清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

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  • 薄氷の殺人
    バラバラ殺人の背後であぶり出される夢と現実、欲望と諦念
    ★★★★★

     凍て付く中国の地方都市を舞台にバラバラ殺人から始まるノワール。追う男も追われる美女も心に闇を抱え孤独に漂っている。事件解明への執念と美女への欲望。暗鬱な街と極彩色のネオン。薄氷を踏むような生き様と真昼の花火のような夢。あらゆる対比が興奮を高めていく。単なるミステリーではない。時代設定は1999年と2004年。経済格差が急速に拡大した社会の歪み。こぼれ落ちた人間のやるせなさが覆う。娯楽性と芸術性が見事に共存している。一昔前の韓国や昭和30年代の日本にもこうした映画はあった。屋外スケートリンクで男が女を延々と追う息が詰まる移動キャメラは、焦りと恐れを抱えつつ不気味な前進を続ける中国そのものだ。

  • 96時間/レクイエム
    活劇的な魅力は減退したものの「暴走する父性愛」がそそり立つ
    ★★★★★

     元ジェダイマスターならぬ元秘密工作員が、家族に起こった災難を、明晰な分析能力と果敢な行動力で解決し、カタルシスを与えるシリーズ、まさかの3作目。カーチェイスに力を注いだが、活劇としては精彩を欠き、何よりプロットが読めすぎてしまう。しかし牽引力は、リーアム・ニーソンと娘役マギー・グレイスの関係性の魅力だ。今回は妻に不幸が起きるため、父娘関係がより前面に押し出され、製作・脚本リュック・ベッソンの特質がより顕在化。彼の代表作『レオン』が「凶暴な純愛」なら、このシリーズの最大の眼目は、「暴走する父性愛」と銘打つべきだろう。

  • バンクーバーの朝日
    内発する感情の動きを静かに待つ。真の主役は石井裕也の演出力
    ★★★★★

     忘れられた、戦前カナダにおける日系移民の貧困と差別。野球に懸け、頭脳プレーで這い上がっていく様を淡々と追う。妻夫木聡、池松壮亮、亀梨和也、高畑充希らが耐え忍ぶ。時代性を再現した原田満生の美術と、生きづらさと臥薪嘗胆の空気をすくいとる近藤龍人のキャメラが素晴らしい。内発する感情の揺れ動きを静かに待つ。真の主役は、83年生まれの監督・石井裕也の演出力。これはフジテレビ映画なのだ。当てることを至上命題とした“分かりやすくて泣ける装置”とは異なる流れ。新鋭の力量と作家性に懸け、俳優の可能性を引き出すTV局映画のヒットエンドランは、日本映画の未来に光明をもたらす。

  • ホビット 決戦のゆくえ
    過酷な“捨てる旅”へと続く円環の閉じる感慨深さは測り知れない
    ★★★★

     壮大なサーガ6部作が終わる。第2章と直結し戦いに比重を置いた本作は、単品として観れば高揚感が高いとはいえない。しかし“拾ってしまった旅”と“捨てなければならない旅”の円環が閉じる感慨深さは測り知れない。さらなる壮絶な戦いへと思いを巡らせる余韻。この不穏な空気が劇中のものだけであってほしいという切なる願いが募る。
     HFR(ハイ・フレーム・レート)に眼が馴染んできた。コントラストにメリハリが付いたせいだろう。最も違いが現れるのは、画質よりも動き。パンやドリーなどキャメラワークは素速く軽やかで、人の動作はライブ映像さながら。ただし重厚な表現にとって違和感を覚える瞬間もあり、進化の余地がある。

  • ゴーン・ガール
    ありのままの女性の狂気全開!黒い笑いで包む極上のミステリー
    ★★★★★

     このデヴィッド・フィンチャーは新しい。磨きがかかったヴィジュアルセンスで魅せるブラックな笑い。表向きはミステリーだが、自己愛に満ちた男女間に横たわる不審/不信をえぐり出す快作だ。人間のはらわたを見つめる演出に一分の隙もないが、不気味なまでの通俗性が加わった。女性が内に秘めた虚飾・欲得・狂気が全開していくプロセスは、恐怖を通り越し滑稽なほど。“ありのまま”が高らかに謳われた2014年の真打ちともいえる。でくの坊ベン・アフレックと氷の美女ロザムンド・パイクの“没個性”を存分に活かし、メディアに翻弄される「幸福」の真実に震え上がらせる。つまり彼らが演じるのは、今を生きる者たちの本性かもしれない。

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