清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

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  • 追憶
    背景を昭和にすれば、大時代的な違和感は解消されたのではないか
    ★★★★★

     高倉健と阿吽の呼吸で撮り続けてきた監督とキャメラマンが、腕に覚えがある若者たちで描く。邦画DNAを継承する有意義なプロジェクトだ。悲劇を淡々と見つめる風景というスタイルにブレはない。トラウマを抱えた幼馴染3人の成長後――『ミスティック・リバー』的な構造に想を得るのはいいが、事件の発端や展開があまりにも大時代的。俳優陣に陰りが足りないのではない。カフェバーの時代に生まれた30代を、地方のうらぶれたスナックバーに連れ込んで“イズム”を注入するような無理がある。いっそ背景を昭和中期にすれば違和感は解消されたのではないか。99分で収束させるためとしか思えない「真犯人」にも納得がいかない。

  • LION/ライオン ~25年目のただいま~
    “グーグルアース時代の母をたずねて三千里”と言うべき強い物語
    ★★★★

     実話でありながら、なんと強い物語であることか。貧しく幼いインドの少年が、はぐれて彷徨い始める冒頭シークエンスに息を呑む。サバイバル能力と帰巣本能の強さが、映画を貫き通す太い線。養子縁組してオーストラリアの裕福な家庭で成長する数奇な運命も、真の家族にもう一度会いたいという想いには叶わない。現代のテクノロジーによって実現する“グーグルアース時代の母をたずねて三千里”は、養母ニコール・キッドマンへの申し訳なさと、それを包み込む彼女の信念が明かされるとき、最高潮に達する。2つの国を悠然と捉えるキャメラが美しい。タイトルの意味が明かされたとき、ダスティン・ホフマンとトム・クルーズの顔が脳裏をよぎった。

  • ムーンライト
    色彩で表現する、史上最も美しい詩的な黒人映画
    ★★★★★

     トッド・ヘインズの『キャロル』に次いで、美しく描いてこそLGBTQへの偏見をはね返すことが出来るという強い信念が、通奏低音として流れている。こんなにもカラフルな黒人映画はいまだかつてなかった。色彩を際立たせる撮影とポスプロに唸らされる。人種・同性愛・貧困。声高に訴えることなく、怒りを内に秘めつつも状況に合わせ、ナイーブだった子供が、やがて強靱さを手に入れて成長する、逞しさとやるせなさ。9歳、16歳、26歳――ロジックではなくエモーションで繫がる三章構成。マハーシャラ・アリの存在は、生きるよすがとして、性的あこがれとして、少年の心の中で生き続けたことを示唆する、寡黙で詩的な演出が素晴らしい。

  • ワイルド・スピード ICE BREAK
    見せ場は、NY無人車暴走パニックと潜水艦との氷上バトルだが
    ★★★★★

     ポール・ウォーカーの死を乗り越え、より絆が強まった第8弾。昨日の敵は今日の友。前作の仇ジェイソン・ステイサムまで仲間入り。腕力と速度と結束――それさえ押さえておけば何でもありだが、ただの筋肉スピード陶酔映画では終わらせまいと展開に凝り、話が停滞気味になるのが惜しい。強敵シャーリーズ・セロン扮するサイバーテロリストの目的は、金正恩のそれとさほど違わない。NY中の車がジャックされる無人暴走パニックにはもう一捻り欲しい。潜水艦との氷上チェイスバトルには既視感がある。ありえない方向へ向かえば向かうほど、CG前提のSFファンタジー大作同然になる。次回作は決して宇宙などに向かわず原点回帰を願いたい。

  • スウィート17モンスター
    最悪の思春期を泣いてあがいて笑い飛ばす、こじらせ少女の大暴走
    ★★★★

     周囲の凡庸さに耐えられぬ、自意識過剰な少女の最悪の日々。自虐的にジタバタもがいて暴走しまくる顛末を、ヴィヴィッドに綴った思春期映画の秀作だ。唯一の親友に“裏切られ”てからの展開が見事。最大のクライシスは、SNS時代ならでは意外な願望告白によって訪れる。14歳にしてアカデミー賞ノミニー(トゥルー・グリット)となったヘイリー・スタインフェルドの天才ぶりが爆発。彼女を得たことで、感情移入を拒むキャラが愛すべきイタい少女に昇華した。愛は背伸びしても手に入らず、実は身近にあるものという仄かな希望を心から祝福したくなる。先生役ウディ・ハレルソン(元ナチュラル・ボーン・キラーズ)の円熟ぶりも味わえる。

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