コラム

ムービー+1キーワード 「カンヌ映画祭・結果」

予想外の結果に終わったカンヌ映画祭

 終わってみないと映画祭はわからないもの。5月22日夜の授賞式は予想外の結果にプレスは唖然呆然。前日までプレスの星取表のトップを走っていたマーレン・アーデの『トニ・エルトマン(原題)』もジム・ジャームッシュの『パターソン(原題)』もペドロ・アルモドバルの『ジュリエッタ(原題)』も無冠に終わり、パルム・ドールに選ばれたのはケン・ローチの『アイ・ダニエル・ブレイク(原題)』で、ローチは2度目のパルム受賞だ。

 『アイ・ダニエル・ブレイク(原題)』は、心臓発作を起こして仕事ができなくなった大工のダニエル・ブレイクが、失業保険を申請しようとして人間味のない福祉行政に翻弄される物語。近年コンペ部門が常連で占められるようになり、その結果、作風よりはテーマの切実さに重きが置かれるようになっているようだ。昨年の『ディーパンの闘い』の移民問題に続いて、社会問題をテーマにした本作が高く評価されたのはその表れだろう。

ムービー+1キーワード 「カンヌ・ノミネート」

ラインアップから見る今年のカンヌ映画祭は?

 5月11日にウッディ・アレンの新作『カフェ・ソサエティ(原題)』の上映で開幕する第69回カンヌ映画祭。発表になったラインアップから、一足先に今年のカンヌを俯瞰してみよう。

 まず、コンペティション部門は、ここ数年ますます顕著になってきた保守化傾向を踏襲し、すでに国際映画祭で受賞経験のある名の通った有名監督やベテラン、巨匠が並んでいる。が、それに対して、ある視点部門には全17本のうち7本が新人の長編デビュー作が並び、今年は2つの公式部門の色分けがさらにはっきりした。残念ながら日本映画はコンペに入らなかったが、深田晃司監督、浅野忠信主演の『淵に立つ』、是枝裕和監督、阿部寛主演の『海よりもまだ深く』の2本が、ある視点部門に選ばれた ……