終わってみないと映画祭はわからないもの。5月22日夜の授賞式は予想外の結果にプレスは唖然呆然。前日までプレスの星取表のトップを走っていたマーレン・アーデの『トニ・エルトマン(原題)』もジム・ジャームッシュの『パターソン(原題)』もペドロ・アルモドバルの『ジュリエッタ(原題)』も無冠に終わり、パルム・ドールに選ばれたのはケン・ローチの『アイ・ダニエル・ブレイク(原題)』で、ローチは2度目のパルム受賞だ。
『アイ・ダニエル・ブレイク(原題)』は、心臓発作を起こして仕事ができなくなった大工のダニエル・ブレイクが、失業保険を申請しようとして人間味のない福祉行政に翻弄される物語。近年コンペ部門が常連で占められるようになり、その結果、作風よりはテーマの切実さに重きが置かれるようになっているようだ。昨年の『ディーパンの闘い』の移民問題に続いて、社会問題をテーマにした本作が高く評価されたのはその表れだろう。