略歴: 編集者を経てライターに。映画、ドラマ、アニメなどについて各メディアに寄稿。「文春野球」中日ドラゴンズ監督を務める。
近況: YouTube「ダブルダイナマイトのおしゃべり映画館2022」をほぼ週1回のペースで更新中です。
サイト: https://www.youtube.com/channel/UCmdesdmNuJ2UPpAQnzkh29Q/featured
誰にでも向き合いたくない過去は一つや二つあるだろう。事件や事故、何かから逃げ出してしまったこと、仲間を裏切ってしまったこと……。引退したアドニス・クリードは地位も名誉も巨大な家も愛する家族も仲間も得て、まさに人生“上がり”状態。そこに立ち塞がったのが、向き合いたくない過去そのもののような地元の怖いパイセン、デイミアンだった。『ロッキー』シリーズのオリジナルキャストは出演していないが、『ロッキー』や『ロッキー3』などを下敷きにしたストーリーはまぎれもなく『ロッキー』。満を持して流れるあの曲には落涙必至。人生の物語でもありスポーツエンタテイメントでもある内容を116分にまとめたテンポの良さも◎。
軍隊仕込みの凄腕暗殺者ジェニファー・ロペスが12年前に手放した娘を守るため、容赦なく敵を殺しまくるアクション作品。敵対する組織にさらわれた娘を助け出す前半の展開は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演『コマンドー』の女性版みたいな感じ。ただし、シリアスなトーンが貫かれているため爽快さや痛快さはない。主人公が母親として名乗り出ないかわりに、銃の扱い方や地雷の作り方、ナイフで人を殺す方法などを娘に教えてコミュニケーションを取るのが面白いのだが、要所要所で「なんで?」と思うような展開が続いてしまうのが残念。理詰めでない分、アクションも凡庸。笑顔ゼロで演じきったジェニロペの逞しさを堪能したい方はぜひ。
ハイパー殺戮マシーンの無骨な特殊部隊員が、フランス国内に潜入したテロリストを匿っているギャングの一味に潜入。ボスの幼い子どもとほのかに心を通わせるが、その子どもが敵対組織にさらわれて怒りが爆発。さらにテロリストの意外な正体が明らかになって……というフランス産ハードアクション。無慈悲なオープニングから、それがまるっきり反転するラストまで、ずっとハードボイルドな雰囲気がたちこめ、緊迫感は保たれたまま。あらすじに反してまったくウェットにならないのがいい。『ロストブレット』シリーズにも主演しているアルバン・ルノワールは本作で脚本も担当。今後のフランスのアクション映画界を担っていきそうな存在だ。
笑って泣いてぶっ飛ばす。全員が何らかを失った悲惨な過去を持つ“負け犬”ヒーローたち、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの活躍を描くシリーズ完結編。「家族」をテーマに掲げてやや散漫に感じられた『Vol.2』とはうって変わって、今回は「仲間を助ける」というシンプルな行動原理で突っ走る。その爽快感たるやシリーズ最上級のもの。やがて目的が「仲間を助ける」だけじゃなく「弱き者を助ける」になり、さらに「自分を助ける」ことに至る終盤にかけては涙腺がゆるみっぱなし。あらためて、こういうのがヒーローってものだよ、と見せつけられたよう。ジェームズ・ガンが監督に復帰できてよかった!
彼氏にフラれたキャリアウーマンが、仕事のためにベトナムのツアーに参加するが、そこで出会ったツアーガイドの男性と……というラブコメディー。とにかくベトナムの風景が美しい。ホイアン、ダナンなどの定番スポットから、ミーソン遺跡、ガイドの故郷トンチャンなどをめぐりつつ、殻を破ることの大事さを主人公が学んでいく。ベトナム政府全面支援で作られた観光映画で、新型コロナウイルスが収まりつつある今観るのにぴったり。ガイドが語る「ベトナムは戦争の印象が強いけど、それは歴史のほんの一部」というのはベトナムの人たちの本音だろう。ティーンアイドルだったレイチェル・リー・クックは43歳になってもきゅるんとしていて可愛い。