山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • アオラレ
    他人事ではない状況にヒヤヒヤ
    ★★★★★

    あおり運転の報道が増えるなか、ノロマな運転であおられた経験のある身としては主人公の恐怖が実感として感じられる作品だった。クラクションを鳴らしたために執拗に追尾されるケースは日本では稀だろうが、ストレスに晒される現代人の怒りスイッチがどこにあるのかは当人しかわからない。常軌を逸した男を演じるR・クロウの険しい表情に背筋が凍る。こんな顔見たら、すぐ謝罪だ! スピルバーグの『激突!』を思い出しつつ、「我慢」「譲り合い」という言葉が頭に浮かんだ。主人公もね、反省すべき点が多々ありますよ。

  • クルエラ
    インスパイアの源を推測するのも楽しいオリジン・ストーリー 
    ★★★★

    『101匹わんちゃん』の悪役クルエラに焦点を当てるという発想がユニーク。誕生から名を成すまでをクルエラ自身が語りおろす構成で、彼女の過去やダルメシアンとの愛憎関係が明かされる。クルエラが好むスタイルは、V・ウェストウッドやA・マックイーンっぽい! ゴシップ誌名も聞き覚えがあるし、エキセントリックな大御所との関係には『スターウォーズ』的発想も見て取れ、脚本家がさまざまな作品から影響を受けているのは明らか。映画ファンにとっては原点を探る楽しみもありそう。ある意味、二役を演じたE・ストーンは非常に魅力的で、E・トンプソンの迫力に負けていない。ノリのいいサントラもgood!

  • やすらぎの森
    酸いも甘いも噛み分け、さらに人生は続く
    ★★★★★

    自然との共存を選んだご老人のSDGs的な物語と思い込んでいたので、生と死にまで踏み込んだ深いテーマが心にずしんと響いた。ユーモアはあるが、家族に背を向けた人あり、人生を奪われた人ありと登場人物の歩んできた人生はそれぞれに重く、酸いも甘いも噛み分けた高齢者の選択には敬意を払うしかない。それがドラスティックに思えてもだ。孤独と愛、死ぬ権利など見終わった後、さまざまなこと考えさせられた。すべてを焼き尽くす一方で新たな生も生み出す森林火災がもう一つのキャラクターになっていて、物語に哲学的なニュアンスを与えている。ドラマの進行上で必要な女性写真家が最後まで部外者にしか感じられないのが残念なり。

  • ペトルーニャに祝福を
    神様の前でも男女平等ではないって変だよね。
    ★★★★★

    神事に一石を投じた女性の行動から巻き起こる伝統的価値観への疑問や女性の生き方の変化を描いた社会派のドラマで、フェミニズムを不思議なユーモアで包んだ監督の手腕に拍手。主人公ペトルーニャの行動にさまざまな理由をつけて怒る人々に呆れる場面は多いが、「女性だから●●してはいけない」的な考えが罷り通るのは世界共通だろう。もちろん女性蔑視に明確な理由などないし、理不尽な思考と戦いながら逞しく変わっていくペトルーニャの姿は天晴れ! 最初は世間への怒りを抱えた自虐的なアラサー女性に見えたが、心の澱をどんどん溶貸して、次第に清々しい表情を見せる彼女に魅了されてしまった。

  • 野良人間 獣に育てられた子どもたち
    悟りを求めすぎるのも危険な気が……。
    ★★★★★

    トリュフォーの『野生の少年』的な感動作ではなく、宗教に傾倒しすぎた元修道士ファンの恐るべき犯罪が暴かれるサイコ・ホラー。未解決事件を検証する取材班が掘り起こした記録ビデオやインタビュー映像で構成された物語がファンの精神状態の変化を克明に追い、彼が再発見した神と対話を始めるに至っては息苦しさすら覚える。宗教を否定する気はないが、悟りを求め、信仰に依りすぎたがために人格崩壊する様はただただ恐ろしい。彼は森に監禁されていた子供たちを助け、文明社会に復帰させようとしたいい人なのだが、毒母の教育によって歪んでいたのだろう。親の因果が子に報いってことだな。難役を子役が熱演する。

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