清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

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  • 花筐/HANAGATAMI
    生に執着する映像詩は、キナ臭い今を乱反射させた厭戦の万華鏡
    ★★★★★

     先の戦争前夜の青春群像。大林宣彦は個人映画に回帰したかのような初々しくアヴァンギャルドな映像で、恋を、熱情を、瑞々しく綴る。悲愴感はない。切迫感に満ちている。夢幻的に繰り広げられる様は、狂おしいまでの生への執着。命が刹那に燃焼して終わるやるせなさ。遥か昔の出来事に思えない。戦後がいつしか戦前に切り替わろうとするキナ臭い今を乱反射させた万華鏡のよう。体制への怒りが露わな反戦ではなく、過ちを繰り返すまいと誓い、殺されまいと願う厭戦/非戦。商業映画デビュー作の怪奇幻想譚『HOUSE/ハウス』は現実から逃避させてくれたが、やはり生と死の狂宴の映像詩でありながら、40年目の本作は現実を直視させる。

  • スター・ウォーズ/最後のジェダイ
    フォースの概念を押し拡げ世界観を更新した次世代のための神話!
    ★★★★★

     欺き続ける展開、目まぐるしく多彩なバトル、ユーモアも忘れないキャラの魅力的な描き込み。そのアプローチはSWの法則に囚われることなく自由闊達で、観る者の心を引っ掴んで振り回す。本作の核心は、ルーカスの呪縛から逃れ、世界観そのもののを更新したことだ。光と闇、ジェダイとシス…古き価値観を過去に追いやり、フォースの解釈を豊かに膨らませ、銀河に新たな秩序をもたらそうとする野心に満ちている。エピソード10~12へのブリッジも匂わせるライアン・ジョンソンのビジョンは、まさに次世代のためのSW神話。旧三部作世代としては、ルークと共に齢を重ねてきた40年の成功と失敗を振り返り、自身の幕引きに思いを馳せた。

  • ビジランテ
    今年の日本映画ベストワンは入江悠オリジナル脚本監督作に決めた
    ★★★★★

     地方都市に凝縮された日本の苦悩。三兄弟は呪縛から逃れようともがいている。昭和の悪しき家父長制の後遺症から。蒼き闇夜の川に託される克服しきれないトラウマ。ショッピングモール建設の利権をめぐる政治の闇に、兄弟と周囲の生き様を交錯させ、外国人に対する排他的な現在を射る。相も変わらず欲望と暴力にまみれたこの国の暗部と格闘する入江悠のオリジナル脚本は、インディーズ魂と東映カラーの接合として絶妙だ。主演級3人のみならず、進んで闇を引き受ける篠田麻里子や、保守的な若者の危うさを体現する吉村界人の存在感が際立つ。題名は自警団のみならず、法を超えてでも醜悪さから身を守ろうと葛藤する三兄弟をも指すのだろう。

  • 否定と肯定
    怪しげな歴史修正主義者を論破するために必見の理知的な法廷映画
    ★★★★

     歴史的な法廷闘争の実話に基づく映画化は、今現在を考える上でタイムリーだ。邦題『否定と肯定』は、ナチスによるホロコーストは「なかった/あった」を争った裁判だとミスリードする危険性を孕む。原題は『否定』。明らかに虚偽のトンデモ説を同等に並べず、同じ証言台に立たせないことこそ本裁判における弁護団の戦術の核心である。声の大きな歴史修正主義者の言説がまことしやかに流布されるSNS時代、屈折した感情を抱き、捏造目的のある輩が吹っ掛ける議論の罠に如何に対応すべきか、この映画は教えてくれる。トンデモ説でも心から信じていれば言論の自由が適用される。ではどうやって修正主義者を論破したのか。劇場で確かめてほしい。

  • オリエント急行殺人事件
    大仰な口髭に象徴されるデフォルメし過ぎたポアロ監督の戦略ミス
    ★★★★★

     ポアロの大仰な口髭に難点が象徴されている。大事件を用意しキャラ立てを強調する導入。原作になき雪崩スペクタクルやアクションの挿入。65ミリフィルム撮影による誇張された空間演出。パイレーツと007上司と銀河のヒロインが競演を果たすオールスター大作感。有名なミステリーの変えようのない結末へどう運ぶか。74年版の名作を如何に超えるか。監督も兼ねたポアロ=ケネス・ブラナーの戦略は涙ぐましいが、容疑者たちが「最後の晩餐」よろしく居並ぶ場面でデフォルメはピークに達す。勧善懲悪がテーマならそれもいい。切実な動機、犯人の悲哀を描き、名探偵の人間味が露わになる本作の味わいに、これらの戦略は全くもってそぐわない。

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