清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

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  • イカリエ-XB1
    美術・衣装・構図のデザイン性に驚嘆する60年代チェコSF
    ★★★★

     幻のSF映画が美しく甦った。4Kレストアによるモノクロのチェコ作品。生命探査に向かう船内の密室で進行する日常的なドラマ、遭遇する宇宙船のミステリー、襲い来る謎の疲労感、意外性ある結末…。特撮技術は60年代初頭のものだが、SF映画を刷新した『2001年宇宙の旅』より5年前に、この美術・衣装・構図における先進的なデザイン性の数々には驚嘆せざるを得ない。一点透視図法、スポーツジム、テレビ電話、ラストカット…。キューブリック感化説も都市伝説として処理できず、夢想は拡がる。原案はスタニスワフ・レム。カレル・ゼマン作品やヤン・シュヴァンクマイエル作品のズデニェク・リシュカによる電子音楽が耳に残る。

  • モリーズ・ゲーム
    冷徹キャラ、ジェスカ・チャステインが垣間見せる人間的な脆さ
    ★★★★★

     実話だと知らされなければ、何とも奇抜な物語だと感じることだろう。五輪候補の女性アスリートが挫折してセレブ御用達ポーカールームの敏腕経営者となるが、違法ゲーム主催の容疑で逮捕されるのだ。見せ場はポーカーと法廷。膨大なセリフ劇で人物の内面をえぐる脚本家アーロン・ソーキンの初監督作は、原作である回想録だけに依拠せず、父との確執を中核に据えた。頭脳明晰にして栄光と転落を行き来する冷徹キャラは、女優ジェスカ・チャステインの専売特許になりつつあるが、本作では人間的脆さも垣間見せる。それは演出の領域に踏み込んだソーキンが、やや感傷に陥り、性善説に傾いて人間を観る眼に甘さが生じたようにも感じさせる。

  • フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
    想像の翼を広げる子供たち独自の「夢と魔法の王国」を阻むもの
    ★★★★

     フロリダで暮らす6歳の少女と母、そして近隣の住人。ドキュメンタリーと見まがうほどの子供達の躍動感に驚かされる。ディズニーワールドの“城下町”に建つ、安モーテルに住む貧困層にスポットを当てながら、光と影のコントラストをこれ見よがしには映さない。テーマパーク内に入れなくとも、子供達は想像力で夢や冒険を創り出し、底抜けに明るく無邪気だ。笑い声が絶えず、辺りは色鮮やか。とことん子供目線に立った演出が、格差社会の現状へと自然に導入し、重いテーマへの考察を共感をもって深めさせる。声高に問題意識を訴えはしないが、優しく厳しく見守るモーテル管理人ウィレム・デフォーの無念の表情に、監督の眼差しが表れている。

  • 孤狼の血
    去勢された生ぬるい現状に挑む「東映やりすぎ路線(仮)」
    ★★★★★

     生ぬるい現状を変える怪作だ。暴力団に拮抗する掟破りな警察。呉ロケで醸し出す昭和の猥雑さ。傍若無人なデカ役所広司、狂気を継承する松坂桃李、大化けしたヤクザ竹野内豊。女優陣は艶やかだがエロスに課題は残る。去勢された日本映画を風刺するような“真珠攻撃”の奇襲は痛快だ。荒ぶる東映復活がコンセプトだが、韓国ノワールを吸収して低温の『アウトレイジ』をも恫喝し、無菌室な時代へのアンチテーゼを踏まえて暴力表現や自主規制用語を打破する。表現の自由を懸け、東映はシリーズ化すべき。かつて「実録」や「不良性感度」という造語でブームを醸成したが、今作に始まる路線を何と名付けるのか、惹句センスも問われる。

  • MIFUNE:THE LAST SAMURAI
    革新的なヒーロー像で世界に影響を与えた「三船敏郎」を再発見
    ★★★★

     チャンバラの歴史から語り起こし、三船敏郎のサムライ像がいかに革新的であったか、そのヒーロー像が世界に影響を与えた事実を、代表作の映像と豊富なスチル写真で明快に提示していく。映画通にとっては常識的な内容でも、継承力が弱まった今、貴重な映画史テキストだ。関係者の言葉の端々にカリスマへの愛が滲み出る。晩年の証言は切ない。『蜘蛛巣城』の危険な撮影をスコセッシはキートンを引き合いにして語り、黒澤との絆によって三船は独自にキャラ造形しアートを生み出したとするスピルバーグの分析も重要。2014年に発掘された、カラー8ミリフィルムによる『用心棒』メイキング映像(撮影:田中友幸P)のインサートにも着目せよ。

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