映画 太陽の子 (2021):映画短評
映画 太陽の子 (2021)物理学者のジレンマが伝わる青春群像ドラマ
海軍に原子爆弾開発を命じられた京都帝国大学の研究者たちを通し、戦争が人々にもたらす悲哀と虚しさを描いた実直な作品だ。最先端の技術開発に意欲を燃やす知的な若者たちが学問を人殺しの道具にすることに葛藤し、科学の役目を自問する姿がリアル。一方で国に命を差し出す覚悟を決める研究者の熱い思いや主人公兄弟と幼馴染の淡い恋も描かれ、戦争に巻き込まれた若者の等身大の姿がみずみずしくも切ない。自死した三浦春馬が演じる若き戦闘機乗りの登場シーンは涙なくしては見られなかった。彼と柳楽優弥が演じる研究者の母親役の田中裕子がまた肝っ玉の座った母性を見事に演じ、さすがのシーン・スティーラーぶりを発揮する。
この短評にはネタバレを含んでいます