清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

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  • インターステラー
    科学度45%の愛が時空を超える叙事詩は宇宙へ高次へと上昇する
    ★★★★★

     ノーラン版『2001年宇宙の旅』は、実に饒舌で愛に満ちあふれ「時間」や「未来」についての想像力を激しくかき立ててくれる。アナログ表現にこだわり視覚的驚異を追求する姿勢には、畏敬の念さえ覚える。難解・荒唐無稽…と冷笑的な声もかまびすしいが、劇中のロボットにあやかれば、これはサイエンス度45%×ファンタジー度55%でファミリーに人類と宇宙への想いを馳せることを促し、映画が豊かだった時代を思い起こさせる究極の“フィルム”だ。『メメント』は前へ過去へ、『インセプション』は内へ深層心理へ、『ダークナイト ライジング』は下へ奈落へと向かった。本作は、外宇宙へ高次元へと上昇する大いなる希望の叙事詩である。

  • ザ・レイド GOKUDO
    『るろ剣』2部作に並び今年BESTのアクションシーンが満載!
    ★★★★

     誰もが前作同様、シンプルな純粋活劇を期待したことだろう。まんまとそれをかわしたのは、ギャレス・エバンス監督が演出力の幅を見せつける矜恃と野心だ。裏社会の掟をめぐる重厚なドラマ。潜入捜査がもたらすサスペンス。そして随所にちりばめた限定空間バトルの数々。とりわけ刑務所中庭での大乱闘は、ぬかるんだ地面に足を取られ、格闘術シラットの鮮やかさを封じ込められながらも、撮影・編集・音楽も相俟ってバイオレンス描写に美学さえ感じさせる。香港から呼び寄せたチームが披露するカーアクションも冴えを見せている。日本のヤクザ役・松田龍平の活躍を匂わせるパート3の実現には、大いに期待したい。

  • 紙の月
    闇への失踪ではなく光への疾走。堕ちるほどに輝く宮沢りえ礼賛
    ★★★★

     平凡な女性の不倫と横領。堕ちていくほどに輝き、解き放たれる快感。愁嘆場を何度もかわし通俗へ向かわず、映画的見せ場を用意する演出の妙。サタンの囁きを奏でる大島優子、モラルの鎧で縛る小林聡美、母性本能をくすぐる池松壮亮。すべては、空虚で暗鬱な宮沢りえが生彩を帯びていくために存在する。時代や社会に弄ばれ、奇しくもバブル崩壊直後に幸薄きイコンとなった元アイドルが、広告業界出身の映画作家の手によって、金銭を中心に回る通念を打ち砕く一点突破劇として観ることも可能だ。紙幣という冷たく光る神、いや、紙の月を指で消去する場面が切なく美しい。彼女が全力で走る姿、それは闇への失踪ではなく光への疾走である。

  • 6才のボクが、大人になるまで。
    それでも不確かな愛を信じ健気に生きる12年間を切り取った傑作
    ★★★★★

     思い出してほしい、6歳から18歳までの無限ともいえる歳月を。みるみる姿を変え、自我に目覚め、親たちは修羅場をくぐり、世の中は移り変わる。12年という実時間を、ノンフィクションではなく劇映画の中に採り入れるというコペルニクス的転回によって、かつてない豊穣な家族のドラマが誕生した。少年の視点で描かれる、父の身勝手、母の奮闘。オバマを選んでも好転しない社会背景と相俟って、近づいたかと思えば遠ざかる幸福のありよう。もう一人の主人公、それは時の流れ。シーンの繋ぎ目に情感が宿る。屈託なき笑顔の少年が陰りを秘めた青年へと変容し、それでも不確かな愛とささやかな希望を信じる姿を切り取った映画史に残る試みだ。

  • 蜩ノ記(ひぐらしのき)
    気高い精神が染み入る“老成した黒澤映画”こそ小泉映画の真髄
    ★★★★

     思わず居住まいを正してしまう。残された時間の身の処し方という『生きる』の命題。人間性を学ぶ絆としての『赤ひげ』の荘厳。だが物事の白黒が明解だった師・黒澤明とは異なり、水墨画のような味わいだ。強烈な邪心が物語を動かすのではない。狡猾で卑屈な権力者の面子のために迫害を受け、生き様が試される。物心両面から過去の日本人ににじり寄り、所作や武士道を気高く描いていく。"鞘に収まった刀"としての風格と品性を研ぎ澄ましてきた小泉堯史の作品は、決して愛や涙の押し売りなどしない。黒澤明が撮れなかった“老成した黒澤映画”こそ小泉映画の真髄。これは、忘れられた高邁な精神が染み入る純度高き美しい映像詩である。

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