清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

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  • エリザのために
    娘を思うがゆえに不正をも辞さない、歪んだ社会に染まる父の堕落
    ★★★★★

     カンヌで監督賞に輝いたこのルーマニア映画は、傷ついた娘の未来を思うがゆえに、父が不正をも辞さず東奔西走する物語。被写体に寄りすぎず、注視し続ける冷徹なキャメラが醸成する張り詰めた空気。見巧者なら演出技術にまず目が行くだろうが、炙り出される背景に思いを馳せることこそ重要だ。『4ヶ月、3週と2日』で80年代チャウシェスク政権下、禁じられた中絶を手助けするヒロインを描いたC・ムンジウ監督。本作には、独裁打倒後も理想は程遠く、歪んだ社会を生んでしまった親世代の忸怩たる思いが滲み出ている。しかし逆説的に、そんな倫理的葛藤が一大事とは思えぬほど、利己的な社会で感覚が麻痺している自分を再認識させられた。

  • ANTIPORNO アンチポルノ
    嘘で塗り固められたニッポンを射る“メタポルノ社会映画”
    ★★★★★

     健康的な裸体を晒したまま人気作家・京子は言葉を発しまくる。時間に追いまくられ、混乱するアイデンティティ。そこは極彩色で虚実ないまぜの書き割り世界。 解体された時間軸の中、内面が暴かれていく。天井が突如切り裂かれ虚構が侵蝕される心象や、肉体に色とりどりの絵の具が浴びせられる前衛表現に目を瞠る。ネットにエロ動画が氾濫し、アイドルへのポルノ的な視線が蔓延する一方、フィジカルな恋愛が後退した国で、ロマンポルノを再生させる企画に疑義を呈した園子温の戦術は刺激的。性が消費されまくるニッポンで生きる不自由さへの問い掛けだ。脱がされていくのではなく、徐々に着せられていくメタ・ポルノ社会映画でもある。

  • ドクター・ストレンジ
    マーベルの新機軸は、オリエンタルでサイケデリックな魔法大戦!
    ★★★★★

     先端科学よりも魔法。フィジカルよりもメンタル。マーベルの新機軸は、ニューエイジ的価値観を上位概念に置く<魔法大戦>だ。都市空間を自在に捻じ曲げた『インセプション』のその先にあるCGIの魔力と、IMAX3D画面を縦横無尽に活かしきるサイケデリックな視覚効果は新鮮。主人公の修行プロセスにはもっと時間を割くべきだが。キャスティングが巧い。傲慢な医者から一転、オリエンタルな衣装を纏っても様になるカンバーバッチはもとより、作務衣風衣装の闇の魔術師マッツ・ミケルセン、スキンヘッドの導師ティルダ・スウィントンのキャラ立ちは抜群で、壮大な嘘に説得力を与える。内戦というモチーフに、分断された大国の今を思う。

  • スノーデン
    反体制ヒーローながらも穏やかなギーク像が告発に現実味を与える
    ★★★★★

     愛国者が国家の正体に幻滅し、反体制に転じて英雄視される。構造は、いかにもオリバー・ストーン映画だ。しかしジョゼフ・ゴードン=レヴィットが模倣するスノーデン像は穏やかなギークであるため熱は抑え気味で、政府の市民総監視という暴露にリアリティを与える。ロマンスを挿入して人間性を彫り込むが、それはストーンが嫌う「CIAヒーローもの」の劇的構成を反転させた通俗ドラマに向かう。彼の証言にのみ基づいた自伝的映画ゆえ、いくつもの疑問は生ずる。神格化のために施したデフォルメは多いだろう。それでも、ネットに繋げている以上、もはや個人情報は覗かれているという怒りと諦めを同時にもたらす作品であることは確かだ。

  • マグニフィセント・セブン
    多種多様なガンマンを率いるリーダーの動機は崇高とはいえない
    ★★★★★

     痛快な銃撃戦で目を楽しませてくれる名作リメイクにしてウエスタンの再生だが、物語は今を映す鏡だ。独裁から村を救済するよう、黒人ガンマンに依頼するのは女性。原点に囚われすぎず、役者の個性を生かし「7人」の人種は多種多様。菊千代に当たる両義的な存在はなく、ガンマンと村人のドラマは希薄だが、ポイントは主人公が身を投じる動機だ。勘兵衛の「この飯おろそかには食わんぞ」に当たる大義名分なきままの参戦。理由が語られるとき、往年のジャンルの殻を被った、現代的な“負の連鎖”の物語であることが明らかになる。その動機は決してマグニフィセント(崇高)とは言えない。生き残るガンマンたちの人種はアイロニーに満ちているが。

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