吉沢亮、手話と出会い気付き 「気持ちは伝えなければ伝わらない」
俳優の吉沢亮が5日、新宿ピカデリーで行われた主演映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(9月20日公開)の完成披露上映会に共演の忍足亜希子、呉美保監督と共に登壇。「手話と出会って、気持ちというのは伝えなければ伝わらないと感じました」と撮影を振り返った。
本作は、五十嵐大の自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」を、映画『そこのみにて光輝く』(2013)や『きみはいい子』(2015)などの呉美保監督が映画化。吉沢は、聴覚障害者である両親に対して複雑な思いを抱く主人公・五十嵐大を演じた。
6月に行われた上海国際映画祭のコンペティション部門をはじめ、9月に開催される第43回バンクーバー国際映画祭のパノラマ部門、10月に開催される第68回ロンドン映画祭のコンペティション部門への出品が決まった本作。吉沢は「光栄な限りです」としみじみ語ると「国や文化を問わず、観ていただいた方に伝わる普遍的なテーマの作品だと改めて思いました」と思いを述べる。
オファーを受けた際のことを振り返った吉沢は「呉監督の作品は大好きな世界観で、いつかご一緒できたら嬉しいと思っていた」と念願だったことを明かすと「最初にプロットを読んだとき、ものすごく共感できる部分が多く、純粋に素晴らしいお話だなと思った」と作品自体にも魅了されたという。
9年ぶりとなった長編映画に挑んだ呉監督は「育児をするなか、いつか映画が撮れたらいいなと思っていました」といい、「もし撮るならどんな人とやりたいか……と考えるなかで、いろいろな作品を観ていて吉沢さんは素敵な俳優さんだなと思っていました」と語る。
オファーの理由について呉監督は「吉沢さんは美しい人ですが、そのなかにある美しくない何かをこの目で見たかった」と明かすと「この企画のお話をいただいたとき、まさにこの作品の主人公と吉沢さんがフィットすると思ったんです」と説明。呉監督の発言に吉沢は照れくさそうな笑みを浮かべていた。
呉監督は「コーダという耳の聞こえない両親に育てられた子の話ですが、どこにでもある話」と決して特別な環境下での物語ではないことを強調。母親役の忍足は「この映画はこれまでにない新しい感覚の映画。ろうの世界、手話の世界、コーダの世界……この世の中にはいろいろな世界があるということを感じてほしい」と手話で伝えた。
吉沢も「この作品に参加して、言葉を伝えることの重要性を感じました」と役を通して芽生えた思いを吐露。「手話と出会って、気持ちというのは伝えなければ伝わらないと感じました」と作品に込めたメッセージを語った。(磯部正和)