山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • ニューヨーク 親切なロシア料理店
    思いやりの伝染を願いたくなる群像劇
    ★★★★★

    老舗のロシア料理店に関わる人々による群像劇だ。DV夫から子連れで逃れた女性や失職青年、自分以外の人間を癒すのに夢中な看護師、服役を終えた男性といった全く関わりのなさそうな人々が“袖振り合うも多少の縁”を培い、困った人に救いの手を差し伸べる姿が見る人の気持ちを温かくする。Z・カザンやB・ナイ、T・ラヒムら演技派の競演も非常に魅力的だ。寂れている点を除けば、舞台はどう見てもカーネギーホール隣の「ロシアン・ティールーム」なので、実話?と思ったけれど、その後の展開で疑惑解消。L・シェルフィグ監督が考える都会の奇跡物語だが、思いやりが人から人へと伝わることを願いたくなった。

  • Mank/マンク
    賞レースに参戦しそうなハリウッド裏話もの
    ★★★★★

    名作『市民ケーン』を軸にした政治色の濃い、脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツの伝記物語。映画会社のシステムに妥協していた主人公が理想主義を取り戻してゴリアテに挑むダビデとなる顛末を、彼の手になる『市民ケーン』式に時制を行き来するスタイルで描いていて、痺れる。タイプ打ちの場面説明もセンスいい! 当時の脚本の書き方や映画会社のライバル関係、マルクス兄弟の破天荒ぶりなども垣間見えるハリウッド裏話ものとしても楽しめる。が、驚くべきはメディアを使った人心操作が30年代の選挙戦でとっくに行われていたこと。恐るべし、ハリウッド! G・オールドマンとD・フィンチャー監督の賞レース参戦を期待したい。

  • ノッティングヒルの洋菓子店
    ブレクジットにもスウィートに喝を入れる癒しのドラマ
    ★★★★★

    揺れ動くブレクジット次第でどうなるはわからないけれど、訪れるたびに人種の坩堝感を実感するロンドン。そんな多様性を重視する街の菓子店を舞台に愛する人間を失った人々のそれぞれの癒しを追う優しい物語だ。コミカルな演技で魅力を発揮するS・イムリーが喪失感に苛まれながらも前進する祖母を快演し、物語を牽引する。彼女とご近所さんとの淡い恋も素敵だ。舞台となる菓子店が提供し始めるインドや中国、トルコなどさまざまな国の菓子が本当に美味しそう。移民排斥にスウィートに喝を入れる店の経営方針、万歳だ。製作に協力したヨタム・オトレンギのデリは次のロンドン旅行で“訪ねたい店”リスト入り! 

  • 100日間のシンプルライフ
    少し前までスマホ無しで生活できていたのに!?
    ★★★★

    スマホ依存症の青年と親友が酒の勢いで、文字通り、裸一貫から人生をやり直すという設定が面白い。私だったらスマホをゲットし、Amazonで必要なものをオーダー? と、便利さに毒されている自分を反省しつつ、倉庫からものを取り戻しながら本当に大事なものに気づく青年たちと買い物依存症のヒロインを応援。まさに現代のおとぎ話だが、ニューノーマルを迎えた今の私たちが生活様式を見直すヒントもあるはず。原案のドキュメンタリーユニークだったが、映画版はコメディ調で笑わせてくれるし、現代人が直面するマテリアリズムについても考えさせてくれた。それにしても、スマホ無しの生活にはもう戻れないかも……。

  • THE CROSSING ~香港と大陸をまたぐ少女~
    希望が消えゆく香港がますます心配になる
    ★★★★★

    中国返還以来、香港の状況は変化し続けていて、その一部を描く作品だ。主人公は香港男性が中国女性との間にもうけた女子高生で、彼女が味わう身分差や経済格差が中国本土と香港の微妙な関係を表しているようだ。小遣い欲しさで密輸組織に加担する主人公のナイーブさに呆れるが、擬似家族を構成する女ボスの「金が全て」な感じこそが国民にサバイバルを必要とさせる中国の実態なのだなと背筋がゾクリ。ヒロインが壊したiPhone6を黄金か何かのように求める人々も恐ろしく、作り手の意図に反して希望は感じなかった。が、心身ともにタフでなければ生き延びられない国家だからこそ、そのうち世界を牛耳るかもと恐ろしくもなる。

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