大地と白い雲 (2019):映画短評
大地と白い雲 (2019)生活様式の変化が生む夫婦のすれ違い
モンゴルの遊牧民というと移住しながら羊や馬を放牧する印象が強いが、最近は定住を選ぶ人も多いよう。都会の生活に憧れる夫チョクトと草原暮らしに満足な妻サロールが徐々にすれ違い、想定外の選択を迫られる展開は、モンゴル人が直面する変化を体現しているようだ。伝統を守ることは素晴らしいかもしれないが、マテリアルな欲求を満たしたくなる気持ちも理解できる。そのバランスを取るのが難しいわけで、それは価値観に違いが生まれた夫婦関係にも通じるのかもしれない。広大な草原は美しくも厳しく、その地で繰り広げられる夫婦の物語には一抹の寂しさが漂う。ラストのカメラが捕らえる遠景に観客は何を思うのか?
この短評にはネタバレを含んでいます