(娘の)彰子(見上愛)を入内させたりとこれからどんどんそういったことになっていくんですけど、その一方で本来の道長と乖離した部分があらわれてきていると肌で感じていたりする。そうした時に、彼は今この地位にいるけれども、もともとはのんびりした三郎くんである。そういう人間性みたいなところは変わらないと思うし、(撮影で)最終章の入口に立った今、より意識するようになっていますかね」
立場は変わろうとも人間性は変わらない道長。それは、身分差がありながら数奇な縁で結ばれてきたまひろへの愛も同様だ。離れようとしても離れられない。道長には倫子(黒木華)、明子(瀧内公美)の二人の妻がおり、まひろも父・為時(岸谷五朗)の友人である宣孝(佐々木蔵之介)と結婚。それでも互いへの愛は変わらず、7月14日放送・第27回では石山寺で再会して結ばれ、まひろが道長の子を身ごもった。史実にない衝撃的な展開に騒然となったが、柄本自身にも驚きはあったのか、それとも「やはり」という予感はあったのか。
「やはりそうなのかとは思いませんでした(笑)。そういう展開になりそうだということは風の便りで聞いていましたが、正式に知った時には“まさかそんな……”っていうね。一方で、この組のある種、覚悟みたいなものを感じずにはいられなかったですね。そういう決断をしたことに勇気をもらった気がしますし、この組がより好きになりました」
これまで劇中でまひろ、道長がそれぞれ月を見上げる場面がたびたび登場していたが、18日放送・第31回ではそれらを回収する場面があった。まひろがふと道長に「人はなぜ月を見るのでしょう」と投げかけ、道長は「誰かが今、俺が見ている月を一緒に見ていると願いながら俺は月を見上げてきた」と答える。ト書きには「決壊しそうな想い」とあるが、道長が言う“誰か”とはやはりまひろのことなのか?
「まひろが隣にいるから、何かまひろに言っているんじゃないような感じもするけど、でも明らかにまひろのことを言ってるんじゃないかなって思います。というのもまひろと道長って、離れている時間の方が長かったりするから。道長は非常にストレートな人だとも思うので、まひろに向けて言ったということでいいんじゃないですかね。加えて『直秀も月におるやもしれんな』と亡き直秀(毎熊克哉)に想いを馳せる描写もあって、とても撮影が大変だったのもあるけど印象深いシーンです」
撮影が大変だった理由はどんなことなのか?「1つは、ものすごい長いシーンだったこと。今までのような、まひろの思いが錯綜して、一言前に言ったことを覆してくるみたいな、そういうものとは違って、これまでのことを1度決算するようなシーンになっている。最終的に月を眺めてまひろが『人はなぜ月を見るのでしょう』というところに帰結して、そこからまた先に進む。いわば推進力になるシーンなので、そういうシーンっていうのはやっぱりエネルギーを使う。非常に体力を持っていかれるシーンだったりもするので、そこは吉高さんと協力し合いながら切磋琢磨しました」
第31回は、道長がまひろに「枕草子」を超える物語の執筆依頼をし、まひろがついに「源氏物語」を書き始める記念すべき回でもある。現在は先の撮影をしているというが、柄本は内裏で女房装束をまとい「源氏物語」を執筆中の吉高(まひろ)について「めっちゃ紫式部!」と興奮気味に話す。
「初めに見たのは立ち姿だったんですよ。その時もまたすんとして、衣装の着こなしも非常に美しいな、なんて思ったんですけど、凄いのが筆の練習をしている姿。『紫式部じゃん!』『すげぇ』って。これからその書き姿がたくさん出てくると思いますが、以前、目にした宇治橋にある紫式部の石像、まさにあんな感じです。本気で「源氏物語」に取りかかっていくまひろとのやり取りの時はちょっと気を抜いたら道長くんタジタジになっちゃうくらい。 とってもすごいことになっているので、ぜひ楽しみにしてください」
ちなみに、道長を巡って火花を散らす二人の妻、倫子、明子と、まひろの人間模様も気になるところだが、柄本いわく「道長くん、やらかしています」とのこと。「つい最近もそれに関連するシーンを撮っていたんですが、まあ彼は鈍感ですよ。それこそ三郎的部分ですね。きっと皆さんが“何やってんの!?”とツッコミを入れたくなるようなことをしたりしますが、そういったところは非常に楽しみながらやっている部分でもありますね」と視聴者の“期待”に応えるシーンを約束していた。(編集部・石井百合子)