略歴: 編集者を経てライターに。映画、ドラマ、アニメなどについて各メディアに寄稿。「文春野球」中日ドラゴンズ監督を務める。
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アダム・サンドラーとジェニファー・アニストン主演による大ヒットミステリー・コメディーの第2弾。前作はテレンス・スタンプと忽那汐里が夫婦役で登場して驚かされたが、今回は予算が爆発的に増えたようで、とにかくロケもアクションもずっと派手。ただし、アクションが派手になった分、ミステリー成分がほとんどなくなっていて、全体のバランスが悪くなったような気が。笑えるギャグもあるけれど、人がギャグのためにバンバン死ぬので、どこか爽快感が薄れてしまう(前作も人はバンバン死んだけど、ストーリー展開の中で死んでいた)。これはこれで十分楽しいのだが、ジャンクフード感はかなり増している。ビール飲みながら観るのにぴったり。
女性13人が絞殺されたボストン絞殺魔事件を、実際に事件を追った二人の女性記者の視点で描く。不手際が重なる警察、警察をかばおうとする新聞社の上司、応援はしてくれるけど忙しくなると不機嫌になる夫など、じっとりとした男社会の中で“女性の敵”を追う主人公が描かれる前半から、逮捕された犯人が実は真犯人ではないことが判明していく後半(実際に冤罪説がある)まで、タバコをバカスカ吸いながら真相に迫っていくキーラ・ナイトレイに引っ張られるように見入ってしまう。複雑怪奇な事件の向こう側にある、真相めいたものにゾッとさせられる。サスペンス的な迫力はないが、ジャーナリストものの佳作。輪転機の描写を久しぶりに見た。
すでに18冊刊行されている人気ジュブナイル小説「らくだい魔女」シリーズ初のアニメ映画化。魔法の国のお姫様だけどドジばかりの主人公と仲間たちが、闇落ちした魔女の復讐を防ごうとする。心にフォーカスした物語で、主人公が精神攻撃を受ける場面がメインなんだけど、描写は子どものトラウマにはならない程度に抑えてある。魔法のエフェクトから背景美術まで、作画は手抜き一切ナシ。60分の中編なので、ストーリー的にちょっと食い足りない部分もあるが、キャラクターも立っているし、それぞれの過去や謎もたっぷり残っている(何より主人公のことがまだまったくわからない)ので、今後シリーズ化待ったなしだろう。
舞台は魔法が存在するファンタジックな国。だけど、戦争が起こって魔法は失われ、空には雲がたちこめるように。重い現実に打ち勝つには、夢と希望と信じる力が必要だと教えてくれる、優れたジュブナイル作品。3DCGアニメにありがちな派手なバトルなどはないので、やや地味な展開だと感じるかもしれないが、主人公の少年をはじめとする人々の他者を思う善意が折り重なり、やがて戦争によるPTSDを抱えた老人や不妊で悩む女性など、凍てついていた人々の心を溶かしていくストーリーに胸打たれる。原作は2009年に書かれた児童向け小説だが、現在の世界の状況にもあてはまるよう。親子で観るときは、そんなことを話し合ってもいいかも。
イドリス・エルバ主演の人気ドラマ『刑事ジョン・ルーサー』がNETFLIXで帰ってきた! 異常に洞察力が鋭く、独自のモラルを持ち、事件解決のためならどんなことでも躊躇なく行う刑事が難事件に挑む。どうかしている猟奇殺人犯を登場させることに命を懸けているようなシリーズらしく、今回もアンディ・サーキス演じる犯人の悪趣味ぶりと胸糞悪さがすさまじい。ただし、ドラマ版よりアクションのスケールは大きくなったものの、ストーリーには緻密さを欠く。事件の中核にあるはずの、社会的な死かリアルな死を選べと迫られたときの人間の弱さと脆さをもっと描いてほしかった。未見の人は、陰鬱な雰囲気のドラマシリーズもぜひ見てほしい。