老犬と暮らす情熱的な音楽教師ヴィンフリードは、有能なビジネスコンサルタントとして世界中を飛び回っている娘のイネスとは長い間疎遠だった。だがある日、大切な相棒である犬を亡くした彼は、久々に娘とコンタクトを取ってみようと思い立つ。
マドリッドを出てポルトガルで新生活を始めようとしていたジュリエッタは、もう何年も音信不通の娘アニータの古い友人ベアと偶然出会う。彼女が3人の子どもを連れたアニータをイタリアのコモ湖で見かけたと聞き、ジュリエッタはポルトガル行きを中止して娘に手紙を書くことにする。
『オール・アバウト・マイ・マザー』で第72回アカデミー賞外国語映画賞に輝いた、スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督による女性讃歌。 ノーベル文学賞を受賞したカナダの作家アリス・マンローの小説を基に、罪悪感や後悔と共に困難な日々を耐えてきた女性たちの姿を描き出す。 本映画祭では第59回で『ボルベール<帰郷> 』が脚本賞、第52回で『オール・アバウト・マイ・マザー』が監督賞を受賞している監督の3度目の受賞に期待がかかる。
審査員賞
家出少女のスターは、雑誌の訪問販売する一行と寝食を共にし、パーティーざんまい、違法行為とさまざまな体験をしていく。ある日、彼女は、ジェイクという青年と出会い、恋に落ちる。
『レッド・ロード(原題)/ Red Road』、『フィッシュタンク~ミア、15歳の物語』で第59回、第62回と本映画祭審査員賞を受賞している英国期待の女流監督アンドレア・アーノルドが、初めてアメリカで撮影。 ヒロインが恋愛や人間関係を通して成長するドラマ。アメリカンドリームを求めて昼は訪問販売、夜はパーティーざんまいで暮らす若者の実像を、英国人監督の視点で捉え、無法地帯と化した米国のストリートの実態も交えて描く。 ホームレスから女優に転身した、第27回東京国際映画祭グランプリ受賞作『神様なんかくそくらえ』主演女優のアリエル・ホームズも出演。
監督賞
オリヴィエ・アサイヤス
フランスで服などを買いそろえる「買い物代行業」をしているアメリカ人女性のモーリーン。実は彼女には超能力があり、亡くなった双子の弟ルイスの霊と交信することができた。そんな中、彼女は不思議なメッセージを受け取るようになり……。
『イルマ・ヴェップ』のような独特の作品から近年は第44回全米映画批評家協会賞外国語映画賞を受賞した『夏時間の庭』まで、多彩な作品を手掛けるオリヴィエ・アサイヤスによるサスペンス。 本映画祭にも出品されたアサイヤスの前作『アクトレス ~女たちの舞台~』に続いて、クリステン・スチュワートが出演。 ファッション業界を舞台に幽霊をテーマにした本作を、スチュワートは「詩的で変わった映画」と説明している。
まだ若い医師ジェニーは、自分が治療を拒んだ結果、その後容態が急変して命を落とした一人の少女の死に対して罪悪感を抱いていた。亡くなった少女は身元がわからなかったため、ジェニーはできるだけ警察の捜査に協力して彼女の生前の足跡を確かめようと心に誓う。
本映画祭史上初の主要賞5作品連続受賞という快挙を成し遂げた、ベルギーの名匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟が手掛けた社会派ドラマ。 『スザンヌ』で第39回セザール賞助演女優賞、『Les Combattants(原題)』で第40回セザール賞主演女優賞を獲得した演技派女優アデル・エネルが、良心の呵責(かしゃく)にさいなまれる医師を熱演。 国際的知名度の高い大物監督が、本映画祭での主要賞6作品連続受賞なるかに熱い視線が注がれる。
グランプリ
失踪から12年、作家のルイは帰郷する。エイズのため死が近いことを家族に告げに来たのだ。しかし家族の再会は、愛するがゆえに終わることのない口論となり、疑念と孤独、恨みがますます募っていく。
前作『Mommy/マミー』が当時25歳という若さで、第67回本映画祭の審査員特別賞を受賞したグザヴィエ・ドランの下に、マリオン・コティヤール、ヴァンサン・カッセル、レア・セドゥらフランスを代表する俳優が集結。 原作はジャン=リュック・ラガルスの戯曲「まさに世界の終わり」で、「『Mommy/マミー』よりも繊細で慎ましく、静か。だが、ラストに感情が爆発する」とドラン監督が語っており、彼らしい叙情的かつセンセーショナルな作品だ。
1910年夏、北フランス。小さな村は謎の連続失踪事件の話題で持ち切りだった。刑事のマシンと部下のマルフォイが捜査を進める中、気掛かりなことを発見。漁師一家の長男マ・ルートと彼の恋人でブルジョワ家庭の末っ子ビーユを追及する。
昨年のベネチア国際映画祭で最優秀男優賞を受賞したファブリス・ルキーニが主演、世界三大映画祭すべての最優秀女優賞とアカデミー賞助演女優賞を獲得したジュリエット・ビノシュが共演。 ブリュノ・デュモン監督は本映画祭の審査員グランプリを受賞した『ユマ二テ』『フランドル』のようなドライでヘビーな作風が特徴だが、今回、前作の『プティ・カンカン(原題) / P'tit Quinquin』に続いてコメディーに挑戦。 デュモンと名優たちによるブラックユーモアが見もの。
ガブリエルは情熱的な愛に憧れていたが、農業を営む両親に季節労働者との愛のない結婚をさせられる。ある日、ガブリエルは結石の療養にいった先でインドシナからの帰還兵アンドレと激しい恋に落ち、希望を取り戻す。ガブリエルとアンドレはそのまま逃避行をするが……。
『ヴァンドーム広場』などでメガホンを取るニコール・ガルシアが本映画祭コンペティション部門に3度目のノミネート。 世界中で翻訳されたミレーナ・アグスの小説「祖母の手帖」を映画化したメロドラマ。 女性が自由に生きられなかった1950年代の田舎を背景に、『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』のマリオン・コティヤールがスキャンダラスな愛に走る女性を演じる。 共演は『トーク・トゥ・ハー』のハビエル・カマラと、『サンローラン』のルイ・ガレル。
フランス南部のグラン・コースで狼を探していた映画監督のレオは羊飼いのマリーと出会い、子どもが生まれる。マリーは産後うつになり、気ままなレオのことが信じられなくなり、レオと子どもを置いて出奔。レオはその状況が嫌ではなかったが、やがて仕事を減らし落ちぶれたレオの足は、オオカミのいるグラン・コースに向かっていた。
中編映画『動き出すかつての夢』が、フランスの将来を期待される監督に与えられるジャン・ヴィゴ賞を獲得したアラン・ギロディ監督。 4作目の『湖の見知らぬ男』は第66回本映画祭である視点部門監督賞を受賞し、英国映画協会が選ぶLGBT映画ベスト30にも選出。 また、ギロディ監督はゲイをカミングアウトしており、その作品は唯一無二のストーリーや世界観を繰り広げる。 主演には『バツイチは恋のはじまり』などに出演歴のあるダミアン・ボナールを抜擢した。
ニュージャージー州・パターソンのバス運転手パターソンの日々は決まりきったことばかり。仕事では同じルートを走り、詩を書き、犬の散歩をして、バーではビールを1杯だけ口にする。一方の妻ローラは夫とは真逆な日々を送る。
Amazon製作のオリジナル映画第2弾。「答えはすべて映画の中にある」と公言し、独自のスタイルを貫くジム・ジャームッシュ監督による皮肉を込めたコメディー作品。 前作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』に続いてコンペティション部門出品となった。 静かな勝利、日常における敗北感を1週間観察していくスタイル。 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のカイロ・レン役のアダム・ドライバー、『彼女が消えた浜辺』主演女優のゴルシフテ・ファラハニが夫婦にふんする。
女手一つで3人の子どもたちを育て上げたクララは、海に面したクラシカルな建物で暮らしている。ようやく子どもたちも作家やジャーナリストとして独り立ちしたと思ったのもつかの間、今度は地域の再開発を狙う建設会社と対峙(たいじ)することになる。
監督や脚本家として活躍するブラジルの期待の星、クレベール・メンドンサ・フィリオ監督が手掛けた人間ドラマ。 『蜘蛛女のキス』などで知られるベテラン女優ソニア・ブラガがヒロインを演じ、『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』のイランヂール・サントスが共演。 『サンタ・バルバラの誓い』が第15回本映画祭でパルムドールを受賞して以来のブラジルの悲願である、2度目の最高賞受賞を54年ぶりに果たすことができるのか?
パルムドール
59歳のダニエル・ブレイクは木工職人としてイングランドの北東部で過ごしてきたが、病に侵され、国からの援助が必要な状態となっている。また、2人の子どもを持つシングルマザーのケイティはロンドンのホームレス用施設から逃れたいと思っている。そんなダニエルとケイティがイギリスの理不尽な行政から互いを助けるため一計を案じる。
ケン・ローチはカンヌ映画祭常連監督の一人。 労働者階級に焦点を当てた作品を一貫して撮り続けており、1960年代に住宅事情を扱ったドラマ「キャシー・カム・ホーム(原題) / Cathy Come Home」に続けて、本作では英国の住宅法に基づく深刻なホームレス問題と福祉手当を題材に、制度の利用実態を描く。 ダニエル役のデイヴ・ジョーンズはこれまでテレビシリーズのゲスト出演がメインで、本作がキャリア初の映画出演でしかも主役という大抜擢となった。
女優賞
ジャクリン・ホセ
ネストールとローザの夫妻はフィリピン・マニラのスラム街で表向きはコンビニ「サリサリ・ストア」を営み、裏では違法と知りながら麻薬を扱うことで生計を立てていた。
フィリピンの鬼才ブリランテ・メンドーサは、フィリピン映画として24年ぶりに第61回本映画祭に『サービス(原題) / Serbis』を出品。 続く第62回に出品した『キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-』では、監督賞を受賞。さらに第68回にも『罠(わな)~被災地に生きる/ Taklub』を出品。 特有の質感と描写に定評あり。本作にはフィリピンの大女優ジャックリン・ホセと、その愛娘の女優アンディ・アイゲンマンが共演。タイトルはマザー・ローザの略。
監督賞
クリスティアン・ムンジウ
ルーマニアの小さな地方都市で暮らすある医師は、自身の子どもが「バカロレア」と呼ばれる大学入学検定試験で優秀な成績を収めるため、できる限りのサポートをしていた。そしてまた、毎年一斉に発表されるその試験結果に、本人はもとより家族たちも戦々恐々としていた。
本映画祭では第60回に『4ヶ月、3週と2日』で最高賞のパルムドールと、第65回に『汚(けが)れなき祈り』で脚本賞を受賞しているルーマニアの名匠クリスティアン・ムンジウ監督。 『4ヶ月、3週と2日』のヴラド・イヴァノフや、『汚(けが)れなき祈り』のヴァレリウ・アンドリウツァといった監督とはなじみの深い俳優たちが今作にも出演。 社会派作品を好む傾向のカンヌ国際映画祭にぴったりのムンジウ監督の作風が今回は吉と出るか?
1958年、17歳のミルドレッドは6歳年上の建設作業員リチャードと出会い、その後ワシントンD.C.で結婚する。しかし当時、自宅のあるバージニア州では異人種間の結婚が禁止されていた為、後日保安官に逮捕されてしまう。
『MUD マッド』のジェフ・ニコルズが監督・脚本したのは、アメリカの「異人種間結婚禁止法」撤廃の立役者を描いた伝記映画。 ナンシー・バアースキーの実録映画をベースにしており、愛のために戦った夫婦を演じるのは、『ブラック・スキャンダル』のジョエル・エドガートンとエチオピア出身の女優ルース・ネガ。 ジェフ・ニコルズとマイケル・シャノンのタッグは5度目。
1930年代の韓国で、思いがけず莫大な遺産を相続することになった深窓の令嬢アガシ。彼女の財産に目を付け、伯爵になりすました詐欺師と、彼に雇われ令嬢の下女になって屋敷に潜り込んだ少女、そして令嬢の後見人たちが丁々発止のバトルを繰り広げる。
西アフリカのリベリアで、アフリカの国際援助機関のディレクターとして働く女性レンは、活動を通じて出会った男性医師と惹(ひ)かれあう。
大物カップルとして昨年の本映画祭にそろって登場したショーン・ペン監督とシャーリーズ・セロン主演作。 南アフリカ共和国出身で貧困改善やエイズ教育を支援する慈善団体を立ち上げた女優シャーリーズを起用した本作は、2014年夏より実際に南アフリカ共和国で撮影。 第66回本映画祭のパルムドールを受賞した『アデル、ブルーは熱い色』で注目された女優アデル・エグザルホプロスがジャーナリスト役で出演している。 ペン監督の前作『イントゥ・ザ・ワイルド』と同じくビル・ポーラッドが製作。
パリ出張から戻ったばかりの多忙な神経学者は、一年前に亡くなった父親を家族で悼むための食事会に妻を同伴し出席する。彼の母親のアパートに集まった客たちは司祭が到着するまでのしばしの間、世界情勢や各地で起きている戦争について議論を交わす。
『ラザレスク氏の最期』で第58回本映画祭のある視点部門グランプリに輝き、ルーマニア映画が世界から注目されるきっかけを作ったクリスティ・プイウ監督が贈る家族の再生の物語。 『不倫期限』のミミ・ブラネスクや『私の、息子』のボグダン・ドゥミトラケらが共演し、圧倒的な悲しみの前で呆然と立ちすくむ人々の物語を描く。 また『Aurora』でも第63回のある視点部門にノミネートされた監督が、今度こそ最高賞のパルムドールに輝くのか?
欧州屈指のゲーム会社代表のミッシェルは何者かに襲われる。家をのぞいている男の目撃証言や、パソコンのハッキングなど不可解な出来事が続き、彼女はある対策を講じる。
『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』の原作者として知られるフィリップ・ジアン著の小説を映画化した、イザベル・ユペール主演のスリラー映画。 正体不明の存在に襲われたときに、生活や思考が一変していく過程を捉えている。 監督自身「強姦(ごうかん)や復讐劇ではない」と明言しており、これまでにない作品が期待できそう。 ヴァーホーヴェン監督にとってクライムサスペンス映画『氷の微笑』以来の本映画祭出品となる。
モデル志望のジェスはロサンゼルスにやって来る。ジェスの若さは美に取りつかれた女たちの嫉妬を買い、女たちはどんな手を使ってもジェスを破滅させようとする。
男優賞
シャハブ・ホセイニ
脚本賞
アスガー・ファルハディ
若いカップルの関係が突然暴力的なものに変化し、穏やかだった男は、妥協を許さない残酷な人間へと変わっていく……。主人公の個人的な問題を背後に、現代のイランの社会的、政治的、道徳的な問題が描かれている。